製造業のDX化に挑む株式会社Catallaxyの「ポジティブ・サム」思考

新しい働き方を取り入れている企業を紹介していく企画。今回は、製造業向けプラットフォーム事業などを行う「株式会社Catallaxy(カタラクシー)」をご紹介します。

株式会社Catallaxyとは?

株式会社Catallaxyの公式サイト

「未来の製造業をつくる」というビジョンを掲げる株式会社Catallaxyは、製造業領域に直接取引プラットフォームなど様々なデジタルサービスを提供し、業界に新しいスタンダードを創り出そうとしています。

メイン事業の1つであるプラットフォーム「Mitsuri(ミツリ)」は、金属加工部品を依頼したい企業と受注したい工場を直接つなぐオンライン部品調達サービスです。「Mitsuri」を使えば、依頼したい企業は手持ちの図面をアップロードするだけで協力工場から最短1日で見積もりが送られてきて、クラウド上で商談が始められます。

また、受注したい工場も、企業がアップロードした図面を確認して見積書を送付するだけでよいため、訪問営業の時間や仲介料なしで新規顧客を開拓できるメリットがあります。

会社名株式会社Catallaxy
住所東京都中央区銀座1-12-4 N&E BLD.7階
事業内容製造業デジタルプラットフォーム事業
DXアウトソーシング事業
業務改善デジタルツール開発事業
設立2015年7月9日
公式ページhttps://catallaxy.me/
働き方フルリモート(契約サテライトオフィスあり)
フレックス制(8時~20時のうち8時間)

Catallaxyのメンバーは全員フルリモートで、生産性の高い働き方をしながら、製造業界のDX化(デジタル・トランスフォーメーション)を推進しています。事業の成長性や働き方、カルチャーなどについて、取締役COOの藤野潤也さんに伺いました。

本日お話を伺った方
株式会社Catallaxy 事業本部兼経営企画室 取締役COO 藤野潤也さん

株式会社Catallaxy
事業本部兼経営企画室 取締役COO

藤野潤也さん

金属部品の調達に革新をもたらす「Mitsuri」

株式会社Catallaxyが運営する金属部品取引プラットフォーム「Mitsuri」のサービスサイト
▲「Mitsuri」のサービスサイト

編集部

まずはCatallaxyさんの社名の由来から教えてください。

藤野さん

Catallaxyと書いて「カタラクシー」と読みます。「カタラクシー」の意味をよく聞かれるのですが、「ポジティブ・サム」という意味が込められています。一方が利益を得ると他方の損失になる「ゼロ・サム」な関係ではなく、どちらも得をする「ポジティブ・サム」の秩序を構築したいという思いで、この社名がつけられました。

編集部

双方が利益を得られるような関係を築きたいという思いが込められた社名なのですね。御社のプロダクトにもそれが反映されているように感じます。「Mitsuri(ミツリ)」をはじめとする事業についても、教えていただけますか?

藤野さん

Catallaxyは「未来の製造業をつくる」というビジョンを持ちながら、製造業におけるスマートサプライチェーンの構築をミッションにしています。それに準ずるデジタルツールを提供する会社です。

具体的には、製造業の金属加工業において、「Mitsuri」というSaaS(※)のプロダクトを提供しています。

「Mitsuri」は新規で金属部品の調達をしたい方と、それを受け入れる工場を直接取引でつなぐプラットフォームです。製造業は従来、商社など間にいくつかの会社が入ることが多く、多重下請け構造になりやすい業界です。しかし、われわれはその構造自体を壊さないといけないと考え、ユーザー同士が直接取引できるようなプラットフォームを展開しています。
(※)SaaS(サース)とは、クラウドサーバーにあるソフトウェアをインターネット経由でユーザーが利用できるサービスのこと

編集部

金属加工業界ならではの課題があるのでしょうか。

藤野さん

製造業は安定した産業ではありましたが、それゆえに、ものすごくアナログのまま業務が進行されてしまっていたという課題があります。特に金属加工業界がそうで、例えば、いまだに案件の受け渡しにFAXや紙を使っていたりします。

国内の金属加工市場において、デジタルでの受発注は1%以下です。アナログな手段や人手を投入してやってきた業界なので、アナログであることは業界の成長において大きな課題だと感じています。

Catallaxyは直接取引後の業務デジタル化も支援

株式会社Catallaxyの社員たち

編集部

製造業のDX化はとてつもなく大きなインパクトをもたらすと感じる一方で、様々なハードルもあるのでは思いますが、それを乗り越える糸口はどこにあるのでしょうか?

