新しい仕事に挑戦したい、給与を上げたい、といった理由でキャリアチェンジを検討している人は多いかと思います。とはいえ、今の仕事を手放して新たな業界や職種に挑戦することにはリスクも伴うため、しっかりとした準備と対策が必要となります。
そこで今回は、キャリアチェンジに焦点を当てて、その概要や適したタイミング、メリット・デメリットなどを解説していきます。併せて、キャリアチェンジで失敗しないためのポイントについてもご紹介します。
キャリアチェンジとは未経験の業界や職種に転職すること
キャリアチェンジとは、現職の業界や職種から離れ、未経験の業界や職種に転職することです。例えば、「自動車業界の営業職から、ソフトウェア業界のシステムエンジニアに転職する」ケースなどが該当します。
キャリアチェンジは未経験の業界や職種に転職することになるため、これまでのスキルや経験を活かすことが難しく、一般的には通常の転職よりもリスクが大きいと言われています。
キャリアチェンジの種類
キャリアチェンジはその性質上、主に以下の3つに分類されます。
- 業界だけを変えるキャリアチェンジ
- 職種だけを変えるキャリアチェンジ
- 業界と職種の両方を変えるキャリアチェンジ
一般的には、「業界だけを変えるキャリアチェンジ」→「職種だけを変えるキャリアチェンジ」→「業界と職種の両方を変えるキャリアチェンジ」の順にこれまでのスキルや経験を活かしづらくなるため、転職の難易度も高くなる傾向があります。
ただしその分、キャリアチェンジで得られるメリットも大きいため、メリットとリスクを天秤に掛けて判断する必要があります。
◆キャリアチェンジの種類
業界だけ | 職種だけ | 業界と職種の両方 | |
---|---|---|---|
具体例 | 食品業界の営業職 ↓ 出版業界の営業職 |
食品業界の営業職 ↓ 食品業界の経理職 |
食品業界の営業職 ↓ 出版業界の経理職 |
スキル | ◯(活かしやすい) | ×(活かしづらい) | ×(活かしづらい) |
経験・人脈 | ×(活かしづらい) | ◯(活かしやすい) | ×(活かしづらい) |
年収 | ー(業界の基準による) | ×(下がりやすい) | ×(下がりやすい) |
自己成長 | ◯(できる) | ◯(できる) | ◯(できる) |
可能性・視野 | ◯(広がる) | ◯(広がる) | ◎(とても広がる) |
キャリアチェンジの種類によって、その後の戦略も大きく変わってきます。そのため、自分がどのキャリアチェンジを目指しているのか、事前にしっかりと整理しておきましょう。
キャリアチェンジとキャリアアップの違い
キャリアチェンジに似たものとして、キャリアアップという言葉がありますが、キャリアアップは自分自身の能力を高めることによって経歴や地位を向上させることを意味します。
キャリアチェンジは業界や職種を変えることを前提としているのに対し、キャリアアップは基本的に業界や職種を変えないことを前提としており、この点が両者の大きな違いです。
また、キャリアチェンジは転職することが前提となっていますが、キャリアアップは必ずしも転職を前提とはしておらず、現職での昇進・昇格も選択肢として含まれています。
◆キャリアチェンジとキャリアアップの比較
キャリアチェンジ | キャリアアップ | |
---|---|---|
業界や職種 | 変える | 基本的に変えない |
方法 | 転職を前提としている | 転職だけでなく現職での昇進・昇格も含む |
キャリアアップについて詳しく知りたい方は、こちらの記事を読んでください。
キャリアチェンジとジョブチェンジの違い
また、キャリアチェンジと混同しやすいものとして、ジョブチェンジという言葉も存在します。
キャリアチェンジとジョブチェンジは基本的に同義ですが、ジョブチェンジは職種のみを変える転職を指すことが一般的です。よって、キャリアチェンジは職種だけでなく業種のチェンジも含まれているぶん、ジョブチェンジよりも広い範囲を示していると言えます。
ただし、両者を厳密に使い分ける必要性は低く、「キャリアチェンジ=ジョブチェンジ」と捉えても特に差し支えはないでしょう。
【年代別】キャリアチェンジに適したタイミング
基本的にキャリアチェンジに年齢制限はないため、その気になれば何歳からでもキャリアチェンジを目指すことが可能です。とはいえ、キャリアチェンジにはリスクを伴うため、タイミングについても意識を向けた方がいいでしょう
そこで本章では、キャリアチェンジに適したタイミングについて年代別に解説します。
【20代】社会人基礎力が身についた20代後半がベスト
20代の人がキャリアチェンジをするのであれば、20代後半がベストです。
20代であれば年齢的にもポテンシャル採用(現時点での能力ではなく、潜在的な能力に着目する採用)がされやすく、基本的にどのタイミングでもキャリアチェンジが可能ですが、社会人基礎力が身についた20代後半が最も適していると言えます。
逆に、20代前半は社会人としての経験がまだ浅いため、焦ってキャリアチェンジをする必要はありません。いくら年齢が若いとはいえ、転職を繰り返していると経歴にも傷がついてしまうため、特別な事情がなければ、20代前半の時期は現職で社会人基礎力の習得に専念した方がいいでしょう。
20代の未経験転職については、こちらを参考にしてください。
