「今の会社を辞めたい」「転職したい」と思ったものの、「本当に自分は転職すべきなんだろうか?」「転職はうまくいくのだろうか?」と悩んだり不安に思う人は多いのではないでしょうか。
この記事では、転職すべきか、今の会社に留まるべきか悩んでいる方に向けて、キャリアコンサルタント池田からのアドバイスを紹介します。
転職すべきか悩んだときの診断テスト
キャリアコンサルタントの池田です。
3年前に実際にキャリア相談に来た営業職のXさんの例を用いて、転職すべきかどうか悩んでいるときの解決策をお伝えします。
Xさんは、長時間労働が慢性化していたため、転職を考え始めました。子どももいて家族の時間もほしいため、毎日夜10時まで働かないといけない現状をなんとかしたいと思い、残業時間の少ない会社を探し始めました。
しかし、Xさんは残業時間以外は現職に何の不満もなく、むしろやりがいを持って働いていたので、残業時間の問題さえクリアになれば、現職で働くのが彼にとって最も良いのではないかとコンサルタントの私は考えていました。
そこで私は、「現職で残業時間を減らしてくれないか、お願いしてみたことはありますか?」と聞きました。Xさんは「いや、言っても無駄なので・・・」とのことでしたが、「ダメ元で言ってみたらどうですか?」という私の意見を取り入れ、上司に残業時間を減らしてほしいと伝えることになりました。
すると上司からは、「Xさんはすごく楽しそうに仕事をしているので、どんどん任せてしまっていた。家族の時間も大事だから、残業時間は減らしていこう。周りのメンバーも成長してきたし、仕事の振り方を考え直すよ。ちなみに私もみんなの残業時間が多いのは課題に感じていて、効率化できるシステムの導入も検討しているところなんだ」と言われたそうです。
結果的に、Xさんは毎日8時前には帰れるようになり、転職という道を選ばなくても、望んだ働き方を手にすることができたのです。
ダメ元で言ってみるということの重要性を感じた場面でした。
Xさんのように現職に働きかけを起こすのか、転職活動を始めるのかは、下記の診断テストに取り組んで判断してみてください。
診断結果の結果、「現職でまだできることがある」になった場合、安易に転職に進むべきではありません。
現職に不満を持っていたとしても、思い切って社内で相談してみると、案外すんなりと受け入れて策を練ってくれることが多いです。自分の意見を出さないまま黙って転職するのはもったいないです。自分の意見はしっかりと主張してみましょう。
キャリアアップ、収入アップのために転職を考えている人は、現職であと少し成果を出すために頑張ってみることが一番の近道だったりします。自分の頑張りではどうにもできず、人事制度がこうだから、とか、これがこの会社の通例だから、とあきらめている場合でも、思い切って上司に相談してみることをおすすめします。
全く働きかけをしない状態で転職となると、転職先でも同じように不満を持って辞めるを繰り返してしまうことになりかねません。
ただし、もう打つ手は打ったという状態であれば、転職活動を始めてみることをおすすめします。
転職すべきではない人チェックリストに該当する人は要注意
職活動を始めてしまうと後悔する人の特徴をまとめました。
下記に当てはまる人は、転職活動を始めてもうまくいかない可能性が高いです。転職したいと思っていても、下記に該当する場合は、現職でもう少し頑張りましょう。
今の職場が嫌なだけなら、良いところを理解してから
今の職場が嫌だ、今の業務内容が嫌だ、今の待遇が嫌だ、というのは転職のきっかけにもちろんなりえます。しかし、それだけの理由だけだと、転職はおすすめできません。
逆に今の職場の良いところは何かも理解してみましょう。転職するということは、負の面だけではなく良い面も捨てることになります。すべてを手に入れることはできません。
今の職場の嫌なところ | 今の職場の良いところ |
---|---|
↑転職によって改善できる可能性がある |
↑転職によって失う可能性がある |
また、転職理由がネガティブなものだけでは、選考でも印象が悪く、通過にしくいです。自分のキャリアの見直しを行い、転職後に何をしてどう成長していきたいのかを伝えられる状態にしてから転職活動をしましょう。
入社してすぐの転職はデメリットを理解しよう
入社してから退職までがあまりにも短い場合、転職活動の際に、「この人はうちに入ってもすぐに辞めそうだな」とか「ストレス耐性の無い人かな」と思われるリスクがあります。
