「完成された未完」がコンセプト。株式会社CARTA HOLDINGSがオフィスに込めた”進化”の意味とは

注目企業の新しい働き方や、社員のワークライフバランスにも力を入れている企業を紹介する本企画。デジタルマーケティング事業および、インターネット領域で幅広い事業を展開するIT企業である「株式会社CARTA HOLDINGS」にインタビューしました。

“進化”を生み出す「株式会社CARTA HOLDINGS」

新オフィスのエントランスに立つ株式会社CARTA MARKETING FIRM取締役の大橋さん

株式会社CARTA HOLDINGSは、「The Evolution Factory(進化推進業)」をミッションに掲げ、デジタルマーケティング事業とインターネット関連サービス事業を展開しているデジタル領域の企業です。

ネット広告をはじめ、広告配信プラットフォーム運営、デジタルマーケティング支援、広告代理店、自社メディア運営・D2C等のコンシューマー事業、新卒エンジニア採用支援など、幅広い事業を手がけています。

グループ内の組織体制の強化を図るため、株式会社CARTA HOLDINGS傘下である株式会社Zucks、株式会社ATRAC、株式会社PORTO、株式会社CARTA AGEの4社を経営統合。10月1日より「株式会社CARTA MARKETING FIRM(カルタマーケティングファーム)」として運営を行っています。

会社名 株式会社CARTA HOLDINGS
住所 東京都港区虎ノ門2-6-1 虎ノ門ヒルズステーションタワー36F
事業内容 デジタルマーケティング事業
インターネット関連サービス事業
設立 1999年10月8日
公式ページ https://cartaholdings.co.jp/
働き方 ハイブリッド勤務(出社+リモートワーク)

株式会社CARTA HOLDINGSおよびグループ各社は、2023年12月に新オフィスに移転しています。新オフィスの随所には、社員への想いやこだわりが散りばめられ、機能面、デザイン面からオフィスのグランドコンセプト「4 EVOLUTiON」を実現しています。

オフィス移転の経緯や新オフィスのコンセプトなどについて、移転プロジェクトのデザインや設計に関わった、株式会社CARTA MARKETING FIRM 取締役の大橋さんにお話を伺いました。

本日お話を伺った方
インタビューに応じてくれた株式会社CARTA MARKETING FIRM取締役の大橋さん

株式会社CARTA MARKETING FIRM 取締役
株式会社CARTA HOLDINGS グループコミュニケーション本部 副本部長
株式会社Yomite 取締役

大橋 徹さん

2拠点に分散していたオフィス機能を統合し、虎ノ門に移転

株式会社CARTA HOLDINGSのオフィスから眺める東京タワー
▲虎ノ門ヒルズのオフィスからは東京タワーも一望できる。

編集部

CARTA HOLDINGSさんは、最近オフィスを移転されたそうですね。

大橋さん

はい、2023年12月に虎ノ門ヒルズ ステーションタワーにオフィスを移転しました。元々は渋谷と東銀座に、東京拠点オフィスを構えていたのですが、今回の移転で本社機能を統合しました。

編集部

虎ノ門ヒルズ ステーションタワーに場所を決めた理由はなんだったのでしょうか?

大橋さん

立地としては、東銀座(日比谷線)からも、渋谷(銀座線)からも、乗り換えのない場所で、中間となるエリアを探し、結果として虎ノ門に決まりました。また、オフィスビルを虎ノ門ヒルズ ステーションタワーに決めた理由のひとつには、すでに内階段がついていたこともあります。

株式会社CARTA HOLDINGSの新オフィス内にある内階段

大橋さん

弊社の宇佐美(代表取締役 社長執行役員:宇佐美 進典さん)が、新オフィスにおいてはできるだけ一体感を感じられるオフィスが良いという理由で、内階段が欲しいと話していました。

2019年にCARTA HOLDINGSとして、サイバー・コミュニケーションズ(CCI、現CARTA COMMUNICATIONS)とVOYAGE GROUPが経営統合した時は、オフィスは別々の拠点で、PMI(経営統合プロセス)もかなり難しく、そもそも成り立ちも文化も、事業内容も大きく異なっている会社同士がひとつの会社になることが困難でした。

社員規模が増えていくなかで、1フロアでは収まりきらず、結果として旧オフィスでは複数フロア分散型になりました。オフィス移転のたびに、社内で内階段のあるオフィスに出来ないか、議論してきたのですが、内階段を後から作るのは莫大なコストがかかるため、費用がネックとなっていました。

今回お借りしたフロアには、はじめから内階段がついていたので、それも虎ノ門ヒルズ ステーションタワーへの移転が決定した大きな要因です。

リアルコミュニケーションの重要性から、オフィスの在り方を検討

株式会社CARTA HOLDINGSの新オフィスでの弁当販売風景と宇佐美代表
▲新オフィスのお昼時にはお弁当も気軽に購入できる。代表である宇佐美さんの姿も!

