元・DTPオペレーター兼デザイナーの編集部 白崎が解説します。
この記事では「DTPオペレーター」という仕事・職業について解説をしています。
私のキャリアは、デザイン専門学校でDTP専攻学科を卒業。その後、DTPオペレーター兼デザイナーとして就職し、1年半後にWEBへ転向しました。現在はWEBディレクターとしてキャリアを積んでいます。
今はWEBコンテンツの制作が主な業務ですが、元々学んできたDTP・紙媒体のデザインのスキルがあってよかった!と思うことばかりで、将来的には紙媒体だけでなくWEBを目指す人の第一歩としても良い職業だと思います。
初めに:DTPオペレーターはキャリアアップ前提で目指そう
DTPオペレーターを目指すにあたって、先に知っておくと良いことが一つあります。
それは、似ている他の職業と比較して平均年収が低めであるということです。
例えば30代の平均年収で比較してみると以下の通りです。
DTPオペレーター:平均年収393万円
グラフィックデザイナー:平均年収395万
WEBデザイナー:平均年収550万円
DTPオペレーターは紙媒体の制作の中でも下流工程での仕事になるため、正直に言ってしまうとアシスタントに近い職種です。
仕事内容もマニュアルに沿った業務が多いため、年収アップを狙うならば、オペレーション以外のスキルが必要になってきます。業界に入る初めの職業としては良いですが、キャリアアップ前提の職業です。
「DTPオペレーターはやめとけ!」という声を聞いたことがありますが、年収の伸び悩みが理由だと思います。
ですが、デザイナーに比べると未経験でも採用の望みがある職業なので、未経験からデザイン・出版業界を目指すならば一番初めのステップにDTPオペレーターを選択するのは良い選択だと思います。
では、早速お仕事内容からキャリアアップ・向いている人・スキルセットなどについて解説していきます。
DTPオペレーターのお仕事は、印刷物のデータや仕上げを担当する職業
DTPオペレーターとは、印刷物のデータ化や仕上げを担当する職業です。
扱う印刷物は様々ですが、例えばこのようなものを作る工程の一部を担当します。
- 書籍
- 雑誌等
- 小冊子やパンフレット
- チラシ
- カタログ
- 新聞
- 紙の文房具屋グッズ
- 様々なパッケージ
日常生活に触れる「紙」を考えると本当にたくさんのものがあると思いますが、それら全てでDTPや印刷が関わっています。
「DTP」は、Desk Top Publishing の略
DTPとは、DeskTopPublishingの略で直訳すると「デスクトップで出版する」となります。簡単にいうと、印刷データをパソコン上で作ることを指します。
今の時代はパソコンでデータ作るのが当たり前という感覚ですが、古くは活版印刷といって、文字のスタンプを1文字ずつ並べて新聞や書籍を作っていました。
↓これが活版印刷で使われる活字たち、これを1つずつ手作業で並べて新聞を作っていました。
写真引用:Wikipediaより
この文字を組み、誌面を作ることを組版というのですが、デジタル化してDTPとなった今でも、データを作っていくことを組版と呼んでいます。
印刷物ができる過程と担当職種
書籍や雑誌を作っていく工程は以下の通りです。DTPオペレーターは最後のデータ作成や組版を主に担当します。
あとで詳しく解説しますが、新聞社や出版社の場合は組版やデザインに関わることも多く、印刷会社となると、印刷用データのチェック・対応の仕事が多いです。
どういった会社に就職するかでも、仕事内容が大きく変わるのがDTPオペレーターの特徴の一つです。
- ライター・作家・記者から上がってきた原稿の整理
- デザイナーやディレクターからの組版指示書の確認
- 指示書をもとにした組版
- 図版・表組等の作成
- 印刷物に配置する写真の補正や加工
- 他者が入稿したデータのチェック・修正
- 色校正
- チラシなどのリニューアルや修正
私自身、DTPに関わる前は「印刷はデータを送るだけ」だと思っていましたが、家庭用のプリンターで印刷するのと違い、製品として印刷するためには、様々なルールを遵守したデータ作成をすることが必要です。
業務用のプリンターではPostscript(ポストスクリプト)というプログラミング言語が使われています。印刷データはプログラミングでできていることを考えると、様々なルールがあることもなんとなくイメージが湧くと思います。(とはいえ、私たちがプログラミングするわけではありません。)
印刷物の完成までには多くの時間と工程があります。私も著書を出していますが、1冊の本を作るのに企画から発売まで3〜4ヶ月ほどかかっています。
