みなさんの「強み」はなんですか?勤勉さや誠実さを上げる方もいらっしゃるでしょう。新卒の就職面接なら、これらの回答で問題ありません。しかし、中途採用の面接においては不十分です。
「転職活動で伝えるべき強みって何?」
「自分の強みがわからない」
そんな方に向けて、転職活動で伝えるべき強みの内容や代表例をご紹介します。面接官に効果的にアピールするためのポイントも解説しますので、選考通過率アップに役立ててください。
強みの見つけ方ではなく、自己分析の仕方を知りたい方は、次の記事を参考にしてください。
面接官が確かめたい強みは「業務経験から得たノウハウと学び」
転職活動においてアピールすべき強みは、性格や人となりではありません。過去の業務経験から得たノウハウや学びです。面接官は、求職者のビジネスパーソンとしての実力を、これまでの経験の中から探っています。
- 自社の募集求人に対して活かせる業務スキルがあるか
- 過去の経験を学びに変えられるポテンシャルの高い人材か
- 業界や企業で求められる仕事の姿勢を身に着けているか
これらの観点から、求職者が自社で活躍できる人材かを判断しています。裏を返せば、面接官が確認したいポイントを押さえて強みをアピールするだけで、有力な人材として認識してもらうことが可能です。
具体的な強み探しの前に、まずは面接官が「強み」を確認する意図を解説します。
自社の募集求人に対して活かせる業務スキルがあるか
面接官は、求職者の過去の業務経験が自社の業務内容に活かせるものかを確認しています。即戦力採用であるほど、業務経験から得たスキルをアピールすることが大切です。
例えば、人事部の労務担当者の求人の場合、以下のようなスキルを確認しています。
- 勤怠管理や給与計算の経験があるか
- 社会保険の手続きや、社会保険労務士事務所と連携した業務経験があるか
- 従業員の入退社対応の経験があるか
- 自社と近しい規模の企業で実務経験があるか
- 自社と同じ勤怠管理ツールの使用経験があるか
企業や求人ごとに、求める経験内容やレベルは異なります。求人票の記載内容と自分の過去の業務経験を照らし合わせ、合致する点を見つけてください。即戦力としてアピールできる経験こそが、中途採用における最大の「強み」です。
過去の経験を学びに変えられるポテンシャルの高い人材か
日々の業務を淡々とこなすのではなく、業務経験から学びを得てステップアップできる人は、ポテンシャルの高い人材として評価されます。これまでの社会人生活の中で得た気づきや学びを、強みとしてアピールしてください。
例えば営業アシスタントとしてデータ入力を担当していた場合、以下のような気づきを強みとしてアピールできます。
- 毎月同じ時期に失注があることに気づいて上司に報告した
- 営業担当によって経費精算方法が異なることに気づいて改善を促した
- 後輩アシスタントの入力ミスが多いフォーマットの項目を見直し、ミスを減らした
単純作業と思われる業務であったとしても、作業の中から気づきを得て行動した経験は、十分に企業にアピールできるものです。自らの経験からどのような強みを得たか、言語化してみましょう。
業界や企業で求められる仕事の姿勢を身に着けているか
中途採用面接では、過去の経験を通じて身に着けた「仕事に臨む姿勢」も確認しています。
特に規模の大きな企業ほど、採用基準として「求める人材像」や「コンピテンシー(優れた人材としての行動特性)」を設定しています。具体的な採用基準は企業によって異なりますが、以下のような項目があります。
このように、企業が採用基準として確認しているのはスキルだけではありません。業務に対する姿勢も、重要な判断要素となり得ます。
過去の業務経験から、企業が求める人材像と合致する行動があれば、強みとして十分にアピール可能です。応募企業の求める人材像は、求人票に記載されていたり、企業サイトの「行動指針」や「コンピテンシー」として公表されていたりするので、必ず確認してください。
転職で活かせる強み一覧
企業が面接で強みを質問する意図を確認したところで、自分の強みを考えてみましょう。
ビジネススキルを構成する「専門スキル」「ポータブルスキル」「マインド」の3要素から、自分に当てはまるものを探していくと効果的です。これまでの業務経験と照らし合わせながら、自分の強みを見つけていきましょう。
