派遣切り(雇い止め)って違法じゃないの?派遣切りにされた場合にすぐにやるべき4つのこと

派遣で働いている人の中で、「派遣切り」という言葉を聞いたことはありませんか?

契約期間内に派遣先から契約終了を言い渡され、派遣元会社からも解雇(次の仕事の紹介がない)状態のことです。雇い止め(契約満了時に更新されず、契約が終了すること)の意味でも使われています。

>>派遣切りされないための対処法

「切る」という文字通り、何か不安感があおられる言葉ですし、いきなり派遣を辞めさせられちゃうのではないか、そんな不安を持っている人も多いようです。

この記事では、そんな不安を解消すべく「派遣切り」にあった時の対処法や、そもそも派遣切りされないための対策について紹介しています。

「派遣切り」って違法じゃないの?

派遣の契約を途中終了させる派遣切りは違法?

派遣社員の契約期間中に雇用を打ち切ることは、法律上「やむを得ない事情(経営不振など)がある場合に限って、30日前までに通告またはその間の給与を支払えば満了前に契約終了できる」となっています。

要するに会社が倒産すれば、当然ながら契約は継続できないということ。あるいは明らかに経営が悪化していて、給料を払えないような状況であれば、約1ヶ月前に契約が終了することを伝えるか、その分の給料を払えばいわゆる派遣切りは違法ではありません。

さらに派遣の場合、通常は3ヶ月から6ヶ月ごとに契約を更新しながら継続して働くと思いますが、契約が満了の時期に更新しないのは特に問題はありません。

「雇い止め」も違法ではない

よくあるトラブルが「契約更新は3ヶ月ごとになっているけど、仕事覚えてもらって長く働いてくれたらありがたいんだけどね」と言われ長期のつもりでいたら、3回目の更新時に「今回は悪いけど更新しないよ」と通達されるようなケースです。

「え? 長く働けるような言い方だったのに」と反論しても、法律上は基本的に問題ありません。

「契約更新する」と契約書に明記されているわけではなく、言葉だけでの口約束の場合は、言った言わないの水掛け論となりトラブルへと発展するケースが少なからずあります。

雇い止め(契約満了による更新なし)は個別の事情によって、異議を唱えることができるケースもあります。状況にもよるので、雇い止めに関して疑問に思うことがあれば、派遣元会社に相談してください。派遣元会社も今ひとつハッキリしない場合には、ハローワーク等の相談窓口に行きましょう。

派遣切り(雇い止め)にあったら、すぐにやるべき4つのこと

派遣切りされたらすぐにやるべき4つのこと

残念ですが、法的に問題がない時は、派遣切りを受け入れるしかありません。早めに次の収入を得る方法を探すべきです。

次の4つをすぐに行いましょう。

では、派遣切りされたら「すぐにやるべき4つのこと」を詳しく説明します。

(1)派遣元の会社に次の仕事について相談

「次の更新をしない」とわかったら、すぐに次の仕事について派遣元会社に相談しましょう。まずは派遣元会社に連絡をするのが最初にやることです。

  • 受け身ではなく積極的に行動する
  • 現在の契約満了前に次の仕事を紹介してもらう
  • 妥協できない要望や条件をしっかり伝える

もっとも、こちらは一生懸命に動いているのに、派遣元があまり積極的でない場合もあります。派遣社員は派遣元会社が仕事を見つけてきてくれない限り、次の仕事に就けません。

担当者が熱心でない、派遣元会社が要望に近い条件の求人を紹介してくれないなどの場合は、派遣元だけに頼るのは早めに諦めた方が良いです。そして他の手段で仕事を得ることを本気で考えていきましょう。

(2)他の派遣会社2〜3社へ登録

現在の派遣元会社で仕事を探してもらいつつ、さらに多くの求人情報を得るためにも、他の派遣会社への登録をするのがお勧めです。

複数の派遣会社に登録することで、ブランクなく次の仕事に就ける可能性が高くなります。ひとつの派遣元会社で紹介できる求人数はそれほど多くはありません。その為、2つから3つの派遣会社に登録するのはよくあることです。

うまくいけば、今より良い条件の仕事に就けるかもしれません。また、複数の派遣会社に一度に登録すれば、それぞれの良し悪しもわかりやすく、比較しながら良い企業を選べます。

>>口コミ評判のよい派遣会社

(3)ハローワーク、転職サービスへ登録

派遣という働き方にこだわりがないなら、ハローワークや転職サービスを使ってみるのも選択肢のひとつです。

転職サービスは、派遣会社と同じように、あなたに仕事を紹介することで企業から手数料をもらい、利益となります。それだけに転職サービスのスタッフも積極的に就活のサポートをします。

