損をせず円満に辞めるための退職日の決め方とは?パターン別に解説

転職をするにあたって、現職の退職日の決め方は非常に悩ましい点です。

今までお世話になった職場には、しっかりと引き継ぎを行って、なるべく円満退職を目指したいものです。また、できれば賞与や退職金をもらったり、有給休暇を消化したりしてから退職したいと考えている人も多いかと思います。

そこで今回は、退職日の決め方に焦点を当てて、退職日を決める際の判断ポイントや退職の意向を伝えるタイミング、円満退職のためにやっておくべきことについて解説していきます。

退職日の決め方|フローチャート

転職先の決め方フローチャート

退職日を決める際は、まずは「次の転職先が決まっているかどうか」が大きなポイントとなります。

次の転職先が決まっており、なおかつ入社日も決まっている場合には、退職日は『入社日の前日がベスト』です。決め方Aを読んでください。

一方、次の転職先が決まっていない、もしくは決まっていても入社日が確定していない場合には、『4つの観点「就業規則」「引き継ぎ」「賞与・退職金」「有給休暇」を加味した上で退職日を決定する』流れになります。決め方Bを読んでください。

決め方A:退職日は入社日の前日がベスト

次の転職先が決まっており、なおかつ入社日も決まっている場合には、退職日は転職先の「入社日の前日」に設定するのがおすすめです(例:転職先の入社日が4/1であれば、退職日は3/31に設定する)。

というのも、どの職場にも属さない空白期間が発生すると、社会保険から国民保険に切り替える手続きが必要になるからです。国民保険への切り替えは、市役所等に出向いて手続きをする必要があるため、それらを億劫に感じる人は空白期間ができないよう、退職日は入社日の前日に設定するのがベストと言えます。

現時点で入社日が確定していないのであれば、入社日の前日を退職日に設定できるよう、引き継ぎの準備等を進めていくことをおすすめします。

なお、現職の都合によって退職日がずれ込む可能性がある場合には、早めに転職先に相談して、入社日の擦り合わせをしておきましょう。

決め方B:退職日は4つの観点を加味して決めよう

次の転職先が決まっていない、もしくは決まっていても入社日が確定していない場合には、以下の4つの観点を加味した上で退職日を決定しましょう。

  • 就業規則
  • 引き継ぎ
  • 賞与・退職金
  • 有給休暇

就業規則に定められている「退職の申し出期間」を確認する

まずは、現職の就業規則で「退職の申し出期間」を確認する必要があります。

というのも、具体的な退職の申し出期間については、「退職の申し出は、退職日の○ヶ月前までにしなければならない」というように、各職場の就業規則において、具体的に定められていることが一般的だからです。

例えば、退職の申し出期間が「1ヶ月前」と就業規則で定められている場合には、基本的には1ヶ月先になるまでは転職ができないことになります。

退職の申し出期間は職場によって異なるため、必ず事前に就業規則で確認しておきましょう。

現職の引き継ぎ、職場の業務量から判断する

退職日を決定する際には、現職の引き継ぎの観点も重要です。

引き継ぎの期間があまりに短いと、やめた後の業務が滞る可能性があることに加え、周囲からの印象も悪くなるため、余裕を持って1ヶ月程度は確保しておくのが望ましいでしょう。ただし、引き継ぎに要する期間は、業務の内容や範囲などによって異なるため、状況に応じた判断が必要となります。

また、職場の繁忙期は全般的に業務量も多くなる傾向があるため、その時期に退職する場合には、なるべく早めに退職の意向を伝えましょう。

賞与(ボーナス)・退職金から判断する

賞与(ボーナス)や退職金をもらってから退職したいと考える人も多いかと思いますが、その場合には賞与や退職金をもらってから退職できるよう、逆算して退職日を決めることも可能です。

ただし、既に転職先が決まっている場合であれば、賞与や退職金のことばかり考えてあまりにも退職日が伸びてしまうと、転職先にも迷惑をかけてしまう恐れがあります。そのため、自分なりの妥協点を見つけた上で、退職日を決定する必要があるでしょう。

なお、賞与の査定前に退職の意向を伝えてしまうと、賞与の額を減らされる、もしくは賞与がもらえない可能性があるため、注意が必要です。退職日が先に伸びても問題ないケースであれば、賞与が支給されてから退職の意向を伝えるといいでしょう。

有給休暇の発生日や残日数から判断する

現職での有給休暇を使い切りたいのであれば、有給休暇の発生日や残日数から退職日を逆算するのも1つの選択肢です。

なお、有給休暇の発生する月まで在籍すれば、新たに発生した有給休暇も消化することが可能です。有給休暇は原則として、入社日から6ヶ月後に10日分もらえ、その後1年ごとに勤続年数に応じて付与されるため、発生時期も事前に確認しておきましょう。

■一般的な有給休暇の付与日数

勤続年数 0.5年 1.5年 2.5年 3.5年 4.5年 5.5年 6.5年以上
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

※上記はあくまで労働基準法の最低基準であるため、職場によって異なる可能性があります。

(これから転職活動を始める人)転職活動期間から判断する

これから転職活動を始める人であれば、転職活動期間から退職日を判断するのが適切です。

転職活動は、1ヶ月半〜3ヶ月くらいかかるのが一般的です。そのため、できるだけ空白期間が発生しないようにするためには、1ヶ月半〜3ヶ月後を退職日の目安として、ご自身の状況も加味した上で退職日を判断するといいでしょう。

退職日を決めたらいつまでに伝えるべきか?