【30代】若年層に分類される30代前半がベスト
30代の人がキャリアチェンジをするのであれば、30代前半がベストです。
30代のキャリアチェンジは20代の頃に比べてハードルが高くなるものの、30代前半であればまだ若年層に分類されるため、十分にチャンスはあると言えます。
ただし30代になると、20代の頃のように熱意だけではなかなか採用されないため、これまでの経験やスキルをうまくアピールに繋げる必要があります。例えば、営業職であればコミュニケーション能力や商談を成立させた経験、事務職であればPCスキルや期日を守ってきた経験などをアピールすれば、企業によっては高く評価されることもあるでしょう。
一方、30代後半は若年層から中年層の扱いになるため、さらにハードルが高くなります。キャリアチェンジを果たすためには、より戦略性を持って転職活動を進める必要があります。
30代の未経験転職については、こちらを参考にしてください。
【40代】なるべく早い決断が必要
40代の人がキャリアチェンジをするのであれば、なるべく早い決断が必要です。
40代になると30代の頃よりもさらに難易度が上がり、年齢を重ねるにつれ選択肢もどんどん限られていってしまうため、キャリアチェンジを決断したのであれば、なるべく早めに行動しましょう。
ただし40代であっても、職種を変えずに業界だけを変えるキャリアチェンジであれば、これまでのマネジメント経験などが評価されることもあり、チャンスがあると言えます。
とはいえ、40代のキャリアチェンジはどうしても苦戦を強いられてしまうため、転職以外の選択も視野に入れることをおすすめします。例えば、部署異動の相談をしてみたり、社内公募(新規事業の立ち上げや欠員補充などを目的として、社内からの自発的応募により人材を募る制度)に応募したりすれば、転職をせずとも希望のキャリアを実現できる可能性があります。
40代の未経験転職については、こちらを参考にしてください。
キャリアチェンジのメリット
では、キャリアチェンジをすることによって、実際にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
そこで本章では、キャリアチェンジのメリットについて解説します。
具体的には、以下の3つが挙げられます。
- 希望の業界や職種で働ける
- 自己成長に繋がる
- 可能性や視野が広がる
希望の業界や職種で働ける
キャリアチェンジの最大のメリットは、やはり「希望の業界や職種で働ける」点です。
新卒時に行きたい業界があったものの、諸事情により断念せざるを得なかった場合や、仕事をしていく中で新たな職種に興味が湧いてきた場合には、キャリアチェンジによってそれらの希望を叶えることが可能です。
希望する業界や職種へ就くことで、仕事を通じてやりがいを感じたり充実感を得たりする機会も増え、モチベーションアップにも繋がっていくでしょう。
自己成長に繋がる
キャリアチェンジの2つ目のメリットは、「自己成長に繋がる」点です。
未経験の業界や職種にチャレンジすることには困難を伴いますが、そのぶん新たなスキルが身につき、自分自身の市場価値を高めることができます。
また、現状に甘んじることなく、あえて新しい環境に身を置くことによって、スキルだけでなく人間的にも大きく成長できる可能性があります。困難を乗り越えて希望を叶えたという成功体験は、自信にも繋がっていくでしょう。
可能性や視野が広がる
キャリアチェンジの3つ目のメリットは、「可能性や視野が広がる」点です。
キャリアチェンジは未知の世界や領域に踏み込むことになるため、場合によっては、自分の中で今まで眠っていた能力が開花し、新たな可能性を発見できることがあります。
また、職場環境が変わることによって新たな人脈が生まれ、自分自身の視野が広がることにも期待できます。
実際、キャリアチェンジを経て世界が広がったと感じる人も多く、人生全般に好影響を及ぼすことも珍しくはないようです。
キャリアチェンジのデメリットやリスクも把握しておこう
続いて、キャリアチェンジのデメリットについて解説します。
具体的には、以下の3つが挙げられます。
- 年収や階級が下がる可能性がある
- 今までのスキルや経験を活かしづらい
- 新たな環境に慣れるまでの負荷が大きい
年収や階級が下がる可能性がある
キャリアチェンジの1つ目のデメリットは、「年収や階級が下がる可能性がある」点です。
未経験の業界や職種に転職するとなると、どうしても即戦力として活躍することは難しいため、一般的な転職に比べて、年収が下がるケースが多くなります。
同様の理由で、階級についても前職よりも下げる可能性が高くなります。特に前職で役職に就いていた人は、転職後は一般社員から再スタートしなければならないケースもあるため、注意が必要です。
今までのスキルや経験を活かしづらい
キャリアチェンジの2つ目のデメリットは、「今までのスキルや経験を活かしづらい」点です。
未経験の業界や職種に転職する場合には、今までのスキルや経験を活かすのはどうしても難しくなります。前職ではバリバリと仕事をこなしていたものの、転職後は全く活躍することができず、そのギャップにショックを受けてしまう人も多いようです。
ただし、あくまで活かしづらいだけであり、今までのスキルや経験が一切役に立たないということではありません。例えば、営業職で培ったコミュニケーション能力などは、転職先で活かせる場面も少なくないでしょう。