藤野さん

そうですね。解決の糸口の1つは取引後の業務のデジタル化にあると思います。

「Mitsuri」を使って直接取引することによって新規の取引率は上がりますが、一方で、今まで間に入っていた方の業務を当人同士がやらなければいけなくなります。つまり、これまで商社にお任せしていた業務が自分たちの仕事になる、利益を増やすためには自分たちの仕事量が増える、ということです。

私たちはそれを「みなさん、がんばって乗り越えてください」と言うのではなく、取引を開始した後の業務のデジタル化を支援しています。

「Mitsuri」は取引後の流れもデジタルで集約できるようなツールになっていますし、Catallaxyでは生産管理や業務管理などのDX化を支援するようなプロダクトも5月から提供予定となっています。

編集部

直接取引を実現するだけではなく、受注後の業務フローのデジタル化も支援することで、デジタル前提のサプライチェーンづくりに取り組まれているのですね。

「Mitsuri」上での成約率は3割超え

「Mitsuri」の累計成約数・成約総額・成約率などの実績データ
▲「Mitsuri」の実績データ(サービスサイトより)

編集部

Catallaxyさんは2018年に「Mitsuri」をリリースされています。「Mitsuri」を使う工場や企業さんは増えていますか?

藤野さん

はい。「Mitsuri」の成長を表す指標は二つあり、一つは成約総額が挙げられます。「Mitsuri」を提供開始してから4年経ちましたが、この間に「Mitsuri」上で取引された総額は30億円を超えました。

もう一つは「成約率」です。例えば、工場の営業マンが営業をしたり、企業などに頼まれて見積もりを出したりしたときの成約率というのは、だいたい平均数%と言われています。良くても10%ぐらいです。しかし、弊社のプラットフォーム「Mitsuri」上で取引をしてもらった場合の成約率は、現在、平均で33%程度となっています。

編集部

「Mitsuri」を使うと成約率が高まる理由を教えてください。

藤野さん

「Mitsuri」では試作品から少量多品種、ロット品まで様々な部品を対象に図面を元にした調達ができるため、受注者からすると、いわゆる”無駄見積もり”が少なくなります。

発注者は意向にそぐわない見積もりが出てくることがなく、発注した案件に対するヒット率が高いことが一因だと思います。

編集部

受注者も発注者も、細かいニーズに合う案件が見つかりやすいということですね。成長要因は他にもありますか?

藤野さん

あとは、「直接取引できたらいいのにな」と思っていた人が、実のところたくさんいたのだと思います。

金属加工業界は100万円規模の仕事でも、5次受け、6次受けといった形でやってきた業界です。なので、間の商流を削減すればするほど利益は上がりますし、依頼する側も発注額が下がります。
コスト面やコミュニケーション面でそもそも直接取引のニーズがあったからこそ、デジタルで仕組化できたのが成長の要因だと思います。

編集部

今後、「Mitsuri」としての成長目標は掲げていらっしゃいますか?

藤野さん

現状「Mitsuri」の総登録社数は創業から数えると14,000社を超えていますが、これを20,000社にしたいと考えています。この目標は達成していきたいと思います。

フルリモート・フレックス制が、家族との時間増や成果向上に貢献

株式会社Catallaxy取締役の藤野潤也さんの自宅庭での仕事風景
▲藤野さんは家族のいる自宅庭で仕事をすることも

編集部

では次に、Catallaxyメンバーの働き方について質問をさせてください。会社資料で全国にメンバーがいらっしゃると拝見しましたが、フルリモートワークが前提でしょうか?

藤野さん

働き方はフルリモートを前提にしていますが、契約しているサテライトオフィスを利用することもできます。また、出勤や退勤の時間を自分で自由に決めることができるフレックスタイム制を導入しています。
コアタイムは11時から17時で、始業は8時から11時までの間、終業は17時から20時までの間であれば自由です。

1日8時間・週40時間に限らず、毎月の労働時間である160時間を満たしていれば、その日の業務量や予定に合わせて、働く時間をフレキシブルに調整できます。

編集部

従業員の方は現在13名、平均年齢が34歳と拝見しました。ライフステージの変化がある世代の方もいらっしゃると思いますが、ワークライフバランスはとりやすい環境でしょうか。

藤野さん

僕自身4人の子どもがいる子育て中世代ですが、結論から言うと、ものすごくワークライフバランスが取れていると思います。

実はCatallaxyに入社する前もリモートワークをしていて、フルリモートからフルリモートの転職で入社したのですが、前職に比べてフレックス制が加わったことで、より家族の時間を取りやすくなったと思います。

例えば、子どもたちを保育園や幼稚園のバスが来るところまで送ったりしていますが、こういうことは妻と協力しながら進められるようになりました。また、朝、子どもが熱を出したり、妻の具合が悪いというときも、病院に連れて行ったり、薬を買いに行ったりできます。

11時までに出勤すればいいのだと思うと、ちょっとした余裕が生まれます。他にも、ちょっと重い買い物をしたりとか、そういうこまごましたストレスがかなり解消されている、という感覚があります。

編集部

フレックス制があることで家族のために”ちょっとした時間”を使えるようになったのですね。仕事のパフォーマンス面ではいかがでしょうか?