専門スキル
専門スキルは、特定の職種や業界で活躍するために必要なスキルです。ハードスキルやテクニカルスキルともいわれています。
士業などの高い専門性を求められる職種はもちろんのこと、業界固有の事情に精通していることなども、専門スキルとして評価されます。
専門スキルの具体例は、以下の通りです。
◆業種別スキル例
業種 | 専門スキル例 |
---|---|
建築業 | ・建築基準法や都市計画法などの法律知識 ・意匠設計 ・構造設計 ・工事監理 など |
不動産業 | ・宅地建物取引業法や借地借家法などの法律知識 ・不動産開発に関する知識 ・投資に関する知識 ・住宅取引に関する知識 |
金融・保険業 | ・保険業法などの法律知識 ・株式や投資信託などの知識 ・保険商品の企画・開発 ・企業の財務分析スキル |
◆職種別スキル例
職種 | 専門スキル例 |
---|---|
webデザイナー | ・デザインスキル ・ソフトウェアスキル ・コーディングやプログラミングスキル ・webマーケティングの知識 |
フロントエンドエンジニア | ・コーディングスキル ・UI/UX設計 ・CMS構築 ・SEOに関する知識 |
人事 | ・労働基準法などの法律知識 ・人事戦略の知識 ・産業保健の知識 ・キャリアデザインの知識 |
専門スキルを強みとしてアピールすれば、対象業務に関する即戦力として認識されます。これまでの業務経験で培ったスキルと、スキルを発揮した具体的なエピソードをまとめてください。
ポータブルスキル
ポータブルスキルとは、業界や業種に関係なく活かせる、普遍的なスキルのことです。個人営業で培った共感力や交渉力、商品企画で身に着けた計画力や試行力などが、ポータブルスキルにあたります。
ポータブルスキルは、さらに「対人」「対自分」「対課題」のスキルに細分化されます。
具体的には以下の通りです。
区分 | 詳細 |
---|---|
対人スキル | ・チームワーク ・共感力 ・交渉力 |
対自分スキル | ・決断力 ・忍耐力 ・持続力 |
対課題スキル | ・分析力 ・計画力 ・試行力 |
例えば、「共感性」「持続力」「分析力」の高さを強みとしてアピールする場合を考えてみましょう。応募職種ごとに、以下のような訴求ができます。
- 営業職:お客様の立場で親身に話をうかがって課題を分析し、適切なサービスを粘り強くご提案できる
- 採用担当者:募集職種の特徴や、業界動向、過去の採用手法と採用決定率等を分析し、最適な採用手法を選別できる。またぜひ入社してほしい人材に対し、粘り強いアプローチができる
- 製品開発職:莫大な顧客データを粘り強く分析し、お客様の真のニーズに応える製品企画ができる
このようにポータブルスキルを強みとしてアピールすることで、どのような職場やポジションでも活躍できる、キャッチアップの早い人材だと認知してもらえます。就業経験の短い方、高い専門スキルを要求されない求人に応募される方は、ポータブルスキルを強みとしてあげると効果的です。
スキルアップの仕方については、こちらの記事を参考にしてください。
マインド
マインドとは、業務に臨むにあたっての心持ちです。生まれ持った性格ではありません。業務経験の中で培った、価値観や姿勢を意味します。
転職活動でアピールできるマインドの例は、以下の通りです。
- 他責ではなく自責
- 費用対効果や労働生産性への意識
- オープンマインド
マインドを強みとしてアピールするメリットは、ビジネスパーソンとしての基礎力や、環境ごとに必要な業務姿勢をすでに身に着けていると思ってもらえることです。
ただし即戦力採用が多い中途採用において、マインドのアピールは企業に対する強い訴求になりにくい場合がほとんどです。マインドを強みとして強調するのではなく、面接時の対応の中で、自分のマインドを感じ取ってもらえる言動に注力する方が効果的でしょう。
転職活動でアピールできる強みの見つけ方
企業は、強みとして求職者の専門スキル・ポータブルスキル・マインドを見ています。これまでの業務経験から自分にどんな強みが備わっているのか、探っていく必要があります。
ここからは、自分の強みを見つけるための具体的な方法を4つご紹介します。
過去の成功体験・失敗体験を振り返る