編集部

オフィスを移転することになった、その背景や意義などについてお聞かせください。

大橋さん

2020年以降リモートワークが一般的になり、出社の必要性が問われるようになっています。弊社でも、ハイブリッドワークやスーパーフレックスを導入し、社員の自由な働き方をサポートしてきました。

ただ、顔を合わせて行うミーティングの方が業務が捗ったり、それによって素晴らしいアイディアが生まれることがあります。もちろんリモートならではの良さもありますが、リアルなコミュニケーションの重要性も非常に高いです。

「出社して仲間と顔を合わせて仕事をすること」の意義について改めて考え、オフィスの在り方を見つめ直しました。

今後も様々なサービスやコンテンツを生み出し、新たな価値を創造していくために、オフィスも進化していく必要があるだろうと、新オフィスへの移転に至りました。

新オフィスのグランドコンセプト「4 EVOLUTiON」の意味とは

株式会社CARTA MARKETING FIRM 取締役の大橋さん

編集部

新オフィスのグランドコンセプト「4 EVOLUTiON」について、詳しくご説明いただけますでしょうか?

大橋さん

まず、CARTA HOLDINGS全体のミッションとして「The Evolution Factory」を掲げています。進化は、弊社にとっては最も重要なキーワードです。新オフィスのグランドコンセプトでも“進化”を軸にして「4 EVOLUTiON」を設計しました。

「4 EVOLUTiON」には“4つの進化”と“進化のための”という2つの意味がかかっています。“4つの進化”とは「For me」「For team」「For us」「For people & future」 です。

For meは「生産的でクリエイティブな、進化に繋がる作業空間」、For teamは「絆が生まれる、進化のきっかけとなる交流空間」、For usは「偶発的な出会いで、進化の渦を巻き起こすコラボレーション空間」という内容です。

そして、最後のFor people & futureには「そして、それらが人と未来を拓いていくために」という意味が込められています。

「For me」の指し示すクリエイティビティの加速

CARTA HOLDINGSの社員たちの勤務風景

編集部

4つの進化について、それぞれ詳しくご説明いただけますでしょうか?

大橋さん

「For me」は“個人の仕事”という意味で、社員の仕事が捗る環境をなるべく提供していきたいという考えのもと生まれたコンセプトです。

入力作業などのルーティンワークであれば、在宅ワークでもできるでしょう。しかし、都内で働いていて、好きな仕事環境や必要な設備を完全に自宅に用意できている人は少ないと思います。

リビングで仕事をしたり、家族がいるから気分転換しようにもうまくいかない方の割合が多いです。自宅では満足に作業できない人も、仕事に集中して生産性を上げられるような環境をオフィスに作ろうというテーマから、このコンセプトを作成しました。

「For team」の姿勢で実現する絆とチームワーク

株式会社CARTA HOLDINGSの新オフィスの風景

編集部

For teamは、どのようなコンセプトでしょうか?

大橋さん

まず、仕事とは1人では完結してないものであり、いかに仕事がはかどるかはチームワークが決め手であると考えています。そのためにはチームメンバー同士はもちろん、チームや事業会社(※)を超えた交流がしやすい環境が重要です。
(※)CARTA HOLDINGS傘下には18以上の事業会社があります。https://cartaholdings.co.jp/company/group/

例えば、オフィス内のどこに何のチームが座っているのかが分かりやすく、チームや事業会社間のメンバーが話しやすいレイアウトだったり、執務スペースの付近でスタンディングミーティングできたりという環境を想定しています。

会議室を押さえてのミーティング以外にも、すれ違いざまや移動中にちょっとしたミーティングを行うという光景は、コロナ禍前ではよく見られました。

そうしたことができるように、オープンミーティングスペースや相当な数のホワイトボードを用意するなど、社員間の交流の機会を提供しようというのが、For teamのコンセプトです。

編集部

例えばプロジェクトメンバーで1時間のミーティングをした後に、特定の人たちだけでもう少し話したいといった場合に、会議室近くにスタンディングデスクなどが設置されていると非常に便利ですね。

「For us」が導く偶発的な出会いとコラボレーション

株式会社CARTA HOLDINGSのオフィス内のフリースペース
▲多目的エリアであるフリースペース「PLAZA」。憩いの場として使うほか、イベント開催も可能。

編集部

For usは、For teamよりも多い人数を想定したコンセプトになっているのでしょうか?