派遣切りの不安を抱えることなく働ける、直接雇用を目指すのであれば、これを機会に転職サービスへの登録も検討してください。

(4)雇用保険の加入状況について確認

次の仕事を見つける以外に、もうひとつ大事なポイントがあります。

それは、すぐに次の仕事が見つからなかった時に、失業保険が受給できるかの確認です。基本的に失業手当は、雇用保険に6ヶ月以上加入していれば給付されます。

派遣社員として働いているものの、意外と雇用保険の加入などきちんと確認していない人が多いですね。社会保険と違い、働いている最中はあまり気にしないのかもしれませんが、派遣は収入が途絶える心配がありますから、失業保険がおりるかどうかは大事なことです。

なるべく早く、雇用保険について派遣元会社に確認しておきましょう。

派遣元から次の仕事を紹介されない場合の対処法

派遣元から次の仕事を紹介されない場合の対処法

派遣会社から次の仕事を紹介されない時も、このまま仕事なかったら困るな〜と派遣元会社からの連絡を待つだけでは心配です。

タイミングの問題はありますが、契約満了までに次の仕事を紹介してもらえない場合は、派遣元からの紹介は期待せずに次のステップを取ったほうがいいですね。

仕事を紹介されない時「やるべき2つのステップ」

(1)自分でも仕事を探す

(2)スキルアップ講座を受講する

(1)自分でも仕事を探す

  • 他の派遣会社に登録する
  • ハローワークへの登録
  • 転職サービスの利用を検討

とにかく「次の仕事」が得られるように、他社の派遣会社への登録をし、ハローワークも利用しましょう。

希望にもよりますが、これを機に直接雇用(正社員・契約社員など)をめざし転職サービスに登録をして仕事を探す方法もあります。

ただし、正社員など直接雇用はどうしても採用までの期間が長く、仕事が決まるまで無収入になってしまうリスクがあります。少しでも収入がない期間を減らすには、現在登録しているところ以外に2〜3社の派遣会社に登録することです。

登録している派遣会社が増えれば、紹介してもらえる求人も増えます。選択肢も広がりますし、ブランクをあけずに次の派遣先が決まりやすくなりますね。

(2)スキルアップ講座を受講する

資格のあるなしやあなたが持っているスキルや実績は、採用に大きく影響します。

例えば、常に人手不足の介護業界ですが、労働条件が良くないことが頻繁に取り沙汰されています。ケアーマネージャーなど資格を持っていれば、より良い条件の勤務先が見つかりやすくなります。

一般的な事務職よりも、時給も高く需要も高いのが貿易事務です。貿易実務検定や通関士試験を受けて合格すれば、大きな武器になるでしょう。

派遣会社は派遣社員が「正規職員になれるよう」サポートしなくてはなりません。ですから、どの派遣会社でも様々なスキルアップサポートをしています。ぜひ、今後のためにも、自分が希望する職種に役立つ資格やスキルを身につけておきましょう。

ちなみにこうしたスキルアップ講座や資格取得のための講座は、派遣を辞めてしまうと自分で調べて料金を支払い受講します。

派遣会社では無料の講座や補助制度がありますから、派遣社員として登録している間に利用できるだけ利用し、自分の価値を高めておくのが大事です!

派遣切りにあった場合、失業保険はもらえるの?

派遣切りで失業保険はもらえる?

派遣社員も受給資格を満たせば失業保険がもらえます。失業保険は、雇用保険に加入している人が仕事を失って収入がなくなった時に、国から支給される手当です。

失業保険の受給資格

まずは「あなたが雇用保険に加入しているかどうか」がポイントになります。さらに雇用保険の加入状況を過去2年間にわたって確認しましょう。

過去1年間に6ヵ月以上加入していれば、失業保険が受給できます。また自己都合であれば、過去2年間に12ヵ月以上の加入で受給できます。

退職理由が「自己都合」か「会社都合」かで受給条件が違う

自己都合と会社都合の受給条件

自己都合 会社都合
雇用保険の
加入期間
過去2年間に
12ヵ月以上の加入
過去1年間に
6ヵ月以上の加入
給付までの
期間
待機期間7日+
給付制限期間3ヵ月 ※1
待機期間7日
支給開始の
目安
約4ヵ月 約1ヵ月
給付日数 90〜150日 90〜330日
最大支給額 約125万円 ※2

約275万円 ※2

(※1)5年間のうち2回目の退職までが2ヶ月間の給付制限期間になる。3回目以降から3ヶ月になる。
(※2)基本手当の上限額は年齢によって変わるので、おおよその目安です

会社都合と自己都合では支給開始の時期や給付日数・支給額にも違いがあります。派遣会社から離職票を貰うと、会社都合か自己都合かわかりますが、事前に派遣会社に確認しておくほうが安心です。

「会社都合」の退職条件

  • 本人が引き続き同派遣会社からの紹介を希望
  • 契約満了までに次の仕事を派遣元会社が提示しない
  • 派遣期間満了後、就業できない

「自己都合」の退職条件

  • 次の派遣先を紹介したが、断った(拒否した)
  • 契約途中に自分の都合(結婚や引っ越しなど)で辞めた

派遣切りや雇い止めって「会社都合」の退職ではないの?

