国家資格キャリアコンサルタントの資格を持つ池田です。
この記事では、ヘッドハンティングとは何か、について解説しています。このページを訪れた理由によって、解説する内容は変わってきますので、まずは以下のどれに該当するかを選んでください。
そもそもヘッドハンティングとは?
ヘッドハンティングとは、他社で活躍している優秀な人材にアプローチをかけて、自社に引き入れる採用手法のことです。ヘッドハンティング会社に勤めるヘッドハンターが、採用したい企業の代わりに、個人の電話、会社の電話、メール、SNS、手紙など様々な方法で求職潜在層に接触を仕掛けます。
一昔前までは、ヘッドハンティングは一部の大企業や外資系企業でしか行われておらず、ほとんどのビジネスパーソンにとっては無縁なものでした。
しかし、近年は終身雇用制度の崩壊や人材不足の深刻化により、以前のように求人情報を発信して人材を募集するだけでは、企業側も優秀な人材を確保することが難しくなりつつあります。そのため、最近は大企業や外資系企業だけでなく、中小企業やベンチャー企業においても、ヘッドハンティングが積極的に行われるようになってきました。
また、ビジネスパーソンの間においても、ヘッドハンティングはキャリアアップを実現させる方法の1つとして、徐々に浸透しつつあります。
引き抜きと違って仲介業者が有る
ヘッドハンティングに似たものとして、引き抜きという言葉が存在します。
引き抜きとは他社の人材を自社に引き入れる採用手法を指し、ヘッドハンティングとほぼ同義ですが、両者の最大の違いは仲介の有無です。つまり、ヘッドハンティングは仲介業者(ヘッドハンティング会社や転職エージェントなど)を通じて人材を探すのに対し、引き抜きは仲介業者を使わずに企業が人材に直接アプローチをかけていきます。
また、ヘッドハンティングは経営に携わるような上位役職者(いわゆるエグゼクティブ)をターゲットにしているのに対し、引き抜きは役職の有無を問わず優秀な人材全般をターゲットにしており、この点も両者の違いです。
◆ヘッドハンティングと引き抜きの違い
仲介の有無 | ターゲット層 | |
---|---|---|
ヘッドハンティング | 有 | 上位役職者(エグゼクティブ) |
引き抜き | 無 | 人材全般(役職は問わない) |
ヘッドハンティングの種類
一口にヘッドハンティングと言っても、実は2つの種類が存在します。
具体的には、以下の通りです。
- サーチ型ヘッドハンティング(独自ネットワーク)
- マッチング型ヘッドハンティング(転職サービス経由)
サーチ型ヘッドハンティング(独自ネットワーク)
サーチ型ヘッドハンティングとは、ヘッドハンターが独自のネットワークを通じて広く人材を探し出す方法を指します。スカウトのターゲットは転職希望者に限定せず、条件に合う人材が見つかれば積極的にアプローチをかけてくる点が大きな特徴です。
スカウトの方法としては、電話やメール、SNS経由で接触を図ってくるケースが主流ですが、場合によっては、本人の現在の勤務先に直接電話がかかってくるケースもあります。
マッチング型ヘッドハンティング(転職サービス経由)
マッチング型ヘッドハンティングとは、転職サイトや転職エージェントといった、転職サービスの登録者の中から人材を探し出す方法を指します。転職サイトや転職エージェントを利用する際は、職務経歴などの情報も登録することになるため、その情報を基にヘッドハンターが条件に合う人材を探し、アプローチをかけてきます。
スカウトの方法としては、転職サービス内のスカウトメールという形で連絡がくることが一般的で、本人に直接電話がかかってくることは基本的にありません。
おすすめのスカウト型転職サービスをまとめたので、参考にしてください。
ヘッドハンティング会社からアプローチがあったときの対処法
ここからは、電話、メール、手紙などでヘッドハンティング会社から自分にアプローチがあった方向けに解説をしていきます。
ヘッドハンティングされた事実は、嬉しいことでありますが、話を受けていいのかどうか、怪しくないか、戸惑っている方も多いでしょう。もしくは、すでにWeb面談の約束をしてしまったが、本当に会って良いのか不安になってきたという方もいるでしょう。
面談を受けるリスク、面談前のチェックリスト、ヘッドハンティングを受けた方の体験談を紹介します。
ヘッドハンティングの面談を受ける際の注意点
ヘッドハンティングを受けて転職に成功した場合、大幅な年収アップや、キャリアアップにつながることも多々あります。