中途採用でアピールすべき強みは、過去の業務経験の中から発見できます。過去に自分が取り組んだ業務を書き出し、そこで得たスキルやノウハウ、学びを抽出しましょう。
業務経験を振り返る際には、以下のポイントを押さえてください。
- 業務内容や規模
- チーム構成と自分の役割
- 業務での成果
- 成果において自分が果たした役割
- 成果を上げられたポイント
成功体験だけでなく、失敗体験も同じように振り返りましょう。失敗からの学びは、成長の大きな原動力として評価される可能性があります。失敗を経て何を学んだか、どのように行動が変わったかを整理してください。
同僚や先輩にヒアリングする
これまで仕事を共にした人から、客観的に自分の強みを聞いてみましょう。自分では気づかなかった強みを見つけることができます。
同僚等に相談する場合、業務経験の中で実感した専門スキルやポータブルスキルの高さに焦点を当てて強みを確認してください。いつ、どのような業務で、どんな強みを感じたのか、できるだけ詳細にヒアリングしましょう。
ただし、現職中の方は同僚に相談することで退職意向が社内に広まる危険性があるため、相談相手とタイミングに注意してください。
転職エージェントに相談する
客観的に自分の強みを知りたい場合、転職エージェントの活用がおすすめです。転職支援のプロの立場から、これまでのキャリアの棚卸しをサポートしてくれます。また、現在の転職市場において強みとなる点、応募求人で特に重視されているスキルなども確認できます。
初めて転職活動をする方なら、以下の転職エージェントがおすすめです。
転職エージェント | おすすめの方 |
---|---|
リクルートエージェント(評判・口コミ) | ・紹介求人数の多いアドバイザーに相談したい方 |
マイナビエージェント(評判・口コミ) | ・20代の支援に強いアドバイザーに相談したい方 |
パソナキャリア(評判・口コミ) | ・ハイクラス転職を実現させたい方 |
転職エージェントの利用は、原則無料です。自分の強みが見つかるだけでなく、強みに合った求人の紹介や選考通過率アップの支援も受けられます。転職経験の少ない方は、ぜひ転職エージェントを活用してください。
自己分析ツールを活用する
大手人材サービス会社などが提供している診断ツールを活用して、簡易的に自分の強みを見つけることも可能です。具体的には、以下のツールがあります。
ただし、過去の業務経験から強みを見つけるのではなく、志向を分析するためのツールであるため、参考程度に活用してください。業務経験から強みを見つけるには、パソナの「自己分析シート キャリアの棚卸し」がおすすめです。
面接で強みを効果的に伝えるポイントとNG例
転職活動における強みが整理できたら、面接で効果的に伝える練習をしましょう。せっかく良い強みを持っていても、企業に伝わらなければ内定につながりません。
面接時によくある失敗例と、うまく強みをアピールするためのポイントを解説します。
ポイント1|求人内容に直結する強みを選ぶ
どれほど高い専門スキルや実績を保有していても、応募企業の業務に活かせる強みがなければ、その会社では採用されません。複数の強みを用意したうえで、応募企業に合った強みをアピールすることが大切です。
- ヘルプデスク求人で、財務・経理の豊富な業務経験をアピールする
- マネジメント職の求人で、個人での高い売上実績をアピールする
- 調整業務がメインのプロジェクトマネジメント職の求人で、個人のデザイン性や発想の豊かさをアピールする
当たり前のことに見えますが、一度に多数の企業の選考を受ける人ほど、すべての企業で同じ強みを伝えてしまう失敗事例が多く見受けられます。
応募企業ごとに、アピールする強みを変えてください。
ポイント2|「結論・経験談・生かし方」の順で話す
せっかくの強みも、面接官に伝わるように話さなければ意味がありません。的確に自分の強みを伝えるには、「結論・経験談・生かし方」の順で説明すると効果的です。
このように自分の具体的な強みと企業への貢献をセットで語れば、活躍できる人材として評価されるでしょう。
ポイント3|「強みの裏にある弱み」対策を考えておく
採用面接で強みを質問された後、裏側にある弱みを同時に指摘される場合があります。事前に対策を講じましょう。