大橋さん

そうですね。そして“us”は、仕事の概念を超えた仲間のことを指しています。

社員たちが仕事の話をするだけではなく、さまざまな会話をして個人間の繋がりを作って欲しい。そして、横のつながりから新しい事業や社内制度などが誕生することを目指しています

CARTA HOLDINGSは、事業会社を含めると社員数は約1500人です。そのため、普通に過ごしていたら一生喋らない社員同士がかなりの数いることになります。しかし、CARTAにとっては同じ人的資本であることに変わりありません。

新オフィスという空間を通じて、本来交わらないであろう人たちがCARTAの名のもとに交わり、議論や会話をすることで気づきを得て、新しいアイディアが生まれることを見込んでいます。そのために、さまざまな形の交流スペースを設置しました。

そして、数ある交流の機会の中でも、いわゆるセレンディピティ、偶発性の出会いを意識しています。今では、さまざまなコミュニケーションツールやサービスが登場していますが、偶然生まれる出会いというのは、やはりリアルに勝るものはないと考えています。

「For people & future」の名のもとに未来を拓く

株式会社CARTA HOLDINGSの新オフィス内の会議室

編集部

For people & futureは、その名前の通り将来を見据えた内容が込められているのでしょうか?

大橋さん

そうですね。CARTA HOLDINGSは「人の想いで、人と未来の可能性を、拓いていく。」というブランドパーパスを掲げています。

EVOLUTiONはまさに「人と未来の可能性」に向かうことで、さらにSDGsやエシカルといった概念を加えて、包括的に表現したのが「people & future」です。

ビルの36階〜38階が弊社のオフィスですが、「For me」「For team」「For us」はフロアごとに振り分けられるように設計しています。そして、「For people & future」 はフロア全てで表現されています。

編集部

「For me」「For team」「For us」は、それぞれオフィス内のレイアウトやスペースに分かりやすい形で表現されているということですね。そして、その全てに関連しているのが「For people & future」 なんですね。

社内カフェやラウンジなど、社員同士の出会い・交流を生むスペース

株式会社CARTA MARKETING FIRM 取締役の大橋さん

編集部

「For us」についてのお話の中で、社員さん同士の交流の機会が生まれるようなスペースを設置されているとのことでしたが、具体的にどのような施設があるのでしょうか?

大橋さん

渋谷と東銀座の旧オフィスにも、社内カフェ「Garden」、社内バー「AJITO」といった施設や、ちょっと休憩ができるようなオープンスペースがありました。こうした「あそこに行けば誰かしらが居る」場所を新オフィスにも設けています。

そのほか、多目的エリアやオープンミーティングエリア、コミュニケーションラウンジなど、多様な形態の社員同士の交流スペースを設置しました。

隠れ家のような社内バー。窓際のステージは自由に使用可能

株式会社CARTA HOLDINGSの社内バー「AJITO」の内部
▲社内バー「AJITO」の中の様子。画像奥にステージがあり、その向こうに東京タワーが望めるようになっている。

編集部

リアルなコミュニケーションを大切にされているとのことなので、交流スペースはこだわられていると思います。中でも、特に力を入れたのはどこでしょうか?

大橋さん

やはり社内カフェ「Garden」と社内バー「AJITO」ですね。設計も含めて最も力を入れたと言えるのは、AJITOです。旧渋谷オフィスから移設の予定だったのですが、急遽居抜きが決まったため、一から作ることになりました。

隠れ家の意味を持つ“アジト”の通り、AJITOは隠れ家のような造りにしました。外側からの見た目は巨大な本棚で、本棚の1ヶ所が隠し扉になっています。隠し扉を通り、中に入るとバーが現れる設計です。ビルの角の窓際に位置するので景色がよく、東京タワーが本当に近くに見えるんです。

また、AJITOの中にはステージがあり、トークや演奏イベントなどができるようにしました。とはいえ、イベント時だけではなく、いつでも自由な用途で使えます。社内にはバンド活動をしている人が多いので、退勤後、有志で集まった社員がジャム・セッションをする光景をよく見ますね。

株式会社CARTA HOLDINGSの社内バー「AJITO」のバンドセット

編集部

ステージを自由に使えるので、バンド演奏など社員さん発信の催しなども開催されて、新たな交流の機会が生まれそうですね。

ビジュアルコンセプト「完成された未完」を最も表現したエントランス

株式会社CARTA HOLDINGSの新オフィス内の看板

編集部

オフィス作りにおいて、苦労された部分や難しかった部分があればお聞かせください。

大橋さん

まず、グランドコンセプト「4 EVOLUTiON」とは別に、「完成された未完」というビジュアルコンセプトを設定しています。

グランドコンセプトは、「その場所は何のためにあるのか」という機能的な概念です。それだけだと、ビジュアル上のコンセプトを落とし込みづらいんですよね。

そして、弊社が掲げているミッション「The Evolution Factory」は、かなり抽象的な概念です。Evolutionは「一歩一歩変わっていく」という意味で、生物の進化に近いといえます。そのため、どう表現するのかは非常に難しく、検討に検討を重ねました。

編集部

確かに、一言で言い表すのは簡単ではない概念ですね。検討された結果、どう解決したのですか?