雇い止めや派遣切りの場合、離職票に「自己都合」と書かれてトラブルになるケースがあります。

働く意思はあるけど、契約満了までに次の仕事を紹介してもらえず、結果的にその派遣会社も辞めたとします。その場合は、自己都合ではなく会社都合ではないのでしょうか?

ハローワークに確認したところ、次のような回答でした。

「契約満了で次の仕事を紹介してもらえなかった。これにより契約満了と同時に同派遣会社における派遣就業は終了。このような場合は、本人は働く意思があるのに求人の紹介がなかったとみなされるため、自己都合ではなく会社都合による退職となるのが一般的」

つまり『私の都合で次の仕事に就けなかったわけではない=自己都合ではない。結果的に会社都合である』という判断です。

また時給が極端に低い・通勤に2時間以上かかるなど、条件の悪さを原因に紹介された仕事の就業を拒否した場合でも、「会社都合」と判断されることがあるようです。

それぞれのケースで判断が違います。退職理由が「自己都合」となり納得がいかない場合には、派遣会社と話し合い、またハローワークでも相談してみて下さい。

注意!1ヵ月待機は廃止されている

今だに「1ヵ月待機」という言葉が派遣業界でも聞かれますが、そもそも1ヵ月待機はすでに2009年に廃止されています。

しかしなぜか、派遣の契約が切れてから1ヵ月は待機し、それから失業保険の手続きを行うといった誤解があるようです。

派遣元事業主が、派遣労働者に対して雇用契約期間が満了するまでに次の派遣就業を指示しない場合には、派遣労働者が同一の派遣元事業主のもとでの派遣就業を希望する場合を除き、雇用契約期間満了時に被保険者資格を喪失するとの取扱いとなります。

引用:派遣労働者の方に関する 雇用保険の被保険者資格の取得・喪失手続/厚生労働省

つまり契約満了までに次の派遣先を紹介してもらえない場合には、満了日をすぎればすぐに失業保険の手続きを行えるということです。

いっぽうで、次のようにも書いてあります。

○ 派遣労働者の方が引き続き同一の派遣元事業主のもとでの派遣就業を希望している場合には、原則として、契約期間満了後1か月間は被保険者資格を継続することができます。

○ また、契約期間満了時から1か月経過時点において、次の派遣就業(派遣先)が確定している場合 には、被保険者資格を喪失させることなく、次の派遣就業が開始されるまでの間、被保険者資格を継続することができます。

引用:雇用契約期間が満了した場合の喪失手続について/厚生労働省

本来、雇用保険は基本的に退職した時点で資格を喪失するわけですが、派遣社員の特性を考えて「本人が希望すれば1ヵ月程度は資格を喪失しないで、引き続き仕事を探してもらう」ことができるわけです。実際に就業開始するのは、もっと先でも問題ありません。

この1ヵ月という時間が「1ヵ月待機」と混同されているようです。しかし大切なのは、1つ目の『派遣労働者の方に関する 雇用保険の被保険者資格の取得・喪失手続』です。もし契約満了で派遣会社を辞めた場合には、1ヵ月待つ必要はありません。

いずれにしても個別の状況にもよるので、まずは管轄のハローワークに相談してくださいね。

失業保険を受給するまでの流れと必要なもの

派遣切りされた人が失業保険を受給するまでの流れと必要なもの

失業保険は、申請すれば「はいどうぞ」と簡単に支給されるわけではありません。離職票を提出する初日はけっこう時間もかかります。

また、受給説明会の参加や求職活動の実績なども必要です。各ハローワークによって事務手続きに多少違いもあるので、まずは問い合わせをし確認することをおすすめします。

失業保険を受給するまでの流れ

1:離職

2:受給資格決定

3:受給説明会

4:求職活動

5:失業認定

6:給付

失業保険の手続きは、住民票のある管轄ハローワークで行います。

受給説明会では、詳しい受給の解説のほか、「雇用保険受給資格者証」「失業認定申告書」が渡されます。また1回目の失業認定日もわかりますから、必ず出席するようにしましょう。

失業保険を受給するために必要なもの

  • 離職票
  • 個人番号確認書類(免許証・マイナンバーカード・通知カードなど)
  • 身元確認書類(免許証・マイナンバー過度・住民基本台帳カードなど)
  • 印鑑(認印)
  • 写真2枚
  • 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード

身元確認書類や預金通帳に関しては、注意すべき点があります。必ず次の注意ポイントにも目を通しておいてくださいね。

注意ポイント

1:身元確認書類(免許証やマイナンバーの通知カードなど)がない場合には、健康保険証・住民票記載事項証明書、児童扶養手当などから、2種類を持参しましょう。

2:本人名義の預金通帳は、一部指定できない金融機関もあります。事前にハローワークに確認しましょう。

3年ルール適用で派遣切りが大量発生!?2018年問題のその後

派遣法改正の3年ルールで派遣切りが大量発生した!?

