研修講師を派遣するBrew株式会社が組織を「発酵」させて急成長した理由とは

注目を浴びる気鋭の企業の文化や採用についてインタビューするこの企画。

今回は、企業における研修の企画や講師派遣などを通し、人材育成や組織開発に取り組む「Brew株式会社」を取材しました。

Brew株式会社とは

Brew株式会社は、企業の研修において、独自のプログラムを持つ講師を、課題やニーズに応じて派遣しています。

研修前の参加者に向けた動機付けや、研修後に学んだことを生かすためのアクションプランの策定、プランの進捗確認、フィードバックにも携わります。

その他、人材育成や組織開発のコンサルティング、アドバイザーとしての業務も手掛けています。顧客となる企業、人材を成長に導くため、さまざまな角度からアプローチをしています。

会社名 Brew株式会社
住所 東京都中央区銀座7丁目13番6号サガミビル2F
事業内容 ・企業内研修、人材育成コンサルティング事業
・マーケティング支援事業
・教育教材・コンテンツ開発事業
・学びのコミュニティ運営事業
・ロゴやPR誌などのデザイン開発事業
設立 2014年5月20日
公式ページ https://brew-ing.com/

今回は、そんなBrew株式会社代表の原佳弘さんにお話を聞かせていただきました。

本日お話を伺った方
Brew株式会社代表の原佳弘さん

Brew株式会社
代表

原 佳弘さん

個性豊かな350人以上の講師を抱え、企業の研修を実施

Brew株式会社が講師を派遣した企業の人事部勉強会のようす

編集部

まず最初に、Brewさんの事業内容についてお聞かせいただけますでしょうか。

原さん

Brew株式会社は主に、大手企業を中心に研修の機会を提供しています。各業界や現場での成功経験を持った講師を350人以上抱えているため、顧客企業の予算やテーマ、やりたいことに応じ、いろいろな講師を組み合わせたり、セレクトしたりできます。

また、人材の定着や人的資本のスコアアップのためにどんな施策が必要なのか、それがビフォーアフターでどう変わったのかといった調査もしています。

編集部

競合他社がひしめく業界で、Brewさんが大手企業と差別化するために意識していることはありますか?

原さん

根底には「同業の大手がやらないことをやりましょう」という思いがあります。たとえば、顧客に「そこまでするか!?」と思ってもらうまで仕事を突き詰めているか?「今までにない面白いこと、やってみないか?」という社内の合言葉もあります。

おそらくこういった姿勢があるため、お客様に信頼していただいたり、面白がっていただいたりしているのだと思います。

編集部

Brewさんが顧客に支持されるようになった経緯について伺えますか?

原さん

会社の創業から5年間は、私1人で会社を運営していました。当時は実績を積むこと、自分のブランディングや専門性を高めることを一生懸命にやっていました。

ですがある時、業界のHRカンファレンスに参加し、その場にいた担当者にちょっとした突っ込みを入れたんです。「研修やってアンケートを取って満足していてはだめだ」「研修というイベントごとになっていないか!?」と、進言したんですね。

そうしたら、その場にいたお客さんが弊社に対して「これは面白いな」「耳ざわりのいいことを言うだけのやつじゃないな」といった雰囲気になりました。熱意があり、言いにくいことも指摘してくれると感じていただけたのではないしょうか。

「原さんなら顧客のことを真剣に考えてくれる」と思ってもらえたことでお客様が急増し、会社が伸びていくきっかけにもなりました。

編集部

原さんの「企業の成長と向き合う真剣さ」が周囲に伝わったのですね。

講師の評価の細分化で、顧客企業のニーズに柔軟に対応

編集部

Brewさんに所属されている、研修に携わる講師の方々は、どのように集めたのでしょうか?

原さん

私は独立前、マーケティングコンサル会社に勤めていました。その時にお付き合いがあった講師が今も、全体の2割ぐらいを占めています。残りは私が起業してから集まってくださった方たちです。

私は起業した2、3年目に「研修・セミナー講師が企業・研修会社から選ばれる力」という本を出しました。この本を出してから、実力も個性もある講師が集まるようになりました。また私から声をかける場合は、本当に企業にお勧めしたいと思える方をお誘いするようにしています。

編集部

顧客企業にとって最適な講師を派遣するために、工夫していることはありますか?