何年、何ヶ月経っていれば転職してもOK、という明確な基準はありませんが、在籍期間が短いということはそれだけ転職活動においてもデメリットが生まれるということは理解しておきましょう。
実際に、ある企業Yでは、面接の際に面接官が入力する面接評価シートに、「短期離職の有無」という項目を設けています。「短期離職した人は、うちの会社に入ってもすぐに辞める可能性が高い」という前提のもと、短期離職経験者を厳しく評価しています。
Yの採用担当者に「何をもって短期離職とみなしていますか?」と聞いたところ、「我々の場合、1年以内の退職を一つの目安としている。直近の会社だけではなくて、過去に短期離職した会社が無いかも気にしている」との回答でした。
短期離職は長期的なキャリア形成に影響をもたらします。私の意見としては、少なくとも1年以内の転職は避けた方がいいと思っています。
持ってるスキルが現職でしか通用しないなら仕事の幅を広げてみよう
スキルには、他社でも通用するスキルと、自社内でしか通用しないスキルがあります。ある業務のスキルが非常に高かったとしても、それが自社にしか存在しない業務だった場合、アピールポイントにはなりません。
現職で、もっと横展開できるスキルを身につけられる仕事をさせてもらいましょう。
ここで、転職で苦戦したZさんのお話をしましょう。
Zさんは、ある企業で採用人事をやっていました。運送業界でドライバーの採用を5年間経験してきており、社内でも高く評価されていました。
年収アップを狙い転職活動を始めましたが、多くの企業からは、「ドライバーの採用とうちがやってる採用は全然毛色が違う」と思われてしまい、採用の経験が通用しないと判断されてしまいました。
現職では高く評価されていましたが、転職市場でのZさんの評価は高くなかったのです。そこでZさんは、現職の中でドライバー以外の営業職の採用に名乗りを上げて、経験の幅を広げることにしました。
このように、自分は転職市場で求められる人材かどうかを確認し、そうでないなら現職で幅を広げてスキルアップに取り組んだ方がいいです。
3つの項目に当てはまらない人は、前向きに転職活動を検討しましょう。
それでも悩むなら、軽い気持ちで転職活動を始めてみるのがおすすめ
悩む前に行動に移しましょう。転職しなかったとしても「転職活動」それ自体に大きなメリットがあります。
転職するか止まるか悩んでいる方の多くは、「今よりいい環境で働けるならば転職したい」と感じているはずです。であれば、まずは試しに転職活動を始めてみて、他の会社を知って比較してみることをおすすめします。
「転職活動する」イコール「転職する」ではありません。
結果的に転職しないという道を選んだとしても、転職活動それ自体に多くのメリットが存在します。
- 自分のキャリアを見直すいいきっかけになる
- 自分の市場価値がわかる
- キャリアアップのために取り組むべきことが明確になる
- それでも現職に留まる決意をした場合、仕事のモチベーションが高まる
- 現職の環境について客観的な意見を聞ける
転職活動をするということは、企業を探し、選考を受けることになりますが、このためには準備が必要です。今までのキャリアの棚卸しを行い、自身の強みを整理することから始まります。必然的に、「自分はこれから何をしていきたいんだろう?」と考え直すことになります。結果的に転職をしなかったとしても、普段仕事に忙殺されて真剣に向き合うことのなかった自分のキャリアを見つめ直すいいきっかけになります。
実は私も、20代半ばの頃に、転職するとは決めずに転職活動を始めたことがあります。当時私は、小さなスタートアップ企業で、いわゆる「何でも屋」として、プロダクトマネージャー、営業、人事と幅広く仕事をしていました。
あまりにハードワークなので転職を考えたのですが、どのスキルも中途半端だったため、転職すべきかどうか悩んでいました。
そこで、一旦転職活動を始めて転職エージェントの人に相談することにしました。
相談したことでわかったことは、①「いろんな仕事をしてきたけど、自分に一番向いているのは人事っぽい」②「自分の少ないキャリアでも年収◯◯万円くらいで雇ってくれる会社がありそう」という2点です。
業界や会社規模など、具体的にこういう会社で働きたい!というのはなかったですが、軽い気持ちで数社応募してみました。面接を重ねていくうちに、「人事職をやりたい」「転職したい」という気持ちは明確になっていき、具体的に会社選びの軸も定まっていきました。
