医療事務の仕事内容とは?実際に働く人へ聞いた仕事内容とスケジュール

編集部 石崎

こんにちは、編集部の石崎です!

医療事務は人気がある職種のひとつです。医療機関での事務ですが、受付や電話対応といった一般的にもよくある業務の他に、カルテ作成やレセプト(診療報酬明細書)の発行といった特殊な仕事もあります。

本記事では実際に医療事務として働いている3名に、どのようなスケジュールで何の仕事をしているかを聞きました。

医療事務のお仕事内容とは?大きく分けて3つに分類

医療事務のお仕事とは?

編集部 石崎

医療事務は大きく分けると、3つあります。

  1. 受付・会計業務
  2. レセプト業務
  3. クラーク業務

それぞれの業務内容を簡単に紹介すると、次のようになります。

▼それぞれの業務内容
① 受付・会計業務 ② レセプト業務 ③ クラーク業務
  • 受付の対応
  • カルテ管理
  • 患者さんの対応
  • 電話対応
  • 診療後の会計
  • 診療明細報酬書(レセプト)の作成
  • レセプトを請求する際の確認作業
  • 病棟での業務が中心
  • 入退院の手続き・事務処理
  • 支払いについて患者さんへの説明

※レセプト業務とは:
私たちが診療を受けると、なんらかの健康保険を利用して診療費を支払います。医療機関は、患者さんが支払った実際の報酬とは別に、健康保険に患者さんが払う自己負担分以外を請求します。

健康保険に請求するときに提出するのが、診療明細報酬書、つまりレセプトです。伝票や明細書をもとにレセプトを作成し、確認、そして健康保険組合等に提出するのがレセプト業務です。

わかりやすく1万円の診療だと仮定しましょう。すると3割負担であれば患者さんは3,000円を支払います。医療機関は残りの7,000円を健康保険に請求するわけです。

ざっくり言えば病院の報酬7割は、このレセプトにより手続きされ入金されるのですから、医療機関としては運営を支える大切な業務のひとつです。

医療事務と一般事務の違い

一般事務と医療事務の一番大きな違いは「レセプト業務」「クラーク業務」といった医療機関ならではの事務処理を行う点です。

レセプト業務もそうですが、他にもカルテ整理や小さな病院であれば、患者さんの付添から電話での問い合わせ、時には看護師さんやドクターの手伝いなどにも対応します。

また、比較的大きな病院では入院施設があり、各病棟で入退院やその他事務手続きを担うクラーク業務があります。

診療報酬点数の計算やカルテの扱いなど、医療事務には独自の業務はありますが、特に国家試験のようなものはありません。しかし、民間資格はたくさんあります。

一般事務(総務事務)との違いを詳しく知りたい方は、以下の総務事務の仕事内容の記事と比較してみるとわかりやすいでしょう。

医療事務の仕事に必要なスキル

医療事務として必要な主なスキルは以下の3つです。

  • レセプト業務
  • 基礎的なパソコンスキル
  • コミュニケーション力

【レセプト業務】

レセプト業務は専用のソフト「レセプトコンピュータ」を使って報酬計算等をします。

さほど難しくはなく、カルテや伝票に従って入力していくのが基本です。ただし、正確さは大切になります。

【基礎的なパソコンスキル】

レセプト専門、受付と会計専門と業務が細分化されている場合はいいのですが、医療事務でも企業でいえば総務や人事といった業務を兼務しているところは多くあります。

この場合には一般的なパソコンスキルがあったほうがいいですね。

【コミュニケーション力】

多くの場合、受付や患者さんへの対応も仕事のひとつとなります。不安や心配を抱えている患者さんをリラックスさせたり、安心させたりする会話力も大切なスキルです。

また、病院運営という面では現場の看護師さんやお医者さん、その他の医療従事者の方々との接点も多くあるため、円滑に業務を進めるためにもコミュニケーション能力は重要とされています。

医療事務の仕事に向いている人・向いていない人の特徴

向いている人 向いていない人
  • 几帳面な人
  • 数字に強い人
  • 気配りのできる人
  • コミュニケーション能力の高い人
  • 社交性のある人
  • クリエィティブな仕事をしたい
  • ひとりでできる業務がいい
  • 数字やデータ入力が苦手な人

医療事務の基本はレセプト業務をはじめとする、会計関係です。数字に強く、正確に入力ができる集中力のある人が向いています。同時に、受付や患者さん対応もすることが多いので、気配りができ会話力があるタイプは重宝されます。

何かをイチから作り上げる、創造性のある仕事とは違うので、クリエイティブ関連の仕事がしたい人には向いていません。

 

医療事務の具体的な仕事内容をインタビューしました!

