水族館の飼育員ってどんなお仕事?業務内容ややりがいを現役さんに聞いてみた!
今回紹介するお仕事は、水族館の飼育員についてです。
- 水族館の飼育員の業務内容
- 水族館の飼育員のやりがいとつらいところ
- 水族館の飼育員に向いている人の特徴
- 水族館の飼育員の収入
以上のことを説明していきますよ!水族館の飼育員になりたい人は、ぜひ、最後まで読んでくださいね。
未経験からの目指し方や求人の探し方は後編で解説しています。
競争率が高い?水族館の飼育員になるには?
仕事のことを知るには、実際に働いている人から話を聞くのが一番!そんな訳で、水族館の飼育員として働いている相田さんにお話を伺いました。まずは、プロフィール教えてくれますか?
2年間、動物系の専門学校に通ったあと、社員数70名ほどの水族館に新卒採用で入社しました。最初は契約社員で4年間、その後は正社員として働いています。トータルでは5年7カ月ですね。
最初から正社員ではなかったのですね。
契約社員からのスタートでした。
普通の会社と違って、水族館ってそんなに数はないんですよ。社団法人日本動物園水族館協会に加盟しているのは、2018年現在で60施設。飼育員や水獣トレーナーなんかは人気がある職種なので、競争率は高いですね。
水族館の飼育員になるには、魚や水獣などの動物に関する知識が必要です。私もそうですが、飼育員の多くは大学や専門学校で、水産学や獣医学などを学んでいます。学校では、施設見学や夏休みを利用しての実習などがあるので、夢に向かって頑張ろうという気持ちになれますよ。
飼育員に必須の資格はありません。でも、水族館には公立と私立があって、公立の水族館で働きたいなら、公務員採用試験を受験しなければなりません。公立も私立も飼育員の仕事は人気が高いです。なかなか空きも出ないので、求人情報はこまめにチェックしておきたいところですね。
動物のお世話が主!水族館の飼育員の業務内容
では、具体的にどのようなお仕事をしているか教えてください。
はい!
主に、動物の世話や飼育場の掃除、接客業務などを行います。担当している動物はイルカやペンギンなど。餌を作って与えたり、飼育場をキレイに掃除したりしています。
飼育している動物たちは水族館の資産なので、健康管理にはとても気を使うんです。血液検査の結果を踏まえて、薬やサプリメント、餌の量も調整します。
水族館の飼育員は、業務をスムーズに行えるように、いろいろな訓練を受けます。採血や体重測定を正確にできるように練習したり、ふれあいプログラムのための訓練を行います。
ふれあいプログラムとは、お客さまに水族館の動物たちを身近に感じてもらうためのイベントです。イルカショーでお馴染みのジャンプやランディングなどの芸を動物に仕込んだり、人に触れることに慣らしたりする訓練などは、飼育員の仕事です。
動物に芸を仕込むのもスキルが必要ですから、飼育員はそのための訓練も受けるんですよ。ふれあいプログラムでの接客を通して、動物たちの魅力をお客さまに伝えるのも、私たち飼育員の重要な仕事です。
水族館の飼育員の業務内容や1日のスケジュールをチェック!
よくわかりました!もう少し踏み込んで聞いてもいいですか?水族館の飼育員さんたちは、毎日どのように働いているか、1日のスケジュールを教えてもらえるでしょうか。
はい、私はこんな毎日を送っています。
8:00
出勤したら、担当している飼育場を見回ります。動物の様子を観察して、それぞれ異常がないかをしっかり確認します。
9:00
水槽を清掃します。清掃しながら、設備の不具合がないかもチェックしていますよ。
10:00
水族館が開館したら、飼育場で動物たちの健康状態を確認します。体調不良の子がいれば、獣医に知らせます。
12:00
昼休みですが、体調の悪い子がいる場合はランチはサッと済ませて、動物の様子を見に行きます。
13:00
ガイドとしてお客さまと一緒に館内を回ったり、質問に答えたりします。
14:00
飼育場や予備水槽の清掃を行います。
15:00
調餌と給餌を行います。体調不良の子には、薬やサプリメントも一緒に与えます。
17:00
閉館ですが、動物の状態によっては残業もします。
やはり動物を一番に考えて仕事をしているので、動物に合わせて勤務時間も変動するという感じなんですね。
水族館ならでは!飼育員のやりがいとつらいところ
どんな仕事でも大変なことはあるけど、水族館の飼育員としてやりがいとかつらいこととか、何かありますか?