藤野さん

自分自身が決まった時間の中で働くのはちょっと苦手だったこともあり、自分の調子を見ながらパフォーマンスをちゃんと出せるところが、フレックス制の良さだと思います。

家にちょっと広い庭があるのですが、仕事の合間に庭でコーヒーを飲んで息抜きをしたり、集中して仕事ができたり。おかげで、パフォーマンスはすごく上がっています。出社していた頃と比べると、仕事のパフォーマンスは事業成長700%を達成できたり、事業を客観的に見られる時間が増えて方向性がしっかり出せたりなど、非常に有効性の高い働き方のように感じます。

編集部

フルリモート勤務にフレックス制が加わったことで、より成果も出しやすくなったと感じていらっしゃるのですね。

ワークショップに集まった株式会社Catallaxyのメンバーたち
▲Catallaxyメンバーが集まりワークショップを行った際の1枚

生産性高く働くために17のWebツールを活用

株式会社Catallaxy取締役の藤野潤也さんの自宅での仕事風景
▲藤野さんの自宅でのワークスペース。フレックス制を活かして生産性を高めて働いている

編集部

各自がフルリモートやフレックス制で生産性高く働くために、会社として工夫されていることはありますか?

藤野さん

コミュニケーションにはSlack(スラック)を使っています。オンラインでもオフラインでも同期的なコミュニケーションは最小限にし、基本的にはテキストを使った非同期コミュニケーションをしています。

そこで、Asana(アサナ)というタスク管理ツールを使い、誰がいつ何をやっているのか、タスクの消化率はどの程度か、期限は守れているかといった、管理をしています。他にもテキスト共有ツールのesa(エサ)など17個以上のたくさんのWebツールを活用中です。

こうして各自のペースで働いていますが、わからないことがあればSlackで質問します。個人的には、オフラインで出社して質問をするよりも、Slackでメンションを飛ばして回答を待っている方が生産的だと思いますね。出社だと話しかけられたタイミングが自分が答えたいタイミングとは限りませんが、Slackだと自分のタイミングで回答できるからです。

編集部

Catallaxyの皆さんは様々なツールを活用しながら効率化し、生産性高く働いていらっしゃることが分かりました。

株式会社Catallaxyで導入しているWebツール一覧
▲Catallaxyで導入しているWebツールの一覧(同社HP内「私たちについて」より)

3ヵ月ごとに代表と給与見直し面談。Catallaxyの独自制度

リモートワークのイメージ

編集部

続いて、評価方法についてお伺いします。Catallaxyさんでは人事評価はどのようにされていますか?

藤野さん

Catallaxyでは、人事評価制度をあえて作っていません。代わりに3ヵ月に1回、代表(代表取締役・大石裕明さん)と給与見直し面談をしています。

1人ひとり、大石との時間をとってもらい、決められた質問を元にざっくばらんに話をします。面談での質問は「あなたが希望する額面月給を教えてください」「次の3ヵ月でどんなことをやっていきたいか教えてください」「不満点、相談事項があれば教えてください」「会社全体に対する要望があれば教えてください」の4つです。

編集部

3ヵ月ごとに給与見直し面談をするというのは、独自の取り組みだと思いますが、その意図を教えてください。

藤野さん

給与見直しと言っていますが、厳密に言うと自己申告制です。もちろん社員の申告をそのまま受け入れるのではなく、なぜその金額を希望するのかをちゃんとフェアな話し合いを通して決めていくようにしています。他社はあまりやっていない、弊社独自の制度だと思います。

人事評価制度を敷いていない背景としては、私たちのようなスタートアップでは短期間で局面がかなり変わってくることが挙げられます。

何をKPI(重要業績評価指標)にするかも毎月変わることがあり、「これができたからいい」という決まったものがありません。そこで、代表と直接「直近3ヵ月で何をしてきたか」「今後3ヵ月で何をしたいか」について本音で話し合える場を提供しています。

社員全員が称賛し合うリスペクトメッセージ制度

仕事後に集まった株式会社Catallaxyのメンバー
▲Catallaxyにはメンバー同士をリスペクトしあう文化がある

編集部

代表との面談制度では、本音で対話をすることやフェアネスを重視していらっしゃることがうかがえました。社内のメンバー同士も本音で対話するような文化があるのでしょうか?

藤野さん

はい。普段のコミュニケーションに加え、リスペクトメッセージという制度があります。これは四半期に1回、1人の人が他の全メンバーに向けて、「すごいと思っているところ」や「感謝しているところ」などのポジティブなメッセージを書いてもらうものです。

編集部

全員分なのですね!皆さん、どんなことを書かれるのでしょうか?