医療事務の具体的な仕事内容

編集部 石崎

ここからは、実際に医療事務として働いている3人をご紹介します。

① 1日のスケジュール
② 残業
③ やりがいや厳しさについて

派遣社員、正社員、パートでのリアルな働き方をぜひ参考にしてください。

地元の眼科病院で医療事務として働くOさんの仕事内容

① 1日のスケジュール

8:30 開院 受付対応
会計 カルテの出し入れ 患者さん対応
電話対応など
9:00 開院 受付対応
13:00 昼休み(30分くらい遅くなるのはよくある)
*水曜・土曜は午前のみ
14:00 開院 午前中と同じく受付対応が中心
15:00 午後はパートさんがもうひとり来るので
主にレセプト業務を担当
17:00 病院は19:00までだが先に帰宅
午後のパートさんは最後まで担当  
▼Oさん主な仕事
  • 受付
  • カルテ整理
  • 会計
  • レセプト業務

② 残業

インタビュアー インタビュアー

残業はありますか?

患者さんが多い午前中は残業ではありませんが、昼休憩が短くなるのは日常茶飯事です。

レセプトの提出が毎月10日なので、その1週間前くらいは状況に応じて残業もあります。

Oさん

③ やりがいや厳しさについて

インタビュアー インタビュアー

やりがいであったり、大変なことについてお聞きしたいです

変則的に土曜日も含めて週3〜4日パートで仕事しています。

医療事務の資格は持っていませんが、結婚前までは診療所で働いており、レセプト業務も行えるため、一般的な販売員や事務職よりは時給もいい方だと思います。

患者さんが多い時はたまに昼ご飯がとれないようなこともありますね。

地域の眼科は高齢者の方が多いため、窓口でも説明がどうしても長くなったり、何度か同じことを聞かれたりで、患者さん対応に時間がかかります。

Oさん

 

インタビュアー インタビュアー

なるほど、結構大変なんですね...

とはいえ地元の病院だからこそ、窓口対応を丁寧にすることで「親切な眼科」と評判もあがります。

特に私を気に入って下さる患者さんもいて、院長にも「やめないでよ」と言われるのは、やはり嬉しいですし、やりがいもあります。

小学校低学年の子どもがいますが、行事や体調不良などでも院長先生が融通をきかせてくれて休みを取りやすいのもありがたいところです。

Oさん

医療法人グループ系列総合病院勤務、Nさんの仕事内容

① 1日のスケジュール

8:00 8:30が規定ですが大抵早めに出社し、前日の入金等を確認
9:00 他の事務員たちと打ち合わせ
新規雇用の看護師さんたちの事務手続きについて部下に確認など
10:00 グループ系列の他病院の電子カルテ導入プロジェクトの指導
12:00 お昼
12:45 地域医療連携室を兼務しているのでそちらの業務
担当医師・副院長とミーティング
14:00 設備管理の対応
(病棟の修繕など)
15:30 レセプト業務の確認作業
17:00 院長に病床稼働率に関して報告
人事管理等についての話し合い
18:00 出勤の確認
19:00 退社
▼Nさん主な仕事
  • 病院全体の入出金の管理
  • 人事の業務
  • 地域医療連携室の運営
  • 設備や施設の管理
  • その他病院運営に関わる雑事全般

② 残業

インタビュアー インタビュアー

残業はありましたか?

毎日1〜2時間ほどありました。

Nさん

③ やりがいや厳しさについて

インタビュアー インタビュアー

大変だったこととか、何かありますか?

前職では個人病院(中規模)の事務次長でした。家族経営の病院で、事務長は娘婿。

この人と折り合いが悪い上に、仕事はあまりしないのに偉そうにするのが大きなストレスでした。

また、家族経営の病院で事務長が身内だと席があくことはないわけで将来性にも疑問があり、転職を決意しました。

Nさん

 

インタビュアー インタビュアー

なるほど。逆にやりがいだったこととか何かあったりしますか?

現在は総合病院のほか、介護施設や療養型病院などエリアで5つの医療機関を持つ医療法人グループで働いています。事務センターがあり、そこで半年ほど研修した後に、グループのひとつである総合病院の事務長になりました。

年収も20%ほどアップし、実績を残せば本部の事務センター長を狙うこともできるのでやりがいはあります

地域医療連携室にも携わり、他の病院の事務長さんたちとの接点も増えて、いろいろと勉強させて頂いています。

もともと医療事務としてキャリアをスタートし、女性職員も多い中で地道に実績をつけ、転職によって病院運営にも関われるようになれました。患者さんとの接点はほとんどありませんが、大切な医療を支える事務の責任者として、日々、より良い医療環境をめざして奮闘しております。

Nさん

整形外科病院で医療事務として働くEさんの仕事内容

① 1日のスケジュール

9:00 担当者と簡単な打ち合わせ
9:30 事務室にてレセプト業務
11:00 入院する患者さんのご家族に手続きや持ち物等の説明対応
12:00 お昼
13:00 地域包括ケア病床の在宅復帰支援計画の事務手続き
15:00 退院の事務手続き・会計作業
16:30 備品の発注
看護師さんに呼ばれてノートPCの使い方を説明
17:30 退社
▼Eさん主な仕事
  • レセプト業務
  • クラーク業務
  • 備品管理や設備管理

② 残業

インタビュアー インタビュアー

残業はありますか?

