この記事では次のようなことを解説します。
DTPオペレーターのお仕事とは?
DTPオペレーターとは、編集者やデザイナーなどの指示に従い、印刷用のデータを作成する仕事を担当する職業のことです。
パソコン上で作成したデザインと、印刷した完成物をできるだけ近づけるために必要な入稿後の最終チェックを担当することが多く、専門知識が必要です。
DTPオペレーターが担当する印刷物の一覧
- 書籍の組版
- 雑誌等の組版
- 小冊子やパンフレット作成
- 販促物の作成
- カタログ制作
「組版」とは、文字を指示に従い、読みやすいように整えることです。
パソコンがなかった時代の印刷技術は、1文字1文字のハンコを組合せて「版」を作り、新聞などを印刷していました。その名残で「文字を組み版を作る」ことを「組版」と読んでいます。
現在はすべてデジタル化され、専門のソフトで文字や図・イラストを配置して原稿を作っています。
- 原稿の整理
- 指示書の確認と担当者とのやり取り
- 組版
- 図版・表組等の作成
- トレース
- 写真補正・加工
- データ入力と確認
- 簡単な校正
- 赤字の修正(校正直し)
- 色校正
できあがったデータを印刷所に入れるところまでがDTPオペレーターの仕事です。印刷会社によって入稿方法はいろいろあります。
プリンターで印刷するのと違い、印刷用データとしてさまざまなルールがあり、これらを遵守したデータ作成をすることが大切です。
DTPオペレーターとDTPデザイナーの違い
DTPオペレーターは、指示やレイアウトに従ってテキストを組み、必要な画像や写真を補正・加工し、組み込むのが仕事です。
一方でDTPデザイナーは、レイアウトそのものを考えたり、全体のデザインを決めます。
しかし両者の領域は曖昧で、DTPオペレーターがデザインを担当したり、DTPデザイナーが入稿データをチェックすることもあります。
これは勤める会社によって担当領域が変わってきます。例えば、印刷会社であれば、主な仕事は入稿データのチェックになりますし、出版社であれば、組版や図などのデザインを担当します。
また、似たような職種にエディトリアルデザイナーがあります。エディトリアルデザイナーは書籍、新聞、雑誌などの誌面に特化したデザイナーで、フォントを細かく選んだり、文字サイズや字間を細かく調整したり、文字のスペシャリストでもあります。
- 編集者・クライアント
- DTPデザイナー(全体のレイアウト決め・指示)
エディトリアルデザイナー - DTPオペレーター(指示どおりに印刷データを実際に作成)
DTPオペレーターの将来性について

DTPオペレーターの気になる将来性についてお伝えします!
DTPオペレーターは次の段階として、DTPデザイナーやエディトリアルデザイナー、印刷工程に入るまでのディレクションを行うディレクターやチームリーダーを目指します。
キャリアアップ
- DTPオペレーター
- DTPデザイナー・エディトリアルデザイナー
- webデザイナー・電子書籍(EPUB)・ HTML変換等のスキル
DTPオペレーターとしては、実績が長くなっても大きな展開が望めないところはあります。
デザイン知識とスキルを得てDTPオペレーターに指示を出すDTPデザイナー・エディトリアルデザイナーになることがもっとも身近なキャリアアップです。
さらにWEB・ITのスキルを身に付けるとキャリアアップと共に収入アップが望めます。
DTPで制作したものをWEBでも使用するケースは特に増えているため、コーディングやHTML/CSSといったスキルがあると大変有利です。
例としてあげると電子書籍の作成、また印刷して配布するチラシをECサイトでも別の形で使うといったケースです。
独立や転職の難易度
独立 | ★★☆☆☆ |
---|---|
転職 | ★★★★☆ |
DTPオペレーターとして独立は難しい
- 外注の案件が少ない
- PCの他に専門的なソフトやフォントが必要
- 内勤を希望する会社が多い
DTPオペレーターとしてフリーランスで独立する、あるいは起業するのはなかなか厳しいです。
外注の仕事はありますが、単価が高いものが少ないため、それだけで生計を立てるのが難しいのが現実です。
また、内容によりますが内勤で作業するのを基本とすることも多く、使うソフトやフォントの問題で業務委託ができないこともよくあります。
