教育業界をDXする株式会社ビルディットが目指す、個人の成長が尊重される世界

若手エンジニアがいきいきと活躍している企業にお話を伺うこの企画。今回は、「一人ひとりの成長が、世界をより良くする」という理念に基づき、オリジナリティのあるアプリ開発やコンサルティングを行っている株式会社ビルディットにインタビューしました。

教育・育成事業のDXを推進する、株式会社ビルディット

株式会社ビルディットの企業哲学
▲株式会社ビルディットでは「一人ひとりの成長が世界をより良くする」という企業哲学を掲げている(公式サイトから引用)

株式会社ビルディットは、「一人ひとりの成長が世界をより良くする」という企業理念のもと、八王子を拠点に、教育・育成事業のDX推進に向けてアプリ・Webサービスのデザイン・設計・開発を行っている企業です。

振り返りを支援するアプリ「Stockr」の開発のほか、教育・育成サービスを6カ月でデジタル化するコンサルティングサービスなど、個人の成長や教育に寄り添う独自のスタンスで、多くの教育関連事業者から支持を得ています。

会社名 株式会社ビルディット
住所 東京都八王子市東町1-14 橋完ビル4F
事業内容 ・ふりかえり習慣化アプリ「Stockr」関連事業開発・サービス提供
・教育/育成関連事業DX(デジタルサービス立ち上げコンサルティング「Build U」提供、Webサービス・スマートフォンアプリのデザイン・開発・運用、事業データ収集プラットフォーム構築・運用、AI・機械学習を活用したデータ解析・システム改善、Webマーケティング支援)
設立 2016年3月
公式ページ https://bldt.jp/
働き方 ハイブリッド勤務(出社+リモートワーク)

今回は、株式会社ビルディットの創業者であり、代表を務める富田陽介さんに、会社の理念や振り返り支援アプリ「Stockr」の開発秘話などを聞かせていただきました。

本日お話を伺った方
株式会社ビルディットの代表の富田陽介さん

株式会社ビルディット
代表

富田 陽介さん

会社の成長とともに生まれた振り返り支援アプリ「Stockr」

株式会社ビルディットが開発した振り返り支援アプリ「Stockr」のイメージ
▲振り返り支援アプリ「Stockr」

編集部

まず最初に、ビルディットさんの事業について教えてください。

富田さん

弊社が開発する代表的なサービスは、振り返りを支援する自社開発アプリ「Stockr」です。これは、毎日ふと気づいたこと、思いついたことを記録していくアプリで、経験からの学びと気づきを積み上げて、その振り返りを習慣的に行うことができます。

趣味・スポーツに使っている方もいらっしゃいますし、ライフワークの目標管理にも有効なツールです。2021年4月の正式リリースからいくつかの変更をおこない、現在も改善を重ねています。

編集部

継続的に振り返ることで、自分の考えをクリアにできるアプリなんですね。「Stockr」の開発までにどんな経緯があったか、ストーリーを教えてください。

富田さん

「Stockr」の誕生には、ビルディットが会社として成長してきた軌跡も関係しているので、そこからお話をさせていただこうと思います。

ビルディットは、私が教育ベンチャーを退職した後、2016年3月に1人で始めた会社です。創業して1年後ぐらいには、会社の方向性として「エンジニアや作り手にとって本当に良い場所を作ろう」と自分の中で決めていました。

編集部

富田さんがお一人で起業されてから、どのように事業が広がっていったのでしょうか。

富田さん

ご縁があって少しずつ社員が増えていき、3~4年間ぐらいかけて中規模以上のシステム開発、受託開発のプロジェクトが回せるようになりました。

ビルディットという会社は、ひとりでもやっていく実力がある中途採用のエンジニアと、すごく若いエンジニアという、両極端の人材で成り立っている点がユニークです。八王子という土地柄もあり、アルバイトで入った大学生がそのまま働き続けるパターンが多いんですね。

3~4年ぐらい経つと、社員が成長して、自分たちも独立してチャレンジしていきたいという話も出てくるわけです。その頃から私は「会社って何だろう」と再び考えていました。そこで、この会社は何のためにあるのか、我々の何に共感して集まってもらうのか、ということを言葉にするための合宿をやってみたんです。