残業は基本的にありません。

Eさん

③ やりがいや厳しさについて

インタビュアー インタビュアー

業務の様子とか、やりがいについて教えていただけますか?

地域では整形外科としてはかなり大きな病院で、手術も行います。またリハビリ科や地域包括ケア病床もあり、ソーシャルワーカーさんなども働いています。

そのため、事務手続きも広範囲にわたりますが、派遣社員ふたりで基本的な事務作業をすべてこなしています。かなり忙しいですね。看護師さんも人手不足なので、病棟での在庫確認や備品補充なども行います。

ただ、受付は別の人がいて、事務は事務室での作業なので電話対応などに時間を割かれることがないのが助かりますね。

ケガをした女性が無事に退院となった時、お迎えにきていた小学生のお子さんに「お母さんがうちに帰ってくる!ありがとうね!」と言われたときはとても嬉しかったです。

私がケガを治したわけでもお世話をしたわけでもありませんが、患者さんがすっかり良くなって笑顔をみせながら、退院の手続きをしているときが一番やりがいというか、この仕事をしていてよかったと思う瞬間です。

Eさん

医療事務の仕事の将来性について

編集部 石崎

ここでは医療事務の将来性について紹介します!

医療事務自体が専門的な領域になるため、一般的には他の業界・業種へのキャリアチェンジは少ない職種です。

病院や医療機関では必ず医療事務を行う人が必要です。

正社員だけでなく、パートや月初め〜10日まで(レセプト提出の期限前後)、午前中のみ・午後のみ、などさまざまな働き方ができるため、ライフスタイルが変化しやすい女性にとっても将来にわたって仕事にできる職種と言えるでしょう。

医療事務は病院全体の運営に携わる役職へキャリアアップ

医療事務のステップアップ例
  • 大規模病院等へ
  • 中〜大規模病院で総務の仕事にも携わる
  • 事務長へ

医療事務はキャリアチェンジよりも、医療事務から病院全体の経営や運営に携わる事務長へとステップアップするキャリアパスを描くケースが多いですね。

基本的には受付対応やレセプト業務を行いますが、中規模以上の病院ともなるといわば企業と同じで、人事や総務といった業務も必要となるため、こうした業務を任されることもよくあります。キャリアアップでは、最終的に事務長を目指すことになるでしょう。

病院によっては事務長は院長と同じくらい重要なポジションとみなされ、力もあり、高い年収を得られることも少なくありません。

事務長を望まなくても、人事の採用や広報的な仕事も引き受けることで、医療機関にとっては、なくてはならない人材となり、非常に良い待遇で雇用されることもよくあります。

他には病院の立ち上げを担う会社で事務の業務を行う、病棟でのベッドコントロール(入退院)などの経験をつんで病棟建て替えなど大規模なプロジェクトに携わるといったキャリアアップも選択肢のひとつです。

医療事務として独立は難しい 

▼医療事務として独立する難易度
独立 ★☆☆☆☆

医療事務として独立し、たとえば事務所を構えるというのは難しいでしょう。

しかし、いくつかの比較的規模が小さな病院と契約し、レセプト業務だけを担うようなフリーランスに近い形で働くことは可能です。

転職はしやすい

▼医療事務として転職する難易度
転職 ★★★★☆

全国に医療機関は多いので、転職はしやすいでしょう。

特に都市部は総合病院から、開業している眼科、皮膚科、美容外科といったように、さまざまな医療施設があるため、転職はとてもしやすいです。

一方で過疎地などでは、そもそも医療施設が少ないので、多少は転職の幅が狭くなる面はあるでしょう。

主な転職先
  • 医療事務
  • レセプト業務や資金繰りといった業務を任される
  • 人事・総務の範疇での業務も行う
  • 事務長職へ
  • グループ法人などの医事系幹部へ

転職によって、少しずつキャリアアップさせていくことで、より高い年収を得られます。

民間資格を取ると収入が増える可能性が高い

国家試験ではないとはいえ、有利になる医療事務の資格はあります。

有利になる3つの資格
  • 医療事務資格
  • メディカルクラーク(医療事務技能審査試験)
  • 診療報酬請求事務能力検定試験

上記のような民間資格を得ることで収入が増える可能性はあります。

また具体的なスキルとは別ですが、経験が豊富であったり、院内全体を把握し事務的な業務を滞りなく進められる人材は病院側としても手放したくないために収入アップにつながる、あるいは転職でより良い待遇で迎え入れられるケースは多くあります。