地方への移住を検討しているのであれば、Uターン転職という言葉を耳にする機会も多いでしょう。しかし、巷では「Uターン転職は難しい」という意見も多く、なかなか一歩を踏み出せない人もいるかと思います。
そこで今回は、Uターン転職に焦点を当てて、その実態を解説していきます。併せて、Uターン転職を成功させるコツや適したタイミングについてもご紹介します。
Uターン転職とは?
Uターン転職とは、進学や就職を機に生まれ育った地方から都会に移住した後、再び生まれ故郷に戻って転職することです。
Uターン転職は都会での仕事を手放して地元に戻ることになるため、通常の転職に比べてハードルが高く、Uターン転職を選択する人は以前はそれほど多くはありませんでした。
しかし、各自治体の積極的な移住支援やリモートワークの普及などにより、近年は地方へ移住する人が増えており、以前よりもUターン転職のハードルは下がりつつあるのが現状です。
Uターン就職との違い:転職か就職かのタイミングの違い
Uターン就職とは、進学を機に生まれ育った地方から都会に移住した後、卒業後に地元に戻って就職することです。
Uターン転職とUターン就職の違いは、文字通り転職か就職かのタイミングの違いです。すなわち、Uターン転職では都会で就職した後に、転職によって生まれ故郷に戻ってくるのに対し、Uターン就職では卒業を機に、地元で就職するために生まれ故郷に戻ってきます。
◆Uターン転職とUターン就職の違い
タイミング | 具体例 | |
---|---|---|
Uターン転職 | 転職 | 青森出身の人が東京で就職した後に、地元の青森に転職する |
Uターン就職 | 就職 | 青森出身の人が東京の学校を卒業後、地元の青森で就職する |
Iターン転職との違い:地元に戻るか別の地方に移住するかの違い
Iターン転職とは、生まれ育った土地から別の地方に転職することです。
Uターン転職とIターン転職の違いは、移住・転職先の違いです。すなわち、Uターン転職では地元に移住・転職するのに対し、Iターン転職では地元ではない別の地方へ移住・転職します。
Iターン転職は都会で生まれ育った人によく見られるパターンで、旅行などがきっかけで地方の魅力に気付き、Iターン転職に興味を持つ人が多いようです。
◆Uターン転職とIターン転職の違い
移住・転職先 | 具体例 | |
---|---|---|
Uターン転職 | 地元 | 青森出身の人が東京で就職した後に、地元の青森に転職する |
Iターン転職 | 地元ではない別の地方 | 東京出身の人が青森に転職する |
Jターン転職との違い:地元に戻るか地元に近い地方へ移住するかの違い
Jターン転職とは、進学や就職を機に生まれ育った地方から都会に移住した後、生まれ故郷に近い地方に転職することです。
Uターン転職とJターン転職の違いは、地元に直接戻ってくるか否かの違いです。すなわち、Uターン転職では地元に直接戻って転職するのに対し、Jターン転職では地元に直接戻らずに、地元に近い地方へ移住・転職します。
Jターン転職は本来は地元に戻る予定だったものの、何らかの事情(地元では仕事が見つからないなど)により、地元に近い場所に移住・転職するパターンが多いようです。
◆Uターン転職とJターン転職の違い
移住・転職先 | 具体例 | |
---|---|---|
Uターン転職 | 地元 | 青森出身の人が東京で就職した後に、地元の青森に転職する |
Jターン転職 | 地元に近い地方 | 青森出身の人が東京で就職した後に、地元に近い岩手に転職する |
Uターン転職が注目を集めている背景
冒頭でも少し触れた通り、近年はUターン転職をする人が増えていますが、それにはいくつかの時代背景があります。
そこで本章では、Uターン転職が注目を集めている背景について解説します。
価値観の多様化
価値観は時代の流れとともに常に変化するものですが、近年は以前にも増して価値観の多様性が叫ばれています。
特にコロナ禍以降は、組織や場所にとらわれない働き方や暮らし方がより重視されるようになり、それに伴い、地元での自由な暮らしを実現できるUターン転職にも注目が集まるようになりました。