私の場合は、転職活動を始めてみて結果的に転職することになりましたが、逆もあると思います。転職活動をしてみることで、「転職する」・「転職しない」の決断の質が高まることは間違いありません。
転職活動は働きながらでもできます。初めてで流れがよくわからない人は、こちらの記事を参考にしてみてください。
おすすめは、転職エージェントに登録してキャリアアドバイザーに相談すること
転職活動を始めるにあたっては、転職エージェントのキャリアアドバイザーに相談するのがおすすめです。
転職活動のサポートをしてくれる転職エージェントでは、利用料は無料ですが、自分のキャリアの棚卸しから転職をするか迷っている場合に客観的な意見をもらうことができます。
また、転職エージェントのキャリアアドバイザーはたくさんの職場事情について知っているため、自分がどんなところに不満を抱えていて、それらが転職によって改善するのかも教えてくれます。
また、自分にどんな年収帯のどんな求人を紹介してくれるか知ることで、自分の市場価値もはっきりとわかってきます。選考を受ける過程で、多くの企業と出会い、自問自答することで、今まで気づかなかった自分の価値観を見つけることもあるでしょう。
転職活動を通じて、転職すべきかどうかはクリアになってきます。転職活動をすることで、「転職する」決断も「転職しない」決断も、「質」の高い決断になると思います。
転職経験者の成功の声・後悔の声を参考にしよう
転職経験者の成功の声や後悔の声を聞いて、自分が転職するべきかどうかの参考にしてください。
転職を経験した男女237名にアンケートを実施しました。
「転職してよかったですか?」という質問に対し、67.5%が「よかった」と答えています。「前職の方がよかった」と答えた人はわずか4.2%でした。転職をして後悔している人はかなり少数派のようです。
「転職してよかった」と答えた人のうち「ここがベストの転職先だ」と答えた人は58.1%、「他の会社に転職した方がもっとよかった」と答えた人は41.9%でした。
両手を挙げて「成功!」というよりは、「まあベターかな。前職よりはマシだな」と考えてる人も多くいることがわかりました。
それでは、それぞれ答えた人たちの声を具体的に聞いてみましょう。
「転職してよかった&ここがベストの転職先」という人の声
- 家庭と仕事の両立が出きるようになったので、とても良かったと思っています。(30代女性)
- 給与が転職する直近の約1.5倍になったのと、業務内容が前職とガラリと変わりやり甲斐が感じられる為です。(40代男性)
- もともとやりたい業種だったから。今までの企業とは全く違うと思えるくらい,有給もとれるし自分のペースで仕事も進められる。給料もよいし最高です。(20代男性)
- 常に新しいことに挑戦させて頂き、自身で考えた案を取り入れてれるためやりがいのある仕事だと思っています。(20代女性)
「転職してよかったが、他の会社に転職した方がもっとよかった」という人の声
- 転職して良かったと思いますが入社2年後に給料制度の見直しがあり下がってしまう所ありました。(20代男性)
- 給料は上がったが、土日の出勤もあり家族の負担も増えてしまったため。(30代男性)
- 前職に比べて人間関係はいいのですが、給料がとても低く、休日が少ないので。(40代女性)
- 給与がそこまで前の会社の時と変わっていない割に、転職してすぐに会社都合で管理職になってしまったため、プライベートの時間が以前より少なくなっていると感じているためです。(20代女性)
「前職の方がよかった」という人の声
- 以前より賃金は上がったが、人間関係が悪かった。(30代女性)
- 初年度は有休も少なく、特別有休などの措置も取ってもらえなかった(40代男性)
- 前職はボーナスが年5か月分固定だったのに対して、現職は業績によるから。(30代女性)
- 前の会社がそんなに悪くなかったことを思い知ったから。(20代女性)
【調査概要】
調査方法:インターネットアンケート
調査対象:転職経験のある方
アンケート母数:男女237名
実施日:2022年10月4日〜10月7日
調査実施主体:ミライのお仕事
調査会社:株式会社ネクストレベル転職すべきかどうか悩む方へ。4人のキャリアコンサルタントのアドバイスを紹介