一方、同じコンテンツの制作でもWEBコンテンツは少人数・短期間でも制作できます。実際にこの記事は私一人で、10時間程度で完成させています。
DTPオペレーターとDTPデザイナーの違い
DTPオペレーターは、指示やレイアウトに従ってテキストを組み、必要な画像や写真を補正・加工し、組み込むのが仕事です。
一方でDTPデザイナーは、レイアウトそのものを考えたり、全体のデザインを決めます。
しかし両者の領域は曖昧で、ざっくりした指示のもと、DTPオペレーターが自分でデザインしパンフレットや販促物を制作することも少なくありません。
一方で文字の詰めから行間まで細かい指定があり、きっちりと指示どおりに文字を組むことも多くあります。
エディトリアルデザイナー・グラフィックデザイナーの違い
また、似たような職種にエディトリアルデザイナーとグラフィックデザイナーがあります。
エディトリアルデザイナーは、見出しや本文の書体や文字サイズ、見出しなどのデザインを担当し、雑誌や書籍など「文字のプロ」です。
グラフィックデザイナーはイラストや写真も含めて全体のイメージを担当します。
本で言うと、表紙ビジュアルはグラフィックデザイナーの担当領域で、見出しや目次など本文をエディトリアルデザイナーが担当するイメージです。
ただ、実際の業務としてはグラフィックもエディトリアルもDTPも兼任することが多くあり、デザイナーかオペレーターかの違いの方がしっくりきます。
DTPオペレーターの将来性・キャリアアップについて
初めにDTPオペレーターは年収が伸び悩む可能性があるよ、とお伝えしましたが、その部分を少し深掘りしてお話ししていきます。
一般的に、デザイン制作では以下のような流れで指示が進んでいきます。
DTPオペレーターが次に目指すのは、デザイナーやアートディレクターなどの製作の中心を担う職業が自然です。
そのため、DTPオペレーターを目指すならば、デザイン自体が好きな人の方が向いていると思います。
- DTPデザイナー
- エディトリアルデザイナー
- webデザイナー
- アートディレクター
- webディレクター
正直にお伝えすると、DTPオペレーターはあくまでも操作的な仕事が多いため、直接利益に貢献できる職業とは言い難いです。お給料の面で見ても長い実績があったとしても上限値は高くありません。
特に印刷データのチェックを担当する業務だと、事務職に近い感覚です。この後解説しますが、どういった会社に就職するかでキャリアアップの方向性が大きく変わります。
デザイン知識とスキルを得てDTPオペレーターに指示を出すDTPデザイナー・エディトリアルデザイナーになることがもっとも身近なキャリアアップです。
自己学習におすすめのスキル|DTPオペレーターとの掛け算で希少性ゲット
デザイナーとして活躍するためには、それなりの実務経験とスキルが必要です。
実務経験は時間がかかりますが、日々の仕事の中で積み上がっていくものです。一方で、自分で学べるスキルは選択と自己努力が必要です。
何を学ぶかと考えた時、私のおすすめはこの5つです。
1:マーケティングスキル
→広告代理店などへの転職
2:翻訳スキル
→出版社で編集も兼任
3:デザインスキル
→デザイナー職へキャリアアップ
4:ライティングスキル
→デザインから執筆までこなせるマルチライター
5:HTML、CSSのWEBスキル
→WEBやIT企業での活躍を目指せる
いずれもDTPオペレーターとの掛け算でより貴重なスキルセットを持った人材になれるものです。
会社別:DTPオペレーターの仕事内容・キャリアプラン
ここが一番重要だと思っているポイントです。DTPオペレーターの仕事は、会社の事業内容にって大きく変わってきます。
大きく分類すると以下の4つです。
- 印刷会社
- デザイン事務所
- 出版社
- メーカー・販売・サービス業
もし、DTP業界で働きたい方がいたら、ここの項目をじっくりと読んでから、求人を探して欲しいです。
1:印刷会社勤務のDTPオペレーター
DTPオペレーターの求人でも特に多いのが印刷会社です。デザイン企業が東京周辺に集中しているのに比べ、印刷会社は工場を持っていることが多いため、地方でも求人があるのが特徴です。
さらに、印刷にもいくつかの方式があります。小規模なオンデマンド印刷、大口のオフセット印刷、写真の発色がキレイなグラビア印刷など…。
印刷方式が違えば仕事の規模も変わります。同人誌などを作るような数十部〜数百部の規模か、数十万部必要なパッケージなどの仕事なのか。
どういった方式の印刷が得意な会社か、どういったお客が中心なのかによっても仕事の量や質は変わってきます。
仕事内容:事務に近くデータチェックが主
どのような規模であれ、印刷会社での仕事内容は、お客さんが入稿したデータをより正確に印刷出力するためのデータ調整が主です。