編集部

合宿で、会社のビジョンについて社員の皆さんでじっくり話し合われたんですね。

富田さん

はい。そのときにでき上がったのが、「一人ひとりの成長が、世界をより良くする。」という言葉です。これがビルディットとして、一番大事にしているフィロソフィーとなっています。

ビルディットの世界観を反映。「前に進む」ことをサポートするサービス

編集部

「一人ひとりの成長が世界をより良くする」というビルディットさんの哲学が決まった後は、どのように成長されていったのでしょうか。

富田さん

会社の業務として、私が教育ベンチャーにいた関係で人材育成や教育関連の事業者さんのお手伝いをさせていただくことが多かったんです。なので、「教育や人の成長を支援する」という点をしっかり打ち出していこうと考えをまとめました。それが、2020年の初めぐらいでした。

編集部

2020年の初めというと、ちょうどコロナ禍に突入するタイミングですね。

富田さん

そうなんです。私たちがお手伝いさせていただいていた教育関連の企業は対面でのシーンが多い業種なので、事業が止まるケースが発生しました。

そういう状況下で、ビルディットのフィロソフィーを込めた自社サービスとして立ち上げたのが、「Stockr」というサービスです。

編集部

「Stockr」は、ビルディットさんの世界観を反映したアプリでもあるんですね。

富田さん

私達が作っていきたい世界観は、「いろんな人が、いろんな思いを持って、前に進もうとしている」という世界観です。「能力のある人たちがピックアップされて、強い人たちだけで集まる」という世界観もありますが、それだけじゃないと思うんです。

「方向はそれぞれ異なっていても、前に進もうとしている人が大勢いれば世界はちゃんと良くなっている」と伝えるサービスを作るのが、私達の理念です。

編集部

とても明確で、そして温かい考え方ですね。

株式会社ビルディットが大事にする3つの基本的な価値観

株式会社ビルディットが大事にしている3つの価値観のうち2つ
▲ビルディットが大事にしている3つの価値観の中の「From scratch」「With all our heart」(公式サイトから引用)

編集部

ビルディットさんの大事にしている理念について教えてください。

富田さん

私達が大事にしている3つの基本的な価値観があります。

一つ目は「From scratch」です。日本語に直すと「挑戦」という意味合いですね。小さなチームでアイディアからものを作っていくことを、ゼロベースで考えるということです。前の案件と同じことをやるのではなくて、挑戦を大事にしようということを掲げています。

編集部

経験を重ねると前例に頼りがちになることもありますが、ゼロベースで思考することは大事ですよね。

富田さん

そして二つ目が「With all our heart」。これは「誠実、丁寧」という表現をしています。

ビルディットは創業以来、営業職がいません。どうして営業職がいなくても受注に困らないのかというと、ご縁のある企業様から次の仕事やクライアント様をご紹介していただいているからなんです。「目の前の仕事をちゃんとやる」「嘘をつかない」「逃げない」というスタンスで仕事をしている結果であると分析しています。

相手が望んでいることをちゃんと叶えようとできているか、相手の期待に対して期待以上に対応しているかということを、社内においても、お客様に対しても大事にしています。

編集部

誠実な仕事で信頼を得ているからこそ、次の仕事につながるというわけですね。

株式会社ビルディットが大事にしている3つの価値観のうち1つ
▲もうひとつの価値観「Lifelong learners」(公式サイトから引用)

富田さん

三つ目が「Lifelong learners」。これは「自己研鑽」とか「練達」という表現になると思います。私達が成長を支援する立場である以上、自分たちが学ぶことをやめていたら本末転倒なので、私達自身も自己研鑽を怠らず、学んで、能力を開発して、高みを目指していくことを忘れないようにしよう、と考えています。

この三つの価値観を大事にして、高品質な学びの仕組みを作ることを目指しています。

編集部

どれも、ビルディットさんの企業風土を表す価値観ですね。明確に言葉にすることで、メンバーの皆様全員が価値観を共有しやすくなっているのだと分かりました。

話し合いでルールや開発言語を決める、エンジニアの働き方

株式会社ビルディットで働く社員のイメージ
▲株式会社ビルディットで働く社員のイメージ(公式サイトより引用)

編集部

続いて、ビルディットさんのエンジニアの働き方についてお伺いしたいと思います。現在、何名のスタッフがいらっしゃいますか。

富田さん

2023年8月現在、スタッフはデザイナーなども含めて全員で約10名です。エンジニアは4名在籍しています。

編集部

リモートワークも導入されていますか?