一方で、現段階ではまず注意点やリスクを認識することが大切です。
ヘッドハンティングの面談を受ける注意点・リスクは2つあります。
ヘッドハンターの目的が人材の採用ではないケース
ヘッドハンターは、企業から報酬をもらい、優秀な人材を見つけて採用につなげるのが仕事です。
しかし、まれではありますが、ヘッドハンターを名乗り、高額なセミナーや教材を売りつけてくる業者が存在します。
このような場合、時間の無駄であることは当然のことながら、お金を騙し取られる危険性があるため、注意が必要です。
釣り案件を紹介され、個人情報だけ取られるケース
電話口では、魅力的な求人内容を伝えてきたのに、面談になってみると「その話はもうなくなってしまった」「別の案件を紹介したい」と話が変わってしまうことがあります。
別の案件が魅力的であれば問題ないのですが、そうではない場合もあります。職歴や個人情報についていろいろ聞かれた上で、単にヘッドハンティング会社のリストに追加されるだけ、ということになります。
ヘッドハンティングのリスクを回避するために必要なチェックリスト
リスクを回避するため、事前に以下のチェックリストをすべて埋められなければ、面談はキャンセルしましょう。
□ | ヘッドハンティング会社の社名を聞いたか |
---|---|
□ | 自分にヘッドハンティングしてきた理由を聞いて納得したか |
□ | 社名をネット検索し、実在する会社であることを確認したか |
□ | 社名をネット検索し、厚生労働省の許認可を受けていることを確認したか |
□ | ネット上でヘッドハンティング会社の口コミを確認したか |
この5つをチェックして、大丈夫だと思えたら面談に進みましょう。
ちなみに、5つ目の「口コミを確認したか」についてですが、ネット上の口コミは、悪いものが多くて当然です(良い場合にわざわざ口コミを書こうとは思わないため)。
「詐欺にあった」「釣り案件で騙された」などの記載があるかどうかのチェックはした方がいいですが、主観で書かれている口コミについては、そこまで鵜呑みにする必要もありません。
ちなみに、今すぐの転職は100%無いという方であっても、話を聞いてみる価値はあります。自分の市場価値を把握するためのいい機会になるでしょう。
面談時には、自分の希望条件についてしっかりと伝えた上で、給与額や働き方などの条件面を細かく確認しましょう。
ヘッドハンティング会社から電話をもらったYさんの体験談
実際に面談に行ってからどのような流れになるのか、Yさんの体験談を読んでみましょう。
当時私は、ベンチャー企業の人事としてIPOに携わってきました。IPOが無事完了して3か月後くらいに、会社に電話がかかってきました。
「外資系企業への転職に興味はありませんか?」
当時、転職を考えていたわけではなかった私ですが、外資系で働いてみたいという思いはありました。
電話口で会社名も聞いたのですが、個人でやっているような会社で、ネット上にもほぼ情報はありませんでした。少し不安もありましたが、いい人生経験になると思って話を聞いてみることにしました。
昼休みに神谷町のカフェで待ち合わせをして、40〜50分くらい話していたかと思います。
外資系企業の転職先として3社紹介してもらい、条件面や待遇面についても説明をしてもらえました。
私に興味を持ってもらえたのは、IPO経験者であるということだということもわかりました。当時、採用担当者としてWeb上に私の名前もよく出ていたので、それを頼りに電話をしてきたということでした。
実際に話をしてみて、外資系企業への興味が強くなった私は、実際に選考を受けることにしました。そのうちの大手通信事業会社に転職することになり、年収は100万円くらいあがりました。
会社名も有名ではなく、最初は怪しさもあったんですが、良い話かどうかは会ってみないとわからないというのが私の考えでした。ヘッドハンティングの勧誘があった人は、とりあえずだまされたと思って話を聞いてみるといいと思います。
この方以外にも何人かの体験談を聞いた上で、筆者の意見としては、「チェックリストをすべてチェックしたのなら、とりあえずでいいので会ってみた方がよい」です。
仮に、自分にとって良い話がもらえる確率が10%しかなかったとしましょう。90%は、時間の無駄になるわけですが、時間といってもせいぜい長くて60分程度です。詐欺に気をつけさえすれば、金銭的に損があるわけではありません。10%にあたったときのメリットの大きさを考えれば、90%にあたったときのデメリットばかり気にしていてはもったいないです。