新たな環境に慣れるまでの負荷が大きい
キャリアチェンジの3つ目のデメリットは、「新たな環境に慣れるまでの負荷が大きい」点です。
転職をすれば新たな環境に慣れる必要や、人間関係等を再び0から構築する必要があるため、肉体的や精神的な負荷が大きくなります。
加えて、未経験の業界や職種に転職するとなると、業務を1から覚える必要や周囲のレベルに追いつくための努力も必要となるため、一般的な転職よりもさらに負荷がかかります。場合によっては、年下の上司に就かなければならないケースもあるため、注意が必要です。
キャリアチェンジで失敗しないためのポイント
ここまで見てきた通り、キャリアチェンジは大きなリスクを伴うため、ポイントを押さえた上で進めていく必要があります。
そこで本章では、キャリアチェンジで失敗しないためのポイントをご紹介します。
具体的には、以下の4つです。
- キャリアチェンジの動機を明確にする
- スキルや経験の棚卸しを行う
- 事前に企業・業界の研究や市場分析を行う
- 選考対策を入念に講じる
キャリアチェンジの動機を明確にする
キャリアチェンジをするにあたって、まずはキャリアチェンジの動機を明確にしましょう。
キャリアチェンジには大きなリスクを伴うため、「そもそもキャリアチェンジをする必要があるのか?」という部分から検討する必要があります。
例えば、年収アップが主な動機である場合には、現職で昇進・昇格を目指したり新たに副業を始めたりするなど、キャリアアップ以外でも実現できる選択肢があるかもしれません。また、スキルアップが主な動機である場合には、部署異動や社内公募への応募を検討するなど、他の選択肢も候補として考えられます。
キャリアチェンジを目指すのであれば、「どうしてもやってみたい仕事がある」といった強い動機がないと、転職後に大きな後悔をする可能性もあるため、注意が必要です。
スキルや経験の棚卸しを行う
キャリアチェンジをするにあたっては、スキルや経験の棚卸しを行うことも必要となります。
というのも、事前にスキルや経験の棚卸しを行っておかないと、自分の強みとなるスキルや経験を見出すことが難しくなるからです。
未経験で採用されるためには、「入社後にどのような貢献ができるか?」というアピールがカギとなります。しかし、自分の強みを正しく把握できていなければ、面接官を納得させるようなアピールに繋げるのは困難です。
特に年齢が高くなるほど、熱意だけでは採用されづらくなるため、30歳以降にキャリアチェンジをする場合には、自分の強みはしっかりと整理しておく必要があるでしょう。
事前に企業・業界の研究や市場分析を行う
キャリアチェンジを成功させるためには、事前に企業研究や業界研究、市場分析を行うことも重要です。
企業や業界の研究が不十分であると、自分の思っていたイメージと入社後のギャップが大きくなり、後々の不満に繋がってしまいます。特にメディアや求人情報などは表面的な情報が多いため、注意が必要です。その企業や業界の実態について知るためには、セミナーに参加したり実際に働いている人の話を聞いたりして、なるべく自分の目や耳で確かておきましょう。
また、企業・業界の研究と併せて、業界や職種に関する転職市場の分析も必要です。業界や職種によってそれぞれ繁忙期は異なるため、それに合わせて転職市場も変動する(求人が増えたり減ったりする)のが一般的です。転職市場が活発な時期に合わせて準備をしておけば、転職活動も効率的に進められるでしょう。
選考対策を入念に講じる
キャリアチェンジを果たすためには、入念な選考対策も必須となります。
未経験の人間を採用することは企業側にとってもリスクであるため、選考基準はどうしても厳しくなりがちです。そのため、事前の選考対策が不十分であると、面接はおろか書類選考を通過するのも難しくなります。
前述の通り、未経験で採用されるためには、「入社後にどのような貢献ができるか?」というアピールが重要となります。同じ内容であっても伝え方によって面接官に与える印象は大きく変わるため、応募先企業に応じてアピール方法を変える柔軟さも求められるでしょう。
選考対策については、こちらの記事も参考にしてください。
なお、選考対策に不安がある人は、転職エージェントの活用も検討してみましょう。転職エージェントに登録すれば、応募書類の添削や面接練習といった選考対策を受けることが可能です。また、場合によっては、応募先企業に関する個別の対策情報(過去の面接の傾向や面接官に関する情報など)を入手できることもあるため、転職活動を進める際の心強いパートナーとなってくれるでしょう。
【まとめ】キャリアチェンジは「必要があるか?」など動機の部分から考えよう
ここまでキャリアチェンジについて、解説してきました。
未経験の業界や職種に転職するのは勇気のいることですが、キャリアチェンジを機に自分の中で今まで眠っていた能力が開花するなど、人生のターニングポイントにもなるかもしれません。ただし、キャリアチェンジにはリスクを伴うため、「そもそもキャリアチェンジをする必要があるのか?」という動機の部分から検討することが必要となります。
いずれにせよ、待っているだけでは現状を変えることはできません。まずは何かしらのアクションを起こしていきましょう。