近年は一人ひとりの価値観も多様化しており、田舎暮らしに興味を持つ人が増えています。とはいえ、巷では「田舎では仕事が少ない」「田舎では仕事探しが難しい」という声も多く、田舎でできる仕事について気になっている人も多いかと思います。
そこで今回は、田舎への移住を検討している人に向けて、田舎暮らしでできる仕事をご紹介します。併せて、田舎暮らしの仕事の特徴や、田舎暮らしでの仕事を探す方法についても解説します。
田舎暮らしの仕事の特徴
田舎暮らしでできる仕事を探すのであれば、まずは田舎暮らしの仕事の特徴を押さえておく必要があるでしょう。
そこで本章では、田舎暮らしの仕事の特徴について解説します。
田舎ならではの仕事に就くパターン・前職と同じ仕事に就くパターン
田舎暮らしの仕事は大きく分けて、「田舎への移住を機に、地域ならではの仕事に就くパターン」と「これまでの経験やスキルを活かして、前職と同じ仕事に就くパターン」の2パターンが存在します。
田舎暮らしの仕事と聞くと、農業や特産物の生産といった地域ならではの仕事を連想する人も多いでしょうが、移住前の仕事をそのまま田舎でも継続するという選択肢もあります。
特に最近はリモートワークが急速に普及していることもあり、仕事内容を変えずに田舎に移住することも十分に可能です。
求人の数や種類は少ないものの、有効求人倍率は高い地方も
田舎は都会に比べて求人の数や種類は圧倒的に少ないものの、田舎と都会ではそもそも人口に大きな差があるため、有効求人倍率(有効求人数を有効求職者数で割った数値)は決して低くはありません。
◆都道府県別の有効求人倍率(2023年4月時点)
北海道 | 1.07 |
---|---|
秋田県 | 1.37 |
東京都 | 1.79 |
石川県 | 1.65 |
三重県 | 1.33 |
山口県 | 1.46 |
愛媛県 | 1.38 |
宮崎県 | 1.45 |
沖縄県 | 1.06 |
全国平均(※参考) | 1.32 |
(参照:独立行政法人労働政策研究・研修機構『職業紹介-都道府県別有効求人倍率』)
上記のデータを見ると、北海道や沖縄県などのように有効求人倍率が低い地域も一部存在するものの、全国平均(1.32倍)と同等か、あるいはそれを超える地域が多数を占めています。業種や職種によっては、人材不足の仕事もあります。
もちろん地域差はありますが、「田舎では仕事が少ない」とは一概には言い切れないのが実態です。
地方の給与水準は都市部に比べて低い
給与水準に関しては、一般的に地方は都会に比べて低い傾向にあります。事実、厚生労働省の最新のデータによれば、東京都の賃金は375.5万円であるのに対し、地方では250~300万円の地域が多数を占めており、大きな開きが生じています(参照:厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査の概況』)。
とはいえ、田舎暮らしでは家賃や食費などの生活費を抑えられるため、移住を機に生活の質が大きく下がるケースはそれほど多くないでしょう。
また、中には田舎への移住を機に年収アップに成功している人も存在します。
田舎ならではの仕事
前述の通り、田舎暮らしの仕事は大きく分けて、「田舎への移住を機に、地域ならではの仕事に就くパターン」と「これまでの経験やスキルを活かして、前職と同じ仕事に就くパターン」の2パターンが存在します。
そこでまず本章では、田舎ならではの仕事をご紹介します。
具体的には、以下の通りです。
- 地域おこし協力隊
- 農林畜産に関する仕事
- 伝統工芸職人
- 観光や宿泊に関する仕事
- 飲食に関する仕事
地域おこし協力隊になる
地域おこし協力隊とは、過疎化や高齢化の進行が著しい地方において、地域のPR活動や住民支援などを行い、地域活性化や地域振興を図る仕事です。
報酬(月に18万円前後)は国から支給される上に、住居に関しては地域から提供されることが多いため、初めての田舎暮らしであっても安心して働くことができます。
地域おこし協力隊になるまでの具体的な流れは、以下の通りです。