各自治体の積極的な移住支援
近年は地域活性化を目的として、各自治体が移住者を積極的に受け入れる制度を整備し始めています。移住支援の内容は自治体によって異なるものの、多くの自治体では移住に伴う注文住宅の建築費や中古住宅のリフォーム代などの費用補助を行っています。
このような制度は、都会でマイホーム購入を実現できない人の関心を徐々に集めることになり、結果的にUターン転職が注目されるようになりました。
リモートワークの普及
コロナや働き方改革の影響により、ここ数年でリモートワークは急速に普及しています。
リモートワークの普及により、地方への移住後も以前の仕事を続けやすい環境が整いつつあります。その結果、「地元では仕事がない」という地方移住の課題をクリアできるケースも増え、Uターン転職が再び注目を集めることになりました。
Uターン転職のメリット
では、Uターン転職にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
そこで本章では、Uターン転職のメリットについて解説します。
具体的には、以下の5つが挙げられます。
- 自然に囲まれた生活ができる
- 通勤の負担が減少する
- 生活費を抑えられる
- 家族や友人ともすぐに会える
- ワークライフバランスを取りやすい
自然に囲まれた生活ができる
Uターン転職の1つ目のメリットは、「自然に囲まれた生活ができる」点です。
地方は都会に比べて圧倒的に緑が多く、豊かな自然に囲まれたゆとりのある生活を送ることができます。
実際、都会の喧騒から離れることで健康状態が改善したり、自然と触れ合うことで精神状態が安定したりする人も多く、自然に囲まれた暮らしは体と心の両方にメリットをもたらすようです。
通勤の負担が減少する
Uターン転職の2つ目のメリットは、「通勤の負担が減少する」点です。
都会に暮らしていると、毎日の通勤ラッシュにうんざりしている人も多いかと思います。その点、地方では車通勤を認めている職場が多く、仮に電車やバスでの通勤であったとしても、都会のように混雑することは基本的にありません。
このように、地方への移住は通勤ラッシュから解放されることになるため、都会に比べて通勤の負担が大幅に減少します。
生活費を抑えられる
Uターン転職の3つ目のメリットは、「生活費を抑えられる」点です。
地方は都会に比べて物価が安い傾向にあります。特に顕著なのが家賃で、東京の家賃相場を100%とすると地方の家賃相場は概ね70%ほどであり、中には60%台の地域も存在します(参照:全国賃貸管理ビジネス協会『全国家賃動向(2022年4月調査)』)。
また、地方であれば流通費が発生しないため、地元の新鮮な食材を安く入手することが可能です。
もちろん全ての物価が安いわけではありませんが、総合的に見れば、地方の方が都会よりも生活費を抑えることができるでしょう。実家に戻る人であれば、さらに生活費の負担を軽減できる可能性があります。
家族や友人ともすぐに会える
Uターン転職の4つ目のメリットは、「家族や友人ともすぐに会える」点です。
Uターン転職は単なる地方移住ではなく、住み慣れた故郷に戻ることになるため、家族や昔からの友人ともすぐに会うことができます。
地元で暮らしていれば、家族や友人の緊急時にもすぐに駆けつけることができ、万が一の時も安心です。
ワークライフバランスを取りやすい
Uターン転職の5つ目のメリットは、「ワークライフバランスを取りやすい」点です。
地方は自然に囲まれてのんびりと生活できるため、オンとオフの切替がしやすく、ワークライフバランスを取りやすい環境が整っています。特に、アウトドア派の人であれば、休日にはハイキングや釣りなどの趣味を存分に満喫できるでしょう。
また、地元に戻ることによって、育児面でも実家の協力を得やすく、仕事と子育てを両立させやすい点も大きなメリットです。
Uターン転職のデメリット
一方、Uターン転職にはデメリットもいくつか存在するため、注意が必要です。
そこで本章では、Uターン転職のデメリットについて解説します。
具体的には、以下の4つが挙げられます。