いつまでに退職日を伝えるべきか?

次の転職先が決まった時や現職を辞めると決心した時は、いつまでに退職日を伝えるのが適切なのでしょうか?

そこで本章では、退職日を伝えるタイミングについて解説します。

(転職先が決まっている場合)転職先が決まったらすぐに

転職先が決まった(決まっている)場合には、すぐに退職希望日を伝えましょう。

というのも、退職の意向を伝えると引き止めをされる可能性があり、引き継ぎの期間も考慮すれば、早く伝えないと転職先の入社日までに退職できないリスクが高まるからです。

退職日を伝えるのが遅れれば遅れるほど、現職にも次の転職先にも迷惑をかけることになるため、転職先が決まったら速やかに退職の意向を伝えましょう。

2ヶ月前が目安

次の転職先が決まっていない場合であれば、退職日は2ヶ月前に伝えるのが1つの目安となります。

とはいえ、引き継ぎの期間なども考慮すれば、伝えるタイミングは早ければ早いほど望ましいと言えるでしょう。なぜなら、伝えるタイミングが早いほど現職にも迷惑がかからず、自分自身も余裕を持って引き継ぎを進めることが可能になるからです。

引き継ぎには1ヶ月程度かかることを念頭に置いて、そこから逆算して動いくことをおすすめします。

法律上は14日前に申し出れば問題ない

民法では、労働者(正社員)は2週間前までに申し出れば退職できると定められています。一方、有期雇用契約を結んでいる労働者(契約社員)は、止むを得ない場合を除いて、契約期間まで勤務が求められますが、契約から1年以上経過している場合には、契約の途中でも自由に退職できます。

よって、正社員の場合であれば、法律上は14日前に退職の申し出をすれば問題ないことになります。とはいえ、引き継ぎの期間なども考慮すれば、1〜3ヶ月前には退職を申し出るのが適切と言えるでしょう。

※なお、職場と労働者の間で合意があれば、いつでも退職可能です。

下記の記事では円満に退職するための伝え方を例文付きで解説していますので、参考にしてみてください。

円満に退職するためにやっておくべきこと

円満に退職するためにやっておくべきこと

退職する場合には、できるだけ円満退職を目指したいところですが、円満退職をするためには注意すべきポイントが存在します。

そこで本章では、円満に退職するためにやっておくべきことをご紹介します。

具体的には、以下の2つです。

  • 退職希望日から逆算してスケジュールを立てる
  • しっかり引き継ぎを行う

退職希望日から逆算してスケジュールを立てる

円満退職を目指すのであれば、退職希望日から逆算して余裕のあるスケジュールを立てることが必要です。

具体的には、自分自身だけでなく引き継ぎを受ける人の状況や、職場全体の状況(繁忙期ではないかなど)も加味して、スケジュールを立てていきましょう。退職を伝えてから退職日まで間もないケースは、トラブルも発生しやすいため、注意が必要です。

転職先が入社日を考慮してくれるケースであれば、あらかじめ引き継ぎ期間を長めに設定しておくのもいいでしょう。

しっかり引き継ぎを行う

円満退職のためには、しっかりと引き継ぎを行うことも必須となります。

引き継ぎができていないと、その職場で働く人たちも困ってしまうため、退職後に迷惑をかけないためにも引き継ぎはしっかりと行いましょう。

引き継ぎには口頭の説明だけでなく、作業の手順書を作ったり、業務をリスト化したりすることも必要です。また、取引先がある場合には取引先への挨拶も必要になるため、その時間もあらかじめスケジュールに組み込んでおきましょう。

退職日の決め方に関するQ&A

Q&A

本章では参考として、退職日の決め方に関してのよくあるQ&Aをご紹介します。

月末日の1日前に退職すると、社会保険料を払わずに済んでお得と聞いたけど本当?

月末日の1日前に退職した場合の保険料

社会保険料の支払いの発生の有無は、月末日に在籍していたかどうかで決まるため、確かに月末日の1日前に退職すれば、社会保険料は支払わずに済みます。

ただし、それはあくまで「現職での」社会保険料が発生しないだけです。退職日の翌日が転職先の入社日であれば、転職先で社会保険料の支払いが発生しますし、仮に無職になる場合であっても、国民保険料の支払い義務が発生することになります。

月末日の1日前に退職したからといって、保険料の支払いが免除になるわけではないため、無理して月末日の1日前を退職日に設定する必要はありません。

月の途中で国民保険に切り替えると、その月は二重で保険料を払わないといけない?

月の途で国民保険に切り替えた場合、二重払いになることはない

二重払いになることはありません。

というのも、社会保険料は月単位で発生し、月末日に職場に在籍していなければ、その月の職場での社会保険料は発生せず、国民保険料のみが発生することになるからです。

また、前月分の社会保険料を翌月控除する仕組みを取っている職場の場合には、退職月にも社会保険料が控除されますが、それはあくまで前月分であるため、退職月に社会保険料が二重で発生することはないのです。

社会保険と国民保険ってどちらが安いの?

国民保険料は所得などの様々な要因によって変わってくるため、一概にどちらが安いとは言い切れません。

退職後の国民保険料を知りたい場合には、お住いの市区町村に直接問い合わせをする必要があります。その金額を基に、どちらが安いのかを判断しましょう。

なお、現職の健康保険を継続させたい場合には、「任意継続制度」を利用できますが、保険料は全額自己負担になるため、在籍時の約2倍の金額になる点に注意が必要です。