①地域おこし協力隊を募集している自治体へ申し込む
②地方自治体による選考(書類選考・面接等)を受ける
③地方自治体より正式に委嘱を受ける
④採用先の自治体に住民票を移し、地域おこし協力隊として活動を開始する
ただし、地域おこし協力隊は活動期間に定めが設けられている(概ね1年以上3年以内)ため、任期満了後はまた新たに仕事を探す必要があります。
農林畜産に関する仕事に就く
田舎暮らしの仕事として、農林畜産業への従事を思い浮かべる人も多いかと思います。
農林畜産業は自然と向き合う仕事であるため、人間関係のストレスから解放され、のびのびと仕事ができる点が最大の魅力です。農業や畜産業は後継者不足ということもあり、多くの自治体で就労に対する補助金や助成金制度が用意されています。
ただし、農林畜産業は基本的に肉体労働であるため、ある程度の体力が求められます。また、拘束時間もそれなりに長く、会社員と同等、あるいはそれ以上の時間を拘束されることもあるため、注意が必要です。
伝統工芸職人になる
田舎暮らしの仕事としては、陶磁器や石工品などを作る伝統工芸職人を思い浮かべる人も多いでしょう。
伝統工芸は職人の高度な技術が必要であり、将来的にAIに取って代わる可能性が低い仕事と言われています。自分に合った伝統工芸が見つかれば、一生をかけて打ち込める仕事になるかもしれません。
ただし、伝統工芸職人として自立するためには、長期間の修行を積んで高い技術を身につける必要があります。
観光や宿泊に関する仕事に就く
田舎は観光地として有名な地域も多いため、観光や宿泊に関する仕事に就くのも1つの選択肢です。具体的には、観光会社やホテルなどへ就職する他、自らゲストハウスやキャンプ場などを経営する方法が挙げられます。
観光や宿泊に関する仕事は、地元で生まれ育った人の方が向いているイメージですが、移住してきた人であっても、地域の魅力を広めたいという熱意があれば十分に務まるでしょう。
ただし、観光や宿泊は景気や季節の影響を受けやすいため、その点には注意が必要です。
飲食に関する仕事に就く
飲食に関する仕事は全国どこでも行える仕事ではありますが、地域の特産物や自然に囲まれた環境を活かしやすいため、田舎ならではの仕事の1つと言えます。具体的には、地域の飲食店に調理師として就職する他、自らレストランや古民家カフェを経営する方法などが挙げられます。
ただし、田舎は都会よりも人口が少ない関係上、働ける飲食店が少なかったり、来客を十分に見込めなかったりする可能性があるため、注意が必要です。特に、交通の便が悪い地域で飲食店を経営するのであれば、集客方法について事前に対策を練っておく必要があるでしょう。
田舎でもこれまでの経験やスキルを活かせる仕事を紹介
続いて、これまでの経験やスキルを活かせる田舎の仕事をご紹介します。
具体的には、以下の通りです。
- インフラ関連事業の仕事
- 製造業に関する仕事
- 医療・介護に関する仕事
- 教育・保育に関する仕事
- Web関連の仕事
インフラ関連事業の仕事に就く
電気や水道、通信や交通といったインフラ関連事業の仕事は、人が生活する上で欠かせない存在です。
インフラ関連事業の仕事は、特殊な技術や資格が必要となるケースが多く、田舎では人材が不足している傾向にあるため、田舎に移住後も継続させやすい仕事の1つと言えます。
特に電気工事や土木関連の経験や資格を有していれば、重宝されることも多いでしょう。
製造業に関する仕事に就く
製造業に関する仕事であれば、田舎であってもそれなりに求人の数や種類は充実しています。というのも、田舎は土地が安い上に周りに民家が少ない関係上、都会よりも工場を設置しやすいからです。
製造業の仕事は未経験でも始められることも多いですが、特殊な技術や資格を有していれば、企業側からも重宝されやすいでしょう。
医療・介護に関する仕事に就く
医療や介護は、地域を問わず必要不可欠な仕事です。
田舎は高齢者の割合が高く、医療・介護従事者は多くの地域で不足しています。そのため、前職の経験があれば働き口も見つけやすく、移住によって給与が大きく下がるケースは少ないでしょう。