具体的には、以下のような質問が想定されます。
下記が上記の質問に対する【NG返答例】と【良い返答例】です。
そうですね。確かにチームワークは大切ですが、最終的には個人の力が業績に直結すると考えています。まずは実績を上げることに注力してまいりました。
確かに個人成績で1位の表彰を受けましたが、この実績は私一人で達成したものではありません。サポートしてくれる営業アシスタント数名とタッグを組んで、売上につなげていました。例えば私が契約を獲得した後、スムーズに契約手続きに移れるよう、タイムリーに情報共有ができるチャットツールを活用していました。
面接官が強みの裏の弱みを指摘する場合、「自社で求める人材と異なるのではないか」という懸念があります。面接官の質問が意図するところを汲み取った返答が大切です。即興で返答するのは難しいため、強みが弱みと捉えられる要素を事前に洗い出しておきましょう。
ここまで準備すれば、面接で答える「強み」の質問対策は万全です。
面接で弱みを答える際のポイントとNG例
中途採用の面接時に質問される「弱み」の対策も、あわせて確認しましょう。うまく答えられれば、面接官にプラスの印象を与えられます。
避けるべきNG例とポイントを確認してください。
ポイント1|採用する上で致命的と思われる弱みを選ばない
社会人としてNGと捉えられるような、致命的な弱みを伝えることは避けましょう。複数ある弱みの中で、あえて決定的な弱点を伝える必要はありません。
具体的には、以下のような弱みは避けてください。
- 遅刻癖があって何度も時間に間に合わないことがあった
- 仕事が雑で、事務処理で何度も不備を指摘される
- 協調性がなく、同僚とのトラブルが多い
- 心配性 (慎重)
- 諦めが悪い (粘り強い)
- せっかち (スピード感がある)
ポイントは、「見方によっては強みと捉えられる弱点」を選ぶことです。
見方を変えても強みにならないような弱点は、あえて面接で伝えないようにしてください。
ポイント2|弱みを克服しようとしている姿勢を見せる
面接で弱みを問われたときは、克服に向けた行動とセットで語るのが鉄則です。弱みを自覚しながら、何も対策をしていないと思われないように工夫します。
- 不要にチェックを重ねて業務効率が落ちないよう、チェックのタイミングと項目を決めた。
- 見込みの薄い顧客にプッシュし続ける傾向があったため、2度の訪問で勝機が見えない場合は必ず上司に相談するようにした。
- 気になることはすぐに行動したいタイプなので、慎重派の同僚とペアを組み、お互いの強みでカバーできるようにした。
対策をきちんと示せば、弱みを強みと捉えてもらえるでしょう。
その他、面接時における質問への答え方については、こちらの記事も参考にしてみてください。
転職面接の強み・弱みに関するよくある疑問
最後に、転職面接の強み・弱みに関するよくある疑問にお答えします。
疑問1|転職回数が多いです。強みとしてアピールする方法は?
日本でも転職をポジティブに捉える傾向が強まっているため、転職回数が多いことが必ずしもマイナスに捉えられるとは限りません。むしろ、「複数の企業で多様な経験を得ている」「多数の企業から求められる人材」など、プラスに評価される場合もあります。
転職回数の多さを強みとしてアピールする際は、「経験の豊富さ」「視野の広さ」「適応力」などの観点からアピールすると効果的です。
疑問2|強みと長所の違いは?
転職活動において、強みと長所は以下のように区分されます。
強み | 業務経験から得られたスキルやノウハウ |
---|---|
長所 | 優れた人柄や性格 |
特に中途採用においては、「長所」ではなくビジネスにおける「強み」を期待して質問されることがほとんどです。質問の前後の文脈から、面接官の意図を汲んだ回答を心掛けてください。
企業に「採用したい」と思われるように強みをアピールしよう
中途採用では、業務経験から得たスキルや学び、業務に向かう姿勢を強みとして語ることが大切です。複数の強みを整理したうえで、企業が募集している求人内容に活かせる強みを選んで回答してください。
強みを伝えた結果、応募企業にとって自分を有益な人材だと思ってもらうことが重要です。事前に想定問答をし、堂々と答えられるよう準備して臨みましょう。