比較的、案件として外注しやすいのはチラシ等の制作ですが、単価が低く、高いものは独自のデザイン力が求められます。
フリーランスで独立しながら単発の仕事を受注し、ほかに派遣やアルバイトの形で印刷会社や代理店等に勤務する「兼業」のケースが多いですね。
DTPオペレーターは転職しやすい
- 現場は人材不足
- 転職先は印刷会社だけでなく多岐にわたる
一方、転職は比較的スムーズです。
DTPオペレーターは常に人材を募集しています。
印刷会社や出版社、編集プロダクションといった出版業界のほか、広告代理店系やデザイン事務所など、さまざまな企業での募集があるのため、転職先を見つけやすいです。
収入アップ
DTPオペレーターとしては、年数を経てもあまり収入アップにつながらない面があります。
ただ、最近はデザインはできても印刷の知識を充分にもったDTPオペレーターは少なくなっているために、原稿の入稿から印刷、製本までの流れを知るオペレーターは重宝され、収入面でも優遇される可能性は高いと言えます。
転職で収入アップを狙うなら、組版ルールや印刷工程をきちんと理解していることや、校正もできるなどをアピールすると有利です。
あるいは、デザインもできる、コーディングもできるといった付加価値のあるスキルを持つことで、収入アップが期待できます。
印刷会社などでは、ディレクションもできるようになれば一定以上の収入アップも望めます。
スキルによる収入差について
illustrator・Photoshop・InDesignはDTPオペレーターの基本スキルです。
また、校正記号がわかること、印刷用データの基本知識を持っていることも必要です。
DTPエキスパートの資格は持っていると有利ですが、収入差に直接結びつくかは微妙なところです。
書籍の組版などではエキスパート資格は有利ですが、販促物などを多く作成しているところではデザイン能力が重視されます。
また、外国語ができ、英語や中国語の組版ができると収入が大きく上がります。
DTPオペレーターの具体的な仕事内容

ここからは、実際にDTPオペレーターとして働いている3人をご紹介します。
- 1日のスケジュール
- 残業
- やりがいや厳しさについて
派遣社員、正社員、パートでのリアルな働き方をぜひ参考にしてください。
印刷会社で派遣社員として働くA子さんの1日
A子さん(28歳・女性・派遣社員)印刷会社勤務
9:00 | 出社 |
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9:30 | 編集者からのメールや指示の確認 |
10:00 | 組版作業 |
12:00 | お昼 |
13:00 | 戻ってきた直しの修正と校正 |
15:00 | 新規の組版作業・原稿整理 |
18:00 | 退社 |
主な仕事
- ムック本の組版
- 写真加工や補正
残業
残業はありましたか?
基本的に少ないです。
ただし納期に間に合わないときは昼休みを削ったり、早めに出社して対応することもあります。
やりがいや厳しさについて
やりがいや、やっていて大変だなと思ったことはありましたか?
大手出版社の仕事が多いので、自分が制作した本が本屋さんに並んでいるのを見ると「すごい仕事してるなぁ」と実感します。
大変なのは担当者によっては、追加で入れる写真が入ってきたり、修正が何度もあることです。
こちらのミスでないのに、納期に間に合わせてと無理難題を言う担当者がひとりいて、その人の仕事がくるとウンザリします。
DTP制作会社で正社員として働くN男さんの1日
N男さん(34歳・男性・正社員)DTP制作会社勤務
9:30 | 出社(フレックス)上司と作業の確認 |
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10:00 | 3人で分担している求人情報誌の作業をチェック・組版 |
12:00 | お昼 |
13:00 | タウン誌の組版・レイアウトの確認 |
16:00 | 色校正のチェック・担当者と打ち合わせ |
18:00 | 新規入稿の原稿確認・組版の分担と進行予定を共有 |
20:00 | 退社 |
主な仕事
- タウン誌・求人情報誌の作成
- 担当する求人情報誌は3人で行っているがリーダーなので、他のふたりへの作業分担や進行管理
残業
残業はありましたか?