特に、最近は老後や定年後に地元に戻る人が増えているため、田舎における医療・介護に関する仕事は今後も需要の増加が見込まれています。
教育・保育に関する仕事に就く
教育や保育も医療・介護と同様、地域に関係なく必要不可欠な仕事です。
田舎は都会に比べて子どもの数が少ない傾向にあるため、一般的には需要は小さいと思われがちですが、教員や保育士が不足している地域は少なくありません。
特に、移住支援を積極的に行っている地域であれば、子育て世帯も多く流入してくるため、教員資格や保育資格を有している人であれば、重宝される機会も多いでしょう。
Web関連の仕事をリモートでする
ITエンジニアやWebデザイナーといったWeb関連の仕事は、PCとネット環境さえ整っていれば場所を選ばず仕事ができるため、田舎に移住後も続けやすい仕事と言えます。
特に近年はコロナや働き方改革の影響により、リモートワークが急速に普及しており、Web関連の仕事であれば、都会の企業に在籍したまま田舎に移住することも十分に可能です。
中には、リモートワークによって移住した人に対して助成金を支給する自治体もあり、その点も追い風となっています。
田舎暮らしでの仕事を探す方法
さて、実際に田舎暮らしでの仕事を探したい場合には、どのような方法があるのでしょうか?
そこで本章では、田舎暮らしでの仕事を探す方法について解説します。
具体的には、以下の通りです。
- 移住者向けの説明会・相談会に参加する
- 自治体のサイトを確認する
- 地方求人に強い転職サービスを活用する
移住者向けの説明会・相談会に参加する
1つ目の探し方としては、「移住者向けの説明会・相談会に参加する」方法が挙げられます。
移住者向けの説明会や相談会は全国各地で定期的に開催されており、これらのイベントに参加することで、その地域の仕事に関する有益な情報を入手することが可能です。他にも、移住支援制度に関する情報を入手できたり、移住に関するアドバイスを受けたりすることもできます。
最近はオンライン形式で開催されるものも増えているため、移住を検討している人は積極的に参加することをおすすめします。
なお、移住者向けの説明会や相談会を探す際は、『ふるさと回帰支援センター』や『ニッポン移住・交流ナビ』などを活用するのがいいでしょう。
自治体のサイトを確認する
2つ目の探し方としては、「自治体のサイトを確認する」方法が挙げられます。
自治体によっては、サイト上で移住者向けの求人情報や就業支援サービスを掲載していることがあるため、移住を考えている自治体がある場合には、サイトを定期的にチェックしておきましょう。
地方企業の中には一般的な転職サービスを使っていない企業もあるため、自治体のサイトを定期的にチェックしておけば、思わぬお宝求人が見つかることがあるかもしれません。
地方求人に強い転職サービスを活用する
3つ目の探し方としては、「地方求人に強い転職サービスを活用する」方法が挙げられます。
田舎での仕事を探すのであれば、やはり地方求人に強い転職サービスを活用するのが最も効果的です。地方求人に強い転職サービスに登録すれば、求人の紹介や選考対策を受けられるのはもちろんのこと、自身のキャリアに関する相談もできるため、転職活動を進める上で心強い存在となってくれるでしょう。
特に転職経験が少ない人は、積極的に転職サービスを活用することをおすすめします。
田舎暮らしの仕事まとめ
ここまで田舎暮らしの仕事について、解説してきました。
確かに田舎は都会に比べて求人の数や種類は少ないものの、決して仕事がないというわけではありません。特に最近はリモートワークの普及もあり、以前よりも田舎暮らしでできる仕事の選択肢は増えています。
とはいえ、田舎への移住は環境が大きく変化するため、慎重な判断が必要となります。田舎暮らしに興味がある人は、移住者向けの説明会・相談会への参加や転職サービスへの登録をするなどして、まずは情報収集から始めてみましょう。