オペレーション(操作やチェック)の仕事が多く、デザインに関わることはあまりありませんが、画像処理や色味のチェックなど細部の調整を担当することもあります。
スキル:ミスせず正確にスピード感のある作業を求められる
決まったルールに沿って正確にデータを作っていく力と、ミスしない注意力が必要です。また、納期も決まっているため、正確さに加えて作業スピードも求められます。
キャリア:印刷データを正確に作れるプロを目指すのがおすすめ
キャリアアップ先としては印刷データ作成のプロを目指す形となるでしょう。印刷はプリンター本体や使うインクになどによって、1つ1つのクセがあります。それらを見極め、お客さんが求める印刷物に仕上がるようにデータを調整するのはまさに職人技で経験が必要です。
基本的にはその会社で長く働く方が向いていると思います。または、スキル・経験を生かし、凸版印刷やDNPなど業界大手への転職を目指しても良いでしょう。
2:デザイン事務所で働くDTPオペレーター
デザイン事務所は首都圏など比較的大きな都市に集中する傾向があるため、都会エリアでの求人が多いです。また、小さな個人事務所も多く、会社の規模は小さいケースが多いです。
また、納期もある仕事なので忙しさに波もあります。
仕事内容:レイアウト・配置・デザインが主
デザイン事務所でのDTPオペレーターはデザイナーのアシスタントです。デザイナーが指定したラフをもとにデータを起こしたり、配置・レイアウトをしたり、デザインの一部を任されることもあります。
例えば、パッケージの素材と大体の配置の指示書をもらい、それをもとにデータを作っていくなどです。
スキル:デザインセンスや雑務をこなせる器用さが欲しい
デザイン事務所で働くのであれば、デザインスキルも必要です。また、上司の指示や意図を汲み取って仕事をしていくスキルも必要なので、マニュアル通りの仕事は少ないです。
小さな個人事務所ではDTPの仕事以外にも、電話対応や来客対応、事務なども併任することがありますので、器用になんでもこなせるタイプの方が向いています。
キャリア:デザイナーとしてのキャリアアップがおすすめ
デザイン事務所で働く場合はデザイナーとしてのキャリアアップが良いです。最終的には今よりも大きなデザイン事務所への転職や、広告代理店などを目指すと、給料のアップにつながります。
また、フリーランスでの独立も目指せますし、WEBデザインのスキルも学べば、ビジュアル寄りのWEBデザイナーも目指せます。
私は小さなデザイン事務所に新卒で入社しましたが、紙媒体だけではなくWEBも扱っているデザイン事務所で、WEBへの転向がスムーズでした。
3:出版社で働くDTPオペレーター
出版業界も東京エリア(文京区)に特に多く、80%が東京だと言われています。そのため、地方では出版社の求人は少ないかもしれません。
また、業界的にも電子書籍が増えてきており、場合によっては電子書籍のデータ作成を兼任することもあります。
仕事内容:組版を中心に図表作成や赤字の修正対応など様々
出版社では雑誌、書籍、ムックなど様々な本を取り扱います。本の場合、ページ数が多いため、仕事の多くは組版やレイアウト、校正、修正、図表などの作成など製作そのものに関わることが多いです。
スキル:文字に対しての知識があるとなおよし
出版社では組版でのデザイン力はもちろん、より文字を扱う職業のため、校正や校閲のスキルがあるとできる範囲が広がります。
また、図表の作成はよりわかりやすく伝えるスキルになるため、自分で考えて表現するスキルが必要です。
デザイン事務所はよりビジュアルやイメージ重視で、右脳的な仕事が多いですが、出版社は言語を扱う左脳的な仕事が多いです。ここの違いも理解して選ぶと良いでしょう。
キャリア:エディトリアルデザインやWEBコンテンツデザインへの転向がおすすめ
出版社でのキャリアアップ・転職先としては、エディトリアルデザイナーやコンテンツメインのWEBデザイナーです。
また、校正や図解が得意ならばディレクションや編集を目指すのもありです。紹介した就職先の中では、一番様々な経験ができるため、キャリアアップの選択肢も多いと言えます。
4:サービス業や販売・メーカー系での仕事
チラシやPOPの作成もDTPオペレータの仕事です。
イメージとしてはデザイン事務所と出版社の中間にあたります。どちらも様々な業種の印刷物を担当しますが、本部で自社商品のDTPをしている場合はジャンルが決まっていますし、より広告の意図が近い印刷物のデザインになるため、よりクオリティを高め、売れるデザインを学べます。
仕事内容:チラシ・メニューなどのレイアウトやデザイン