- 年収が減少する可能性がある
- 求人の数や種類が少ない
- 環境の変化が大きい
- 都会と比較して利便性に欠ける
年収が減少する可能性がある
Uターン転職の1つ目のデメリットは、「年収が減少する可能性がある」点です。
一般的に地方の給与水準は都会に比べて低い傾向にあるため、Uターン転職によって年収が下がる可能性があります。事実、厚生労働省の最新のデータによれば、東京都の賃金は375.5万円であるのに対し、地方では280万円前後の地域が多数を占めており、約100万円ほどの差が生じています(参照:厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査の概況』)。
ただし、これはあくまで一般的な話であり、中にはUターン転職によって年収アップに成功している人も存在します。また、前述の通り、地方へ移住することによって家賃などの生活費を抑えられるため、Uターン転職を機に生活の質が大きく下がるケースはそれほど多くないでしょう。
年収は確かに下がりましたが、後悔はしていないです。その分、固定費である家賃が安く済み、むしろ生活に余裕ができました。
ただ車が必要な地方へ行こうと考えている方は、購入費用や駐車場代が新たにかかることは考えておいた方が良いと思います。
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求人の数や種類が少ない
Uターン転職の2つ目のデメリットは、「求人の数や種類が少ない」点です。
地方と都会ではそもそも人口や企業の数に大きな差がある関係上、求人の数や種類は都会に比べてどうしても少ないのが実情です。そのため、地域によっては、自分の希望する業種や職種の求人が見つからない可能性があります。
また、求人の数や種類が少ないと、転職先の社風や雰囲気が合わなかった場合に再転職をする際の候補も限られてくるため、その点にも注意が必要でしょう。
環境の変化が大きい
Uターン転職の3つ目のデメリットは、「環境の変化が大きい」点です。
Uターン転職は生まれ育った故郷に戻るとはいえ、住まいや職場などの環境が大きく変わるため、慣れるまでは精神的な負担も大きくなりがちです。また、Uターン転職では長距離の引っ越しが必要になるケースも多く、早い段階から計画的に準備を進める必要があります。
特に家庭がある人は、自分にとっては地元であっても家族にとっては新しい環境であるため、家族とも相談しながら慎重に進める必要があるでしょう。
都会と比較して利便性に欠ける
Uターン転職の4つ目のデメリットは、「都会と比較して利便性に欠ける」点です。
地方は都会に比べて商業施設や公共交通機関の本数が少ないため、利便性の面では都会よりも低いと言わざるを得ないでしょう。
近年はネット通販等が充実しているものの、地域によっては車がないと生活に支障をきたす場合もあるため、注意が必要です。
地方へ行ってから驚いたのが、通販は届くものの送料が別途かかったり、出前取れなかったりする点です。たまには外食したいなと思っても、車を走らせないと近くのファミレスにも行けないので、その点は少し寂しいなと思う時があります。
ただ、余計な外食が減って健康的になったのも事実なので、短所もあれば長所もあるというのが本音ですね。
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Uターン転職を成功させるコツ
Uターン転職は人生における大きなターニングポイントにもなり得るため、なるべく失敗したくないと思っている人も多いでしょう。
そこで本章では、Uターン転職を成功させるコツをご紹介します。
具体的には、以下の3つです。
- 目的を明確にする
- 自治体の支援制度を活用する
- Uターン転職に強い転職サービスを活用する
目的を明確にする
Uターン転職後に「失敗した」と思っても、前の生活に戻ることは簡単にはできません。よって、移住後に大きな後悔をしないためにも、Uターン転職をする目的を明確にしておくことが重要となります。
例えば、「自然に囲まれて暮らしたい」という目的であれば、わざわざUターン転職をしなくても、現職に残ったまま郊外に引っ越すという選択肢もあるでしょう。