水族館は、海や川などに生きる動物たちを、たくさんの人に知ってもらう場所です。仕事のやりがいやつらさは、水族館ならではのものがありますよ。
水族館の飼育員のやりがいとは?動物やお客さまとふれあう喜び
大好きな動物たちと一緒にいられるのは、とてもうれしいですね。昔から海の動物が好きだったので、仕事で大変なことがあっても、動物のかわいらしい姿を見ると頑張ろうという気持ちになります。
来場されたお客さまが笑顔で楽しんでいる姿も、見るとやりがいを感じます。特に、ふれあいプログラムでは動物を間近で見たり触ったりできるので、お客さまの反応が大きいです。
最初のうちは動物を怖がっていた子どもも、私の話や動物の観察を通して触れるようになったり、動物に対して好意や関心を持ってくれたりするんです。そんなときは、本当にうれしいと感じますよ。
生き物相手だからこそ?水族館の飼育員のつらいところ
動物が体調を崩したり、亡くなってしまったりするときは、とてもつらいです。基本的に、動物には体調不良や病気を悟られないように振る舞う習性があります。
私たち飼育員が気付いた頃にはすでに重度の状態で、突然の死に出会うこともありました。そのたびに、もっと早く気付けなかったのか、やれることはなかったのか、自問自答します。
病気の重症化や突然死を防ぐには、予防医療や初期対応が有効です。毎日の適切な健康管理や行動観察は、常に心がけています。
大切な動物との別れは、悲しいですね…。
だからこそ、日々の観察が重要なんですよね。動物にも個体差があります。個体ごとのクセや行動をしっかり覚えて、少しの変化も見逃さないようにしていますよ。
水族館の飼育員に向いている人の特徴を3つ紹介!
では、水族館の飼育員に向いているのはどんな人だと思いますか?
水族館の動物が好き、というのは基本ですが、生き物が相手の仕事なのでそれだけではやっていけない厳しさもあります。
几帳面な人
動物の健康をきめ細やかに管理してくには、几帳面さが求められます。いつもと比べてどことなく元気がない、何となく歩き方がおかしい、食べた餌の量が微妙に少ないなど、動物たちの微妙な変化は、毎日の細かい観察で察知できるんです。
逆に、仕事が大雑把だと、動物の小さな変化も見逃してしまいます。小さな変化に気付くことが、動物の命や健康を守ることにもなります。
また、新しく水族館にやってきた動物の体には、寄生虫がびっしり付いているケースがあります。もちろん、寄生虫はすべて取り除いて水槽に入れます。1匹でも残ってしまうと、他の動物に悪影響を及ぼしますので、1匹も残さないようにピンセットで取っていくんです。
生き物たちが過ごしやすいように水槽に手を加えたり、使いやすいように掃除道具を改造したり、工作も結構多いんですよ。動物は水族館の資産でもありますし、几帳面に仕事ができる人は、水族館の飼育員に向いているのではないでしょうか。
協調性がある人
実務の方法は水族館によって異なります。ただ、業務が細分化されているケースが多く、チームで連携しながら行う仕事も少なくありません。
例えば、ペンギンに餌を与えるときでも、館内にはお客さまがいて、給餌の様子を観察しています。飼育員は、ペンギンに餌を与えながら様子を観察し、同時にお客さまにペンギンの習性が理解できるように話もします。私がいる水族館では、給餌とお話は別の飼育員が担当するので、両者の連携がとても大切です。
お客さまに楽しんでもらうために、チーム一丸となって作業に取り組める人は向いていると思います。
※給餌(きゅうじ)とは、動物に餌を与えることです。ちなみに、調餌(ちょうじ)は、動物に与える餌を用意することです。