例えば、飲食店のメニュー、スーパーの特売チラシ、ファッションブランドのカタログなど、自社の本部で印刷物のデザインをしている会社への就職です。
スキル:売れるデザインを学ぶ姿勢が必要
チラシや広告は商品を売るために作るものですので、消費者目線で欲しいと思うデザインかを考えられるスキルが必要です。また、売るために何を伝えるべきかコピーライティングの知識もあると良いです。
キャリア:広告業界でのキャリアアップがおすすめ
売るためのデザインを学べるため、広告デザイン方面でのキャリアアップに向いています。特に直近ではWEB広告のデザインは伸び代が大きく、独立も可能です。
売れるデザインができるデザイナーは非常に価値が高いため、自分の仕事がどのくらい売り上げに貢献できたかを知れる会社を選ぶことをお勧めします。
雑誌広告や印刷物などのデザインをする職はグラフィックデザイナーと呼びます。グラフィックデザイナーについて気になる人は以下の記事を参考にしてください。
DTPオペレーターの具体的な仕事内容をヒアリング
ここからは、実際にDTPオペレーターとして働いている3人をご紹介します。
それぞれ派遣社員、正社員、パートと雇用形態が違う3名にヒアリングをしてきましたので、仕事内容の違いなども参考にしてみてください。
① 1日のスケジュール
② 主な仕事内容
③ 仕事のやりがい・大変なところ
A子さん(28歳・女性・派遣社員)にヒアリング【印刷会社】
① 1日のスケジュール
9:00 | 出社 |
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9:30 | 編集者からのメールや指示の確認 |
10:00 | 組版作業 |
12:00 | お昼 |
13:00 | 戻ってきた直しの修正と校正 |
15:00 | 新規の組版作業・原稿整理 |
18:00 | 退社 |
② 主な仕事内容
ムック本(雑誌形式の単行本)の組版を担当しています。上がってきた原稿をインデザインに流し込みながら、素材写真の加工や色味の補正をしています。ムック本は納期もそこまでキツくないので、基本的に残業は少ないです。
③ 仕事のやりがい・大変なところ
大手出版社の仕事が多いので、自分が制作した本が本屋さんに並んでいるのを見ると「すごい仕事してるなぁ」と実感し、嬉しくやりがいを感じています。
大変な部分は、修正が何度もあることです。例え私のミスではなくとも、納期ギリギリの修正があると焦りやプレッシャーを感じます。
N男さん(34歳・男性・正社員)にヒアリング【DTP制作会社】
① 1日のスケジュール
9:30 | 出社(フレックス)上司と作業の確認 |
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10:00 | 3人で分担している求人情報誌の作業をチェック・組版 |
12:00 | お昼 |
13:00 | タウン誌の組版・レイアウトの確認 |
16:00 | 色校正のチェック・担当者と打ち合わせ |
18:00 | 新規入稿の原稿確認・組版の分担と進行予定を共有 |
20:00 | 退社 |
② 主な仕事内容
タウン誌・求人情報誌の作成のリーダーをしているため、自分が担当している組版以外に部下の仕事のチェックや進行管理などを担当しています。
前職は事務職でしたので、それに比べると繁忙期や納期前は残業が多いなとは感じます。
しかし、クリエイティブな仕事をしている「やりがい」はあるので、あまり苦になりません。
③ 仕事のやりがい・大変なところ
おおまかなレイアウトは決まっていますが、細かなところは任せてもらえているので自分なりのデザインで誌面を作れるのは面白いところです。
求人情報誌を担当しているので、数字など細かな面で間違いがあってはならないので、赤字を修正した後にデータをいじり、それが原因で他の部分のレイアウトが崩れるなどの事故がないようにするのが大変です。
C子さん(35歳・女性・アルバイト)にヒアリング【広告代理店グループ会社】
① 1日のスケジュール
10:00 | 出社 |
---|---|
10:30 | つり革広告制作の手伝い |
12:30 | お昼 |
15:00 | POPの戻しがきたので指示に従い修正 |
16:00 | 退社 |
② 主な仕事内容
販促物制作のアシスタントが主な仕事です。届いた素材や原稿のチェックをしてリードデザイナーにお渡しします。簡単な写真加工や補正、小さい画像はお任せしてもらうこともあります。
子どもを保育園に預けているので残業は基本的にありません。週4日のシフトですが、納期前になると週5日で出勤することもあります。
また、子供が風邪をひいた時など出勤ができない時は在宅勤務にしてもらっていて、働きやすいです。
③ 仕事のやりがい・大変なところ