また、「なぜ地元の企業で働きたいのか?」という理由が明確になっていないと、志望動機や自己アピールの説得力が弱くなり、転職活動も難航してしまいます。
Uターン転職を考えているのであれば、まずはその目的を明確にした上で、「そもそもUターン転職をする必要があるのか?」という根本的な部分から検討する必要があるでしょう。
自治体の移住支援制度を活用する
冒頭でも述べた通り、自治体によっては支援金の給付や移住体験といった、移住者向けの支援制度が用意されています。支援の内容は自治体によって様々ですが、中には定住することを条件に、タダで家や土地を提供してくれる自治体もあります。
これらの制度をうまく活用すれば、手元に十分な資金がなくてもUターン転職を実現できる可能性があるため、移住先の自治体にどのような支援制度があるのか、必ず事前に確認しておきましょう。
なお、自治体の支援制度を調べる際は、一般社団法人移住・交流推進機構の『全国自治体支援制度検索』が便利です。
Uターン転職に強い転職サービスを活用する
Uターン転職は通常の転職よりも慎重な判断が求められるため、一人で進めるのが不安な人は、Uターン転職に強い転職サービスを活用してみましょう。
Uターン転職に強い転職サービスに登録すれば、求人の紹介や選考対策を受けられるのはもちろんのこと、転職活動のスケジュールや地方移住に関する相談もできるため、転職活動を進める上で心強い存在となるはずです。
>>おすすめのスカウト型転職サイト10選|仕組みや見分け方も解説
【年代別】Uターン転職に適したタイミング
本章ではここまでの内容を踏まえた上で、Uターン転職に適したタイミングについて年代別にご紹介します。
【20代】社会人としての基礎を習得した20代後半がベスト
20代は若年層ということもあり、基本的にどのタイミングでもUターン転職が可能です。中でも、社会人としての基礎を習得している20代後半は、企業側も1から育成する必要がないため、最もニーズがあります。
よって、20代でUターン転職をするのであれば、社会人としての基礎を習得した20代後半がベストと言えます。中には焦りを感じてしまう人もいるかもしれませんが、現職でしっかりと社会人としての基礎を身につけてからであっても、決して遅くはありません。
【30代】企業からのニーズがある30代前半がベスト
30代は20代に比べてハードルは高くなるものの、30代前半であれば地方企業からのニーズもあります。よって、30代でUターン転職をするのであれば、30代前半が適していると言えるでしょう。
逆に30代後半になると、相応のキャリアやスキルがないと転職活動に苦戦するケースも多くなるため、注意が必要です。
その他、30代は結婚や出産、住宅購入など重要なライフイベントと重なることも多いため、それらも考慮した上で、早い段階から計画を立てておいた方がいいでしょう。
【40代】家族とも相談しながら慎重な判断が必要
40代は30代よりもさらにハードルが高くなり、年齢を重ねるにつれ選択肢もどんどん限られていってしまうため、40代でUターン転職をするのであれば、なるべく早い決断が望ましいと言えます。
とはいえ、40代は家庭がある人も多いため、子どもの進学のタイミングに合わせるなど、慎重にタイミングを見極める必要があるでしょう。
このように、40代はUターン転職を決断できるタイミングも限られているため、数少ないチャンスを逃さないよう、入念な準備と迅速な決断が重要となります。
Uターン転職まとめ
ここまでUターン転職について、解説してきました。
都会暮らしと地方暮らしにはそれぞれメリット・デメリットが存在し、どちらがいいのかは個人の価値観による部分が大きいでしょう。
近年は、各自治体の積極的な移住支援やリモートワークの普及などにより、以前よりもUターン転職のハードルは下がりつつあります。地方移住に興味がある人は、自治体の支援移住制度を調べたり、転職サービスに登録して地元にどんな仕事があるのかを調べたりするなど、まずは情報収集から始めてみてはいかがでしょうか?