2015年9月30日の派遣法改正により、同じ派遣先企業の同じ部署に3年以上勤務することが出来なくなりました。いわゆる3年ルールです。

これは派遣先企業への直接雇用(正社員等)、あるいは派遣元会社による無期雇用への移行を増やし、派遣社員の雇用を安定させることを目的とした法律です。

そして法改正からちょうど3年となる2018年は、大勢の人がこの3年ルールに抵触する年です。そのため、この法律を避けようと「3年未満のうちに」派遣切りや雇い止めが大量発生するのではないかと危惧されました。

結果としては、騒がれたほどには派遣切りは発生していません。多くの場合は無期雇用派遣への移行によって、「派遣社員」として継続的に元いた企業に派遣されているようです。

しかし大人数の派遣切りが発生はしなかったものの、今後も常に誰かが3年ルールの適用により雇い止めになる可能性はあります。雇い止めをされた後、次の仕事をきちんと紹介してもらえるかは結局は自分次第です。

企業にとって「必要な人材になること」は必要不可欠です。常に需要のある人材であれば、当然ながら派遣会社は無期雇用にし長く働いてもらおうとするでしょう。また自分の価値を上げることで、最終的に正社員登用という方法もあります。

派遣切り(雇い止め)されないための3つの対処法

派遣切りされないための3つの対処法

継続して雇ってもらうために、「派遣切り」「雇い止め」される前にやっておくべき対策をご紹介します。一朝一夕に出来ることではありませんので、日頃から取り組んでおくと良いでしょう。

(1)自分の価値を高めておく(スキルアップ)

業績が悪化した場合、最初に切られるのは正社員ではなく派遣社員です。

しかし、すべての派遣社員が派遣切りにあうわけではなく、中には「あなたには残って欲しい」と引き留められるケースもあります。つまり、あなたが「会社にとって必要とされる人材」であれば、派遣切りの可能性はかなり減ります。

派遣社員であっても上司や同僚とのコミュニケーションを怠らず、「余裕があれば、この人を正社員に採用したいんだけどな」と思わせるくらいの仕事ぶりを発揮することです。

そして派遣会社の制度を上手に利用して、スキルアップに努めましょう。資格を取得したり、セミナーを受講して、やむを得ない事情により派遣切りにあったとしても、すぐに次の仕事が見つかるように準備するのが大切です。

(2)無期雇用派遣、紹介予定派遣も視野に入れる

このご時世ですから、派遣を受け入れる企業も本当に繁忙期のみであったり、一度に大量の雇い止めをするケースはあります。大量の雇い止めがあると、派遣会社でも全員に新たな仕事を探すことができないこともあり得ます。

あなたが無期雇用派遣であれば、仕事を探してもらえなかった場合でも、派遣会社から給料または休業手当が給付されるので安心です。

派遣会社としては、働いていない人に「給料」を払うのはムダなことですから、他の人よりも優先的に仕事を探そうとするでしょう。

(1)で話した通り、実力やスキルがある人や派遣先で常に良い関係を築ける人は、派遣会社も手放したくありません。3年ルールの問題もあり、無期雇用派遣として採用する可能性も高くなります。

派遣社員として長く働きたいのであれば、派遣切りの不安がない無期雇用派遣になるのは雇用の安定・収入の安定の面でも良い方法です。

もうひとつは、紹介予定派遣の利用です。紹介予定派遣はうまくいけば最長6ヵ月の間に、派遣先企業で直接雇用される可能性がかなり高いです。

まずは派遣として働く=いわば試用期間ですね、その後は双方で納得すれば派遣先企業の直接雇用となります。

当然ですが、直接雇用になれば派遣切りにあうこともありません。

正社員や契約社員を目指しているなら、紹介予定派遣を上手に利用したいところです。ただし、雇用形態によっては今の派遣社員よりも条件が悪くなる場合もあるので、仕事は慎重に選び、条件をしっかり確認しましょう。

(3)日頃から派遣元担当者とコミュニケーションする

日頃から派遣元の担当者と蜜にコミュニケーションを取るのが大切です。

人柄を理解してもらい、やる気を伝えることで、優先的というか「○○さんはずっと頑張ってるから」と最初に思い出し、紹介してくれるというのは、実際によくあることです。

派遣元会社の担当者も人間ですから、いくら仕事とはいえ「この人のためなら」と思えば、より一生懸命に力を貸してくれます。