結婚前はDTPオペレーターとして働いていたので、仕事内容で困ることはあまりありません。
時給は1,300円とあまり高い方ではありませんが、写真のレタッチや赤字の修正、素材の整理などで簡単ですし、残業もなく子育てとの両立ができています。
出版社系列のDTP会社で働いていた時は、何か間違えて印刷まで回ってしまうと大変な損害になるのでプレッシャーがありました。
バイトとして働くにはスキルを活かせるし、場合によっては家に持ち帰って仕事をしても時給計算にいれてくれるリモートワークも認められているので、子どもがいても働きやすいのはありがたいです。
とはいえ、時給が物足りないです。知り合いにDTPオペレーターは派遣のほうが時給がいいよ、と聞いて、ちょっと迷っているところです。
DTPオペレーターを未経験から目指す場合の必要スキル
記事の初めに「DTPオペレーターは未経験でデザイン業界に入りたい人の初めのステップにおすすめ」と書きました。
このパートでは具体的にDTPオペレーターを目指すために学んでおくべきスキルを紹介していきます。
DTPオペレーターとして必要な主なスキルは以下の4つです。
- illustrator(イラストレーター)
- Photoshop(フォトショップ)
- InDesign(インデザイン)
- 印刷工程の知識
このうち、イラストレーター・フォトショップ・インデザインは基本的な操作感が似ているので、まとめて覚えることができます。
必要スキル1:Adobeのグラフィックソフトの操作
DTPではAdobeの「イラストレーター・フォトショップ・インデザイン」はDTPの三種の神器とも言うべきソフトです。この3つの基本操作ができてDTPオペレーター、このソフトでデザインができれば、デザイナーと名乗って良いでしょう。
illustrator/イラストレーター
illustratorは画像の作成やグラフ作成など図表のさくせいで使います。その名の通り、イラストを書くことに特化したソフトです。写真やイラスト、図の多いチラシや見開きのパンフレット、カタログの作成はイラストレーターを使います。illustratorはもっとも使用頻度の高いソフトと言えるでしょう。
Photoshop/フォトショップ
フォトショップは写真の加工ソフトです。写真を明るくしたり、人物の色味を調整したり、写真を合成して幻想的なメインイメージを作ったりします。
DTPオペレーターは色味を補正する業務が多いです。画面上で見る色(RGB/光)と印刷(CMYK/インク)では表現できる色の幅が異なるため、画面上の色味を印刷で再現するための補正が必要なためです。
また、チラシやポスター等の制作でも、切り抜きをしたり、ゴミ取りをするのもよくあります。
InDesign/インデザイン
InDesignは、書籍など文字を中心としたデザインを組むソフトです。
雑誌や書籍など文字が多い制作物では、インデザインで全体を組み、illustratorで作成した画像やPhotoshopで加工した写真をいれて印刷データを完成させます。
たとえ販促物でも、ほとんどが文字が入りますから、DTPオペレーターをめざしているのであれば、InDesignも最低限のスキルを学んでおきましょう。
必要スキル2:印刷工程の基本的な知識
印刷工程の知識や校正については、会社独自のルールも多いため細かい部分は入社してから覚えていけば問題ありません。
ただし、一般的な印刷工程や仕組みなど、書籍や勉強で覚えられる部分は入社してから必ず必要になるため、事前に覚えておくことをおすすめします。
印刷工程の知識
印刷工程の知識は現場でも学べますが、できれば一連の流れは理解しておくとよいでしょう。
他にも「面付・台割・トンボ」といった印刷業界独自の言葉や作業がたくさん出てきます。
仕事をするうちに自然と覚えられるでしょうが印刷物ができあがるまでを解説している書籍などをみておくと良いです
私のお勧めはTOPPANに入っている印刷博物館に行くことです。印刷の歴史をまるっと学ぶことができます。
DTP関連の資格について:100%未経験なら取得もあり
DTPオペレーターの関連資格としては
- DTPエキスパート
- フォトショップクリエイター能力認定
などがあります。
ただ、就職や転職に有利かというと、そこまで有利に働くことはなく、過去の実務経験やポートフォリオの方が重要です。
ただ、デザインやDTPの専門学校を出ておらず、全くの未経験から目指す場合は、資格があることである程度、勉強をしていることの証拠として役立ってくれるかもしれません。
DTPオペレーターに向いている人
DTPは出版・マスコミ業界の一角にあるとはいえ、実は地味な職種です。