前職は事務職でしたので、それに比べると繁忙期や納期前は残業が多いなとは感じます。
しかし、クリエイティブな仕事をしている「やりがい」はあるので、あまり苦になりません。
やりがいや厳しさについて
面白みややりがい、逆に大変だったことを教えてください!
おおまかなレイアウトは決まっていますが、細かなところは任せてもらえているので自分なりのデザインで誌面を作れるのは面白いところです。
求人情報誌を担当しているので、数字など細かな面で間違いがあってはならないので、赤字を修正した後にデータをいじり、それが原因で他の部分のレイアウトが崩れるなどの事故がないようにするのが大変です。
広告代理店グループ会社で週4日アルバイトとして働くC子さんの1日
C子さん(35歳・女性・アルバイト)広告代理店グループ会社
10:00 | 出社 |
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10:30 | つり革広告制作の手伝い |
12:30 | お昼 |
15:00 | POPの戻しがきたので指示に従い修正 |
16:00 | 退社 |
主な仕事
- 販促物の制作
- 写真加工や補正
- たまにグラフィック作成もある
残業
残業はありましたか?
子どもを保育園に預けているので残業は基本的になし。
一応、週4日にしていますが、忙しくなるとプラス1日とか、家にMacがあるので持ち帰ってできる作業は行います。
この場合には在宅勤務として時給換算してもらっています。
やりがいや厳しさについて
やりがいや大変だったことなどについて教えてください!
もともと結婚前までDTPオペレーターをしていました。
小さな会社ですが、広告代理店のグループ会社で仕事の内容は良いと思います。
時給は1,300円とあまり高い方ではありませんが、写真のレタッチや赤字の修正、素材の整理などで簡単です。
出版社系列のDTP会社で働いていた時は、何か間違えて印刷まで回ってしまうと大変な損害になるので、非常に神経を遣いました。
バイトとして働くにはスキルを活かせるし、場合によっては家に持ち帰って仕事をしても時給計算にいれてくれるリモートワークも認められているので、子どもがいても働きやすいのはありがたいです。
とはいえ、時給が物足りないです。知り合いにDTPオペレーターは派遣のほうが時給がいいよ、と聞いて、ちょっと迷っているところです。
DTPオペレーターは未経験からでも目指せる?必要スキルは?

DTPオペレーターに必要なスキルや未経験でも目指せるかについて説明します。
DTPオペレーターは未経験でもなれる
DTPオペレーターはillustrator・Photoshopの基本的な操作ができ、できればInDesignのスキルもあれば、未経験でも採用してくれる企業はあります。
印刷工程の知識や校正については、現場で覚えられるからです。
ただし、上記3つのスキル、最低でもillustrator・Photoshopの基本スキルを持っていることを条件としている会社がほとんどです。
あえて「独自のスタイルを持つベテランのDTPオペレーターよりも、ごくごく基礎的なスキルさえあれば、会社のやり方をイチから教えて覚えてもらうから初めての人がよい」と未経験者を採用する会社もあります。
必要なスキル
DTPオペレーターとして必要な主なスキルは以下の4つです。
- illustrator
- Photoshop
- InDesign
- 印刷工程の知識
illustrator/イラストレーター
DTPではAdobeの「イラストレーター・フォトショップ・インデザイン」はDTPの三種の神器とも言うべきソフトで、これらのスキルを学校などで学ぶことが必要です。
特にillustratorは画像の作成やグラフ作成などグラフィックで使用する他に、illustratorだけで文字も組んでチラシや見開きのパンフレットを制作することもよくあります。illustratorはもっとも使用頻度の高いソフトと言えるでしょう。
Photoshop/フォトショップ
フォトショップは写真の加工ソフトです。
印刷では通常のプリントとは精度が大きく違うため、写真の補正や加工は日常的な作業です。
また、チラシやポスター等の制作でも、切り抜きをしたり、ゴミ取りをするのもよくあります。
InDesign/インデザイン
InDesignは、文字を組むレイアウトのソフトです。
雑誌や書籍など文字が多い制作物では、インデザインで全体を組み、illustratorで作成した画像やPhotoshopで加工した写真をいれて印刷データを完成させます。
たとえ販促物でも、ほとんどが文字が入りますから、DTPオペレーターをめざしているのであれば、InDesignも最低限のスキルを学んでおきましょう。
印刷工程の知識
印刷工程の知識は現場でも学べますが、できれば一連の流れは理解しておくとよいでしょう。
他にも「面付・台割・トンボ」といった印刷業界独自の言葉や作業がたくさん出てきます。
仕事をするうちに自然と覚えられるでしょうが印刷物ができあがるまでを解説している書籍を読んでおくことをおすすめします。
DTPオペレーターに向いている人

向いてる人と向いてない人の特徴をまとめました!