藤野さん

人数的にはまだそれほど負担ではないので、1人ずつ、全員分書いてもらっています。メッセージは「いつもありがとうございます」といった一言ではなく、みんな、ちゃんと具体例を出しながら、「ここがいいと思いました」とか「あの時こうしてくれたことに感謝しています」とか、それなりの長文で書いてくれていますね。

このリスペクトメッセージは指摘とかフィードバックとかそういう類のものではなく、その人の良いと思ったことだけを伝えてもらうので、受け取った側は当然嬉しいです。社内に「やっていて良かったな」とか「このチームにいていいんだ」といったポジティブな雰囲気が生まれます。

編集部

3ヵ月に一度、全員がポジティブなメッセージをもらうと、社内はポジティブな雰囲気で充満しそうですね。

藤野さん

そうですね。社名の由来が「ポジティブ・サム」であるので、ポジティブなことをし続けようという文化があると思います。

オープンなカルチャーは事業にも反映されている

談笑する株式会社Catallaxyのメンバー

編集部

Catallaxyさんのカルチャ―について、もう少し伺いたいと思います。藤野さんが感じるCatallaxyのカルチャ―はどのようなものでしょうか。

藤野さん

非常にオープンなコミュニティだなと感じています。例えばSlackでも極力DM(ダイレクト・メッセージ)はやめようよという文化です。もちろん個人的なことであればDMを使っても良いのですが、そこのバランスは取れていると思います。

編集部

オープンさは、Catallaxyさんの情報公開スタンスを見ていて感じました。ホームページで「私たちについて」という会社資料を掲載されていますが、中には就業規則や給与制度、勤怠管理、休暇管理の方法まであり、ここまで公開されるのかと驚きました。

藤野さん

そうですね。逆に隠すことがないというか。経営的な数値など事業的に公開できないものを覗いて、会社内の働き方や制度の運用方法、われわれはこういうふうに事業をしていますといった情報は、極力外に出すようにしています。

編集部

代表の大石さんは、オープン社内報とも言えるnoteを毎週公開されていますよね。これも、極力外に出すというスタンスが反映されているのですね。

藤野さん

はい。実はオープンさというのは事業にも反映されています。私たちは、事業の交渉においても、出せる情報は極力オープンに出すようにしています。なぜかというと、その交渉の場でお互いが話し合う際には、事前にできる限り同じ情報を持っておいた方が、生産的・建設的だと考えるからです。

交渉の場に限らず、打ち合わせや採用面接も同じですが、事前に出せる情報は基本的にはオープンにするようにしています。

■Catallaxyさんの会社資料・採用資料「私たちについて
■Catallaxy代表取締役・大石裕明さんのnote

「誰もやったことのない領域を楽しめる人」を募集

株式会社Catallaxy取締役の藤野潤也さん
▲「自分で仕事を作っていける人には楽しめる環境です」と話す藤野さん

編集部

採用についてお聞きしたいと思います。御社にマッチする人材というのは、どういう方でしょうか。

藤野さん

Catallaxyは誰もやったことのない領域で事業を成し遂げようとしており、今、すごくもがいている時期です。なので、そういった環境を楽しめる人、自分で仕事を作っていける人にとっては、めちゃくちゃ楽しい会社だと思います。逆に何か用意されたものに乗っかりたいという人には向きません。

編集部

チャレンジしたい人にとっては魅力的な環境なのですね。

藤野さん

はい。例えば、「会社に対して色々な企画を出してみたけれど、全然通らなかった」という人や、「本当はこうした方がいいなと思っているけれど、組織の関係上なかなか口にできなかった」など本質的に何か役に立ちたいという人にとっては、すごくいい環境です。

うちの会社にはそういった壁は一切なく、最低限のマナーを守れば、発言や発信はほぼ自由です。

編集部

最後に、Catallaxyさんに興味を持った方や応募を考えている方に、メッセージをいただけますか?

藤野さん

今も今後も大量採用は考えていませんが、入社してくれた1人ひとりに対しては最大限リスペクトをしたいと思います。そして入社した人が辞めたくなくなるような、経営体制を目指してやっています。

また、先ほど申し上げた「チャレンジできる会社です」というのは多くの会社が言うことかもしれませんが、Catallaxyではチャレンジできる環境をちゃんとオープンなコミュニティの場で提供しています。そんな環境で働きたい人、自分で主体的に物事を進めたい人には、ぜひ来てもらいたいです。

編集部

本日はありがとうございました!

■取材協力
株式会社Catallaxy:https://catallaxy.me/
採用ページ:https://open.talentio.com/r/1/c/catallaxy/homes/2947
「Mitsuri」サービスページ:https://mitsu-ri.net/