基本的にはひとりでデータを作成するのでコツコツと根気よく仕事ができる人が向いています。とはいえ、印刷物はたくさんの人が関わってできていくため、一人だけで仕上げるものではありません。作業同士の連携という点ではコミュニケーション力も必要です。
DTPオペレーターに向いている人 | DTPオペレーターに向いていない人 |
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具体的な求人の探し方について
では、具体的に求人を探していく場合のポイントをまとめていきます。
DTPオペレーターの求人は少なめ、複数の求人サイトに登録しよう
実際に各求人サイトで「DTPオペレーター」で検索し、求人数を調査してみました。
ハローワーク:422件
バイトル:13件
リクナビネクスト:24件
doda:15件
エンゲージ:86件
インディード:456件
全国で見ても、数十件から数百件ととても少ないため、複数の求人サイトに登録しながら横断的に求人を見ていくことをおすすめします。
また、検索をオペレーターから「DTPデザイナー」にすることで対象の求人が広がります。例えば、インディードではオペレーターは456件でしたが、デザイナーでは2122件まで増えます。DTPオペレーターで好みの求人がなければ、DTPデザイナーで検索してみると良いでしょう。
求人の見極め方:どんな制作物を扱っているか
ここまでの解説で、DTPオペレーターはキャリアの第一段階の職種であること、そして会社によって業務内容も違います。
一番見るべきは「どのような制作物に携わるか」です。自分が目指すキャリアにつながっていく制作物に関わっていけるのが良く、そのためには自分が目指すキャリアから考えてみると良いかもしれませんね。
DTP業界での大手企業について
もし大手で働きたいと思うならば、派遣社員の求人を探すのがおすすめです。直接雇用だと中途や新卒採用が多いのですが、派遣社員だと期間は決まっているものの、経験が浅くても応募できる大手の求人があるかもしれません。
- 凸版印刷株式会社
- 大日本印刷会社
- 株式会社カタログハウス
- 集英社
- 小学館
- 講談社
出版社はDTPオペレーターからエディトリアルデザインを学び、編集者へとキャリアをチェンジしながら収入アップが狙えます。
DTPを専門とする制作会社は、大手企業と取引しているかどうかがポイントです。また、会社の規模よりも、働きやすさを重視するといいでしょう。
残業がなく、自由な雰囲気で休みも取りやすい、半分は在宅で半分は出勤やシフトを自分で組めるといったフレキシブルなワークスタイルを実現している会社もあります。
数は多くありませんが、官公庁や大手企業の広報部などで自社内の印刷物を制作するためにDTPオペレーターを募集することもあります。
実際の求人例から見るDTPオペレーターの給与
DTPオペレーターの給料は高くないと言いましたが、実際の求人での金額感を調べた結果を紹介します。
パート・アルバイトの場合 |
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アルバイトやパートの場合は1200円〜1400円程度が多いです。未経験となると1100円スタートが多いです。 |
派遣社員の場合 |
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派遣社員の場合は未経験でも1500円〜1700円程度の時給でした。ただし、イラストレーターとフォトショップが使えることは必須条件のものが多数でした。 |
正社員の場合 |
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月給で見ると20万〜30万、年収で見ると300万〜350万前後の求人が多いです。 中には年収500万円以上の求人もありますが、グラフィックデザインの実務経験や翻訳ができるなどの追加スキルが必要な求人がほとんどでした。 |
まとめ:DTPオペレーターはデザイン業界の入り口の職業
今回は未経験から目指す人や、DTPオペレーターと言う職業を最近知った人に向けて解説をしてきました。
何度も言うようですが、DTPオペレーターはあくまでもアシスタントのポジションです。さらなるやりがいやキャリアアップを目指すのであれば、今の段階でデザイナーや編集、ディレクターを目標にした上で、DTPオペレーターからスタートしてみてください。
私の経験では、1年程度DTPオペレーターとして経験を積めば、印刷周りの基本的な知識やスキルは身につくと思います。そこからデザインスキルなど、もう一歩踏み込んだスキルを身につけていくと、ミライのお仕事も変わっていくかもしれません。