DTPオペレーターに向いている人 | DTPオペレーターに向いていない人 |
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DTPは出版・マスコミ業界の一角にあるとはいえ、実は地味な職種です。
基本的にはひとりでデータを作成するのでコツコツと根気よく仕事ができる人が向いています。
とはいえ、作成したデータを別の人が修正したり、何人かで分担するケースもよくあり、ある程度のコミュニケーション能力は必要です。
それでも、多くの人と交渉するような場面は少ないので、少々人付き合いが苦手な人でも、制作に自信があるのなら問題ありません。
逆にたくさんの人と関わりたい、じっと机やモニターに向かうのがきついという人には向いていません。
実際に転職する場合に知っておくと良いこと

実際にDTPオペレーターとして転職するときに、知っておきたいことをまとめました。
どんな制作物を扱っているか
DTPの範囲はたいへん広いです。
書籍の組版は文字組が中心で、InDesignをしっかり使えて組版ルールを理解し、丁寧な仕事ができると評価されます。
また自分が作成した書籍を本屋さんで手にとる喜びがあります。チラシや広告などの華やかな世界でデザイン力もつけることができます。
旅行会社のパンフレットだけを作成しているところもあれば、医学など専門書を作成する、ポスターや販促物、パッケージの作成、と、印刷物はいろいろとあります。
出版業界でなくても大手企業が社内の印刷物制作を行うためにDTPオペレーターの実績がある人を採用することもよくあります。この場合は、企業によっては高い年収を得られるケースもあります。
転職先で主にどんな印刷物を扱っているかは必要なスキルや今後のキャリアアップにも影響するので、きちんと確認しておきましょう。
DTPオペレーターが活躍できる会社とは
- 凸版印刷株式会社
- 大日本印刷会社
- 株式会社カタログハウス
安定性を求めるなら大手の印刷会社ですね。DTPオペレーターからディレクションへと社内でのステップアップもしやすいメリットがあります。
また、最近は出版社が社内である程度の制作を行うところも増えています。
出版社はDTPオペレーターからエディトリアルデザインを学び、編集者へとキャリアをチェンジしながら収入アップが狙えます。
DTPを専門とする制作会社は大手というよりは、大手と取引しているかどうかがポイントです。また、会社の規模よりも、働きやすさを重視するといいでしょう。
残業がなく、自由な雰囲気で休みも取りやすい、半分は在宅で半分は出勤やシフトを自分で組めるといったフレキシブルなワークスタイルを実現している会社もあります。
数は多くありませんが、官公庁や大手企業の広報部などで自社内の印刷物を制作するためにDTPオペレーターを募集することもあります。
安定して高収入が得られるために人気のある転職先です。
DTPオペレーターに転職するなら
おすすめはエージェントの利用です。
- 会社内部の残業情報などを教えてもらえる
- 入社後のギャップが少ない
- 履歴書の書き方や面接対策のサポートをしてくれる
求人サイトでもDTPオペレーターの募集は多く見かけます。ただ、求人サイトの情報だけでは、内部の状況がわかりづらいのがネックです。
特に残業時間やシフト体制、休みがとれるか、残業代は?といった、会社に直接たずねづらいところを、エージェントなら事前に調べてもらえるのがメリットですね。
入社にあたっても、エージェントが間に入ってくれるので、契約内容の確認も一緒に行えますし、面接の練習も行ってくれるなどサポートが充実しています。
エージェントを利用しながら、ハローワークなどで時給や年収を一度確認してみることも良い方法です。