原さん

提供している講師の評価を細かくしています。「どんな業界出身なのか、どのようなテーマで話ができるのか」といったことや、プレゼン力、ファシリテーション力、カスタマイズの協力度合いなども点数化して、データベース化しています。

例えば「話すのはうまいけど、参加者の話を引き出すのがあまりうまくない」というケースや、「しゃべりも話の引き出し方も上手いけど、あまりカスタマイズはしてくれない」など、いろいろな評価軸があります。

編集部

講師の評価の仕方を細分化し、お客様の課題に沿った講師やプログラムを提示することで、柔軟にニーズに対応できるのですね。

5年前と比べ売り上げは急増。顧客の企業数は約4倍に

編集部

続いて、Brewさんの売り上げや顧客数の変化について伺えればと思います。

原さん

売り上げは、5年前と比べて2.5倍から3倍ぐらいになっています。社員も当時は私一人でしたが、今は業務委託も含め6人になっています。

編集部

社員一人当たりが営業で対応する企業の数はどれくらいになるのでしょうか?

原さん

20社から35社ほどでしょうか。ただ、5年前から顧客となる企業数は約4倍になっていますので、今後さらに増えていくと思います。

編集部

Brewさんが講師を提供した企業の研修では、以後の参加者が増えたり、アンケートのスコアが上昇したりしているそうですね。

原さん

提供先の人事部の姿勢が変化しているのだと思います。人事担当者が「これは会社が決めた内容だから必ず受けるように」という姿勢で研修を設定したなら、受講者はその必要性に疑問を抱いてしまいがちです。研修後も「疲れた」「聞くだけ聞いてみた」といった感想が出てきてしまいます。

Brewが企画する研修は、そうではなく、「みんなが受けたいものは何?」「うちの会社に必要なことを一緒に考えよう」と、社内でコミュニケーションを取ってもらうように促します。つまり、お客さんの社内の関係性を変えようとしているのです。

編集部

ただ研修を開催するだけではなく、研修をよりよいものにするにはどうすればいいかということも熟慮しているのですね。

建前ではなく本音をくみ取る「察知分析力」を重視

ワークショップをおこなうBrew株式会社の原佳弘さん

編集部

Brewさんの行動指針の一つに「変化の兆しを捉える『察知分析力』を磨き続けます」とあります。これはどういった意味合いでしょうか?

原さん

例えば、研修受講後のアンケートで、人事担当者に目を付けられたくないから「良かった」と記述することはありませんか。いわゆる建前でアンケートを回答する傾向はゼロではりません。そこで、アンケートでは建前ではなく本音をくみ取ることが必要です。

そのためには、例えば「本当にこの研修で満足したのか」「講師の言っていたことが伝わっているのか」「現場で実践できるのか」など、現場の空気感がスコアと一致しているのかどうかを察知し、判断することが求められます。

会社の行動指針には他に、「ロマンとそろばん、右脳と左脳などの『中庸統合力』」というものもあります。これは、何かひとつの正解や方法論に固執せず、パッションとロジック、陰と陽など、物事を両面から考える大切さを表現しています。

データだけではなく、「何か違和感があるな」「まずい空気だぞ」といった感性も含めて物事を判断するという意味です。

編集部

数字やデータのみを考慮するのではなく、人に寄り添う姿勢も大切にしているのですね。

原さん

その「寄り添う」という言葉が、社員の間で今、こだわっているキーワードなんです。だから、社員が軽く流したような返事をした時は、冗談を交えながらも今後そのようなことがないよう注意していますし、そのためのコミュニケーションのトレーニングをしています。

知識と経験を結び付け、発酵のように人をじわじわと成長させる

Brew株式会社の原佳弘さんが「組織発酵学」を商標登録したときのようす

編集部

Brewさんのビジョンには、「この国に世界に誇るビジネスリーダーを100人生み、何かで世界を驚かせる企業を30社創出する」とあります。その達成に向けて今後、どのようなことに取り組んでいくのでしょうか?