富田さん

基本的には八王子のオフィスに出社という考え方なのですが、リモートワークも行っています。2023年4月まではフルリモートだったので、今、環境を整えながら少しずつ出社に戻しています。

「1週間に1回以上は来よう」「毎月1回の全社イベントには全員出社しよう」など、リモートワークに関するルールを決めている最中です。

編集部

皆さんでルール作りをされているんですね。エンジニアの方の開発環境について教えてください。

富田さん

現在よく採用しているのは、プログラミング言語のPHPです。あとはTypeScript、JavaScriptを使っています。アプリの開発には、Googleが提供しているFlutter(フラッター)というクロスプラットフォームで、iOSとAndroidの両方を作ることができる技術を採用しました。インフラについてはAWS、GoogleのGCPを使っています。

ただ、どの技術も「ずっとこれを使います」というものはありません。「挑戦」というのが私達の大事にしている価値観でもあるので、その時々に応じて最適なものを選んでいくことが大前提です。

編集部

プロジェクトごとに、適切な技術を選択していらっしゃるということですね。

スタートからの開発案件がメイン。楽しいから、エンジニアも成長できる

株式会社ビルディットの合宿風景
▲株式会社ビルディットで開催している合宿の様子。

編集部

ビルディットさんでは、「Stockr」のような自社事業と受託事業の両方を行っているとのことですが、事業を受託する上で、富田さんが大事にしていることを教えてください。

富田さん

受託事業のほとんどは、新規案件のスタートや開発案件といったいわゆる「一次請け」です。二次請け、三次請けの受託事業はほとんどありません。

編集部

スタートから関わることのできる案件だと、エンジニアのモチベーションも上がりますね。

富田さん

自分たちが作り出すものに対して裁量が大きい方が楽しく仕事ができますし、やりがいも感じやすい、と考えています。人間、楽しいときが一番成長するものなんです。私達自身が「成長を作り出す」という理念を掲げているわけですから、仕事をする上でも成長できる環境を作りたいので、できるだけ一次請けを受託するようにしています。

編集部

どういったクライアント様が多いのでしょうか。

富田さん

教育関連のベンチャー企業と取引させていただいたり、全国展開している幼児教室さんの業務システムの運用支援をさせていただいたりしています。受託の経路は、先ほどお話ししたようにほとんどが紹介です。

編集部

主に教育関連の事業者から、DXのご相談を受けていらっしゃるんですね。

富田さん

私達が力になってきた教育事業者さんは、どちらかというとアナログな世界に生きてこられた方が多い印象です。「DXと言われても、何をすればいいかわからない」という声もあるので、私達がお手伝いできる開発サービスに名前をつけて、ホームページ上でプロセスをわかりやすく提示することで、一緒にDXを進められるようにしました。

編集部

わかりやすい提示があるから、先ほど例に挙げていただいた幼児教室様のような、一緒に伴走しながらサービスを開発していくお仕事につながるのですね。

富田さん

そうですね。DXの必要性は感じていても、私達のような開発会社に何を頼めばいいかわからない方が大勢いらっしゃると感じています。そういう方たちに喜んでいただければと考えています。

編集部

クライアント様のサポートを大事にする、ビルディットさんらしい視点ですね。

数字の変化ではなく、お客様の「声」から成果を読み取るのが教育分野のDX

株式会社ビルディットが2023年に開催した入社式の様子
▲株式会社ビルディットが2023年に開催した入社式の様子

編集部

ビルディットさんでは、仕事の「やりがい」についてどのように考えていらっしゃいますか?