大橋さん

検討した結果の一つが、エントランスウォールです。我々は「ミッションウォール」と呼んでいて、一番わかりやすくビジュアルコンセプトを表しています。

壁は骨組み、下地、仕上げで成り立っているのですが、その壁を構成する4つの建材を意図的にみせています。そして、その上に社名とミッションを掲示しました。

株式会社CARTA HOLDINGSの新オフィスのエントランス

これにより、壁が作られていく変化の様を見せ、進化の過程をビジュアルで表現しています。CARTA HOLDINGSは今まさに進化の中にいて、ミッションの「The Evolution Factory」はさらにその先にあることを示しているんです。

骨組みのみの空間を、会議室や交流スペースにカスタマイズ

株式会社CARTA HOLDINGSの窓際のバルコニーエリア
▲開放的なバルコニーエリア。LGS組みになっており、社員の希望に応じて用途を変えられるようになっている

編集部

ほかにもビジュアルコンセプトを反映させたスペースはありますか?

大橋さん

執務エリアがLGS組み(※)のみで仕切られています。壁を構成するために最低限必要な骨組みで、社員が自由に空間をアップデートできるようにしています。
(※)LGS組み:軽量鉄骨(Light Gauge Steel)で作られた、壁や天井の骨組みのこと。

ホワイトボードや本棚などをつけて交流の場としたり、ボードやカーテン、ガラスなどをつけてミーティングスペースにしたりなど、無限の可能性を秘めています。

オフィス移転が検討される時は、大抵が手狭になってきた場合だと思います。特に人が集まったときに不都合が出てくるのは会議室です。

社員から「会議室が欲しい」という声が上がったら、あとから板張りすることで、社員が望む形で会議室に仕上げることも可能です。

また、「完成された未完」というコンセプトには、オフィスはまだ進化の途中で、社員みんながオフィスを進化させられるという意味も込められています。その想いを表現しようと設計しました。

現在、未来で働く人全員に、オフィス進化に関わる余地がある

株式会社CARTA HOLDINGSのオフィスの壁に設置されたスリット
▲壁面に設置されたスリット。

編集部

LGS組みの仕切り以外にも、社員さんの手で進化させることができる場所はあるのでしょうか?

大橋さん

あまり派手なものではないのですが、会議室周辺の壁面にはスリットを設けました。これにより、テーブルやホワイトボード、本棚、収納など、社員が必要なものを好きな場所に設置できます。

工事不要ですぐにつけることもできるし、すぐに外すこともできます。そういう身近な進化を社員全員がやる権利がある、やれる土壌があることを表現したかったです。

働いている人、これから一緒に働く人たちにも、今よりもさらにいいオフィスにできるんだ、オフィスの変更に関わっていく余地があるんだと思って欲しく、このような造りにしました。

編集部

社員さんから新オフィスに関するフィードバックなどは届いていますか?

大橋さん

移転して間もないため、まだあまり多くのフィードバックは来ていないのですが、「会議室が足りない」という声が出ています(取材は2023年12月に実施)。

実は、現在工事中で、会議室の一部だけをオープンしている状態です。完成してからオープンすればいいという話もありましたが、工事中という進化の過程が見れる、ある意味いいタイミングになったのではと感じています。(2024年1月時点では全ての会議室がオープンになりました)

編集部

御社のミッションやコンセプトの軸である“進化”の様子を目にすることができる貴重な機会になったということですね。また、会議室が足りないとなったら、先ほどのLGS組みのスペースやフリースペースの活用に繋がるのではと思います。

興味があればオフィスに来て「完成された未完」を感じてほしい

株式会社CARTA MARKETING FIRM 取締役の大橋さん

編集部

それでは最後に、御社の事業に関心がある方、新オフィスに興味を持った方に向けて、メッセージをお願いします。

大橋さん

弊社に興味を持っていただいたら、まずはオフィスにお越しいただき「完成された未完」という空間の雰囲気を体感してみてほしいです。

そして、自分も事業も会社も社会も進化をさせていきたい、と思っていただけたらお気軽にお問い合わせください。一緒に進化を作り出していきたいと思っております。

編集部

CARTA HOLDINGSさんは、社員さん同士のコミュニケーションを大切にされているからこそ、その交流の中で生まれるアイディアや相乗効果によって、進化を続けられているのだと思います。

今後も新しい事業やコンテンツなどが創出され、会社としても成長されていくことと思います。新しいことに挑み続けたい、現状に満足せずに進化していきたい、というマインドをお持ちの方に、御社はフィットするのではないでしょうか。

本日はありがとうございました。

■取材協力
株式会社CARTA HOLDINGS:https://cartaholdings.co.jp/
採用ページ:https://cartaholdings.co.jp/recruit/