原さん

ビジョンは、焦らずとも大きな流れの中で、いかようにしてでも達成できる、と思っています。今は課題だらけで、まだまだ目標に達するには遠い状況ではありますが。

やりたいことをやるには人員が足りず、採用をかなり強化しています。「組織発酵学」という私独自のコンテンツがあるのですが、そこで強調している「自立し、挑戦する人材を増やす」ことも視野に、さまざまな方法で目標を達成する方法を探っている最中です。

編集部

社名の「Brew」は日本語で醸造を意味し、旨味を引き出す醸造家のように、人の成長を促す存在でありたいという意味を込めていると聞きました。どのような成長過程をイメージしているのでしょうか?

原さん

先ほども申し上げた通り、人の話を聞いて「その通りです」「わかりました」だけでは、まだ成長や変化の入口です。研修などで学んだことが何かの体験と結び付いた時に、「あの言葉は、今になって深く理解できる」という感覚こそが、発酵のように人をじわじわと成長させていくと考えています。

学生の知見に期待。インターン制度の復活に前向き

編集部

Brewさんでは、インターン制度を取り入れていたことがあるようですね。

原さん

以前にインターンが所属していたのは、会社を立ち上げて3〜4年目でした。大学の後輩に、営業のアポイント電話やセミナーの開催などを手伝ってもらっていたんです。

インターン生への指南は、リストと簡単なトーク原稿、またアポイントを取るアドバイスを渡した程度でしたが、彼女たちはマニュアルを自ら作成し、アポが取れずに沈んだ気持ちの持ち直し方なども、新たに共有してくれました。そこで、「インターン生でもすごく仕事ができる人がいるんだな」と感じたんです。

今はインターン生の受け入れは途切れていますが、また来ていただけるのであればありがたいと思っています。

編集部

もしインターンの受け入れを再開するとしたら、どのような仕事を任せるのでしょうか?

原さん

法人の営業に取り組んでもらい、セミナーの集客や運営も体験してもらうと同時に、学生目線での新しい販促手法や、新規事業を一緒に考えて、実践してもらいたいですね。弊社企画のセミナーに参加してアンケート、インタビューに答えてもらい、学生なりの感想も聞いてみたいです。

インターンの受け入れ条件としては、学びや成長に興味がある人が大前提になりますが、一度、会社に遊びに来るくらいの感覚でお越しいただければと思います。

編集部

幅広く、実践的な業務に関われることは、インターン生にとっても良い経験になりそうですね。

社員に求めるのは経歴より他人に寄り添う姿勢

HRカンファレンスに出展した際の、Brew株式会社の原佳弘さんとスタッフさん

編集部

Brewさんでは、社員のIQよりEQ(※)を大事にしているとお聞きしました。
(※)心の知能指数。他人の感情を読み取り、自分の感情をコントロールする能力

原さん

そうですね。採用でも、学歴やビジネススキルよりも、他人に寄り添える人かどうかを大事にしています。そのため、洞察力や思いやりがある人が入社してくれるケースが多いです。

社員に注意する時は、「寄り添う」姿勢が見えなかったときですね。業務でお客様に迷惑をかけた際などに「逃げる」「ごまかす」「嘘をつく」という言動があったときは、どこを変えていくべきか諭すように話しています。

また、Brewではコーチングなどを学びたい社員に、1人につき年間数万円の補助を出しています。大手の競合他社と戦うには、社員に成長してもらうことが不可欠ですし、学びを支援する会社が自分たちも学んでいないとな、と感じているからです。そういったことも踏まえ、自ら学んで成長していきたい方と一緒に働ければと思います。

編集部

Brewさんは真摯に顧客と向き合い、人と人との関わり方をとても大事にしていると感じました。社員の成長を思う姿勢も強く伝わってきました。本日は、お忙しいところありがとうございました!

■取材協力
Brew株式会社:https://brew-ing.com/
採用ページ:https://brew-ing.com/recruit/