富田さん

誤解を恐れずに言いますと、教育分野の案件を中心に扱う特性として、ビルディットではエンジニアにやりがいを感じてもらうのが少し難しいかもしれません。

例えばゲーム開発の場合は、目新しいアイテムだったり、射幸心を煽るキャンペーンだったり、パラメータの調整ひとつで翌日にすごく数字が変わりますよね。ダイレクトな数字の変化に一喜一憂しながら開発スピードを味わえると思うんですけど、教育分野の案件の場合、相手は一歩一歩積み重ねて試行錯誤している人間です。人間は、ゲームの結果のように速く変わることはありません。

ある意味で手探りというか、「これは本当に、ユーザーの成長に役に立っているのかな」ということを中長期的に見ながらサービスを提供していくので、成果・やりがいを感じにくいかもしれません。

編集部

人間の内面的な成長は、数字で実績が見えるものではないですから、スローな目線も必要なんですね。

富田さん

だからこそ、私達はユーザーさんの声をすごく大事にしています。例えばTwitter(現X)でビルディットのアプリを検索して、「このアプリで今こういうことをやってるよ」とか、「このアプリがあってよかった」という声があると、すごく嬉しいです。

編集部

数字とは別に、感情が込もった生の声から、やりがいを感じるということですね。

学び手だけではなくて、「学び手を支える人」にエンパワーメントしたい

編集部

ビルディットさんは主に教育・育成事業のDX推進をしていらっしゃいますが、今後さらに重点を置きたいポイントはありますか?

富田さん

私が最近考えていることは、DXで支援するべきなのは、最終的な学び手だけではなくて、学び手を支える人だ、ということです。先生、コーチ、メンターといった方々にエンパワーメントする、力を与えられるような仕組みの重要度が高いと思っています。

編集部

教える側に対して、DXによるエンパワーメントが必要だという視点ですね。

富田さん

はい。学ぶ人を支える人を支えるというアプローチで、より多くの方に成長の機会と環境を作っていくことを重要視しています。

人間の成長は、やっぱり「積み重ね」が大事なんです。小学生が計算ドリルをやったり、漢字を何回も書いたりするのと同じだと考えています。人間が関わり続けないと、人間の成長は作れないので、教える側への支えが必要なんです。

編集部

教育分野のDXに携わってこられた、ビルディットさんならではの決意を感じます。

富田さん

そうですね。だから、先生方や教育に関わる方から喜びの声を聞けることが、私達の大きなやりがいです。

編集部

ビルディットさんのエンジニアは、数字を追うだけではなく、クライアント様の声を大事する働き方ができそうですね。

仕事や社会に対するビジョンを共有できる仲間と一緒に働きたい

株式会社ビルディットの社員3人が談笑している
▲ビルディットでは、メンバーが仕事や社会に対する理念を共有している(公式サイトより引用)

編集部

最後に、ビルディットさんに興味を持った方へメッセージをお願いいたします。

富田さん

ビルディットでは、一緒に働くメンバーと、仕事をする目的や作っていきたい社会に対するビジョンを共有することが重要だと思っています。

教育の分野では、成果はすぐには出ません。だからこそ、私達は自分の仕事でより良い社会を作りたいという想いを軸にして、「今日勉強していた技術Aよりも、技術Bの方がいいね」、「こういった理念を採用して前に進もう」という目的・目標を共有して前に進めるメンバーを求めています。

統計的に、日本では国の将来に対して希望を持っている人は2割程度しかいないそうです。約8割の人が日本の将来が暗い、見通しがないと思っているのですが、僕らはその2割のうちの1人でありたいんです。未来を生きる子ども達のためにも、若い世代が明るい見通しを持てるように、希望を与え続けていきたいんです。

「一人ひとりが前に進もうとしていれば、世の中は良くなっていくんだよ」と言い続ける。この目標に向かって一緒に前進できるメンバーと、ぜひ一緒に仕事をしていきたいと思います。

編集部

ビルディットさんは、ユーザーや世の中に対する温かいメッセージをお持ちですね。一般的に、DXというと効率やスピードに関連する言葉で語られがちですが、本来は人間のための技術であるということを再認識させていただきました。本日はありがとうございました。

■取材協力
株式会社ビルディット:https://bldt.jp/
採用ページ:https://bldt.jp/recruit