ヘッドハンティングされるようになりたい人がすべきこと
では、実際にヘッドハンティングを受けるためには、具体的にどのような行動や意識が必要となるのでしょうか。
そこで本章では、ヘッドハンティングを受けるためのポイントをご紹介します。具体的には、以下の4つです。
- 市場価値の高い人材を目指す
- 積極的に情報発信をする
- 人脈を広げる
- 登録型サービスを活用する
市場価値の高い人材を目指す
どこにでもいるような人材に対して、企業側もわざわざオファーを出すことはしないでしょう。よって、ヘッドハンティングを受けるためには、市場価値の高い人材を目指すことが必要です。特に、希少価値の高いスキルや経歴を持っていれば、ヘッドハンティングのスカウトも受けやすくなるでしょう。
例えば、「AI(人工知能)の開発スキルや経験がある人」や「M&A(企業合併・事業買収)のスキルや経験がある人」は、希少人材として重宝される傾向があります。また、「マーケティング戦略に精通した営業責任者」や「英語に堪能な財務責任者」といったように、複数のスキルを組み合わせることで市場価値の高い人材を目指すのも1つの方法です。
キャリアアップの方法については次の記事を参考にしてください。
積極的に実績やスキルを情報発信をする
どんなに優れた実績やスキルを有していたとしても、世間に認知されていなければヘッドハンターや企業にまで情報が届く可能性は低いでしょう。よって、ヘッドハンティングを受けるためには、積極的に情報発信をすることも必要となります。
情報発信の方法としては、例えばSNSで実績等を公表したり、セミナーや講演会の講師を務めたりすることなどが挙げられます。ふだんから積極的に情報発信をしていれば、企業やヘッドハンティングの目に留まる可能性も高まるでしょう。
交流会などを通じて人脈を広げる
ヘッドハンティングを受けるためには、積極的な情報発信だけでなく人脈を広げることも意識しましょう。
人脈を広げる方法としては、異業種交流会といった社外イベントやプロボノ(職業上のスキルや知識を無償で提供するボランティア活動全般)への参加などが挙げられます。
実際、ヘッドハンターは様々なネットワークを駆使しているため、人脈を広げておけば、思わぬところからチャンスが巡ってくるかもしれません。
登録型転職サービスを活用してスカウトを待つ
ヘッドハンティングを受けるためには、やはり登録型の転職サービスを活用するのが最も有効と言えます。なぜなら、登録型サービスに登録することによって、ヘッドハンターの耳目に触れる機会が圧倒的に増えるからです。
最近は「ビズリーチ」や「リクルートダイレクトスカウト」をはじめとした、実績のある企業の登録型サービスも増えているため、本気でヘッドハンティングを受けたいのであれば、積極的に活用することをおすすめします。
また、登録型サービスであれば、スカウトを受けるタイミング(サービスの登録直後や登録情報の更新後など)もある程度予測しやすいため、突然の連絡に戸惑うことも少ないでしょう。
特徴 | |
---|---|
ビズリーチ | 転職して年収600万円以上を目指したい人向け |
リクルートダイレクトスカウト | 年収1000万円以上の求人多数 |
doda | dodaの転職エージェントサービスとの併用が可能 |
ミイダス | 可能性診断で自分の強みを診断してくれる |
ヘッドハンティングに関するQ&A
ヘッドハンティングに関してよくある質問に答えていきます。
Q. 面談前に転職先の企業名を教えてくれなかったけど怪しい?
教えてくれないのが一般的です。ヘッドハンティングの対象となる重要なポジションの採用は、競合他社に知られたくないケースも多々あるので、面談が行われて始めて企業名を知ることができます。
Q. ヘッドハンターとの面談は何を話すの?
まず、ヘッドハンターからの情報提供があります。転職先の企業名、ポジション、年収などです。
一方で、自分の職歴についても詳しく聞かれます。このとき、ヘッドハンターは「この人を本当に企業に紹介して大丈夫か」の見極めを行っています。どれだけ良い案件であっても、自分自身のアピールが不十分だと、結果的に紹介してもらえないこともあります。
Q. ヘッドハンターとの面談後の流れは?
一般的な転職活動と同じく、企業との面接が行われます。ただ、畏まった面接というよりは、「面談」という名称でお互いのことをざっくばらんに話すケースが多いです。
場合によっては、ヘッドハンターが自分を売り込むために同席する場合もあります。