給餌、調餌、掃除。この3つの作業は飼育員の基本業務ですね。
おおらかな人
動物は、人間の言葉を理解してその通りに動いてくれる訳ではありません。どちらかといえば、人間が動物のことを理解して、動物が快適に過ごせるようにお世話してあげる必要があります。
給餌のときにペンギンのくちばしで擦り傷を作ることもありますし、調餌や掃除、寄生虫取りなどはあまりキレイな仕事ではありません。飼育員の思い通りにならないことがたくさんあって、キレイではない肉体労働もこなしていかなければならないんです。
動物に対するきめ細やかなサポートは必要ですが、同時に、予想通りにいかなくても動物を見守っていけるおおらかさが必要だと思います。
水族館の飼育員になるために努力しておきたいことや取っておきたい資格
水族館の飼育員として、努力したことってありますか?なるために努力したこととか…資格とか?
動物に対する知識は、常に勉強していますね。
大学や専門学校などで、水生生物に関する基本知識は勉強します。でも、そこまでで終わってしまうと、知識はどんどん古くなっていきます。
学校での勉強はあくまでも基礎的なもの。また、経験則だけでも仕事はできるかもしれませんが、長く水族館で働いていくなら、動物行動学や理論的な学問は、積極的に学び続けたほうが良いと思いますよ。
取得しておくと役に立つ資格とは?
絶対に取らなければならない資格はありません。ただ、あると便利な資格はあります。
潜水士
潜水士は国家資格です。大きな水槽内を清掃する際に必要になります。実は、潜水士は学科試験のみなんです。試験は年に4回あるので、水槽内の清掃を担当したい人は受験しておくといいと思います。
編集部:「水族館の大きな水槽に潜っている飼育員さんは国家資格を持っていたんですね!」
学芸員
学芸員は、博物館法で定められた国家資格です。美術館や科学館などと同様、水族館も博物館の一種。水族館における資料の収集や整理、保管、保存、展示、調査研究などを学べます。学芸員の資格を取得するなら、大学で必要な単位を取得するのが良いですね。
水族館の飼育員の収入は?世間一般と比べたら低いかも?
ちょっと聞きづらいのですが…、水族館の飼育員って、お給料はどのくらいですか?
私の場合、手取りは月給で15~16万円、年収で250万円ほどでした。
ボーナスは、契約社員のときは3万円、正規社員としては10万円ほどです。そのときの状況によってはまったくない場合もあります。
世間一般と比べると、給料は高くないと思います。業界内では、平均程度ではないでしょうか。
残業は、時期にもよりますが30時間未満くらいです。私がいる水族館はみなし残業性なので、大体23時間分の時間外労働を超えた場合、かつ29時間までの残業代は出ていますよ。
確かに、サラリーマンの平均年収と比較すると好きじゃないとなかなか満足できないかもしれませんね。休日出勤はあるのでしょうか?
私はないですね。獣医を兼ねている社員だと、たまに休日出勤しています。
水族館の飼育員になりたい人に一言!
最後に、水族館の飼育員になりたい人へ向けて、一言お願いします!
水族館の飼育員は、動物の魅力を多くの人に知ってもらうのが仕事です。競争率は高いですが、なってからもいろいろなことを勉強しなければなりません。ただ、喜びも多い仕事ですので、水生生物が好きな人にはやりがいも多いと思います。かわいい動物たちと一緒にいたい人は、ぜひ目指してみてください。
次の記事では、未経験から水族館の飼育員を目指すために具体的な求人の探し方などを紹介します。