さまざまな企業の新しい働き方や社員活躍の秘訣をお伝えしていくこの企画。今回は、スタートアップ企業に対して実践的なノウハウや知識を提供することでサポートする創業手帳株式会社にインタビューを行いました。
創業手帳株式会社とは
創業手帳株式会社は、スタートアップ企業の事業立ち上げを、アプリ、ガイドブック、コンサルタント業務等で総合的にサポートする会社です。
会社名 | 創業手帳株式会社 |
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住所 | 東京都中央区京橋3-3-10第1下村ビル6階 |
事業内容 | ・創業支援ガイドブック(冊子・web)の発行・運営 ・創業セミナー・イベントの開催・運営 ・創業に関するコンサルティング |
設立 | 2014年(平成26年)4月10日 |
公式ページ | https://sogyotecho.jp/ |
日本では毎月約1万社以上が創業している一方で、その約3分の1が1年以内に廃業してしまっているという実態があります。原因はさまざまですが、創業時の支援が十分に得られていないことも大きく影響しています。
創業手帳株式会社は、会社の母子手帳とでも言うべき「創業手帳」の発行や、webを通じた情報提供、さらにはオンラインセミナーやコンサルティングなどで起業家をサポートしています。「創業手帳」は印刷版でシリーズ累計220万部発行、web訪問者数も月間120万人を超えており、多くの起業家たちの支持を集めています。
今回は、そんな創業手帳株式会社が提供している事業の意義をはじめ、勤務形態などに関わらず活躍できる環境づくり、そして求める人材などについてお話を伺いました。
目指すのは「創業後の成功率向上」による経済発展への寄与
▲創業手帳さんのミッション「日本の会社の成功率を上げる」により目指す姿(公式サイトから引用)
編集部
まず、創業手帳さんの事業について教えていただけますでしょうか。
大久保さん
創業手帳では、「日本の会社の成功率を上げる」という社会貢献性の高いミッションを掲げ、スタートアップ企業のサポートをしています。
スタートアップ企業がしっかりと軌道に乗り成長していくことは、日本経済にとっても重要です。しかし海外と比べると日本ではスタートアップ企業が少なく、サポート体制も遅れを取っている現状があります。起業後の課題に対して具体的な解決策を提供し、成功率を上げていくことが我々の事業の目的です。
具体的な事業内容としては、政府のデータベースとデータ連携し、新たに登記された会社に対し、起業に役立つ情報をまとめた130ページ程度の創業手帳をお送りしています。手帳は月1回情報更新しており、問い合わせがあった場合にも無償提供しています。
また創業手帳のweb版では鮮度の高い情報をアップデートし、起業家に役立つ情報を毎日発信しています。その他セミナーやイベントの開催、コンサルティング業務など、とにかくスタートアップ企業をサポートするためのあらゆる取り組みを行っています。
▲創業手帳の発行だけでなく、セミナーなどのイベントも開催している
大久保さん
これらのサポートは基本的にすべて無償で提供しています。それができるのは、業界トップクラスの企業様や支援団体様に多くスポンサーに入っていただいているからです。資金面でも苦労することが多いスタートアップ企業を、業界、ひいては日本全体で支えていくために、様々な協賛をいただいて無償で提供することができています。
編集部
「創業手帳」という会社名ですが、いわゆる紙媒体の手帳の発行だけでなく、web上の取り組みも含めて多角的な取り組みを行われているんですね。
大久保さん
社名から出版社だと思われる方も多いのですが、むしろオンライン上での展開をメインとしているデータテクノロジーの会社です。ChatGTPなど新しい知識や技術もいち早く対応して取り入れています。
起業家が直面する課題を常にアップデートしていく創業手帳のweb版
▲毎日更新される鮮度の高い情報が魅力の創業手帳web版
編集部
オンライン上の展開であるweb版の創業手帳は、非常に鮮度の高い情報を高い頻度で発信されていますよね。PV数も高く、起業家たちにとって信頼されているメディアであることがうかがえます。このように、起業家の方たちが必要としている情報を常に提供できるのはなぜなのでしょうか。
大久保さん
創業手帳のweb版というメディアがインタラクティブ性を重視しているというところがポイントです。創業手帳webは無料会員登録ができるのですが、現在5,000人から6,000人くらいの登録があります。
熱心なユーザーが多く、アンケートを取ると1,000人くらいから回答があり、その内容も大変細かく書かれているんですね。コミュニケーションを取りながら、起業家が直面している実質的な課題やトピックを掴んで情報をアップデートしていっています。
編集部
1,000人からの回答というのは、すごく多いですね!しかも詳細な内容が書かれているということで、より起業家たちの実態が分かるということですね。
大久保さん
はい、本当に熱烈なユーザーに支えられているメディアだと自負しています。メディアというとPV数を重視するものも多くありますが、我々の本質的な目標はユーザーの課題を解決することです。そのため、PV数ではなく、ユーザーとの関係値を重視しています。
ユーザーの声を聞き改善につなげていくというインタラクティブ・メディアとなっていることで、実際にスタートアップ企業が抱えている課題や欲しい情報を提供できているのだと思います。
編集部
ただ会員の数が多いだけでなく、その会員としっかりとコミュニケーションを取って情報をアップデートしながら困りごとを解決しているのですね。創業手帳さんが多くの起業家の方々から信頼されている理由が良く分かりました。
女性社員が約6割!時短でも同じ仕事ができることが魅力
▲社員の6割が女性。働き方を問わず活躍できる環境がある
編集部
創業手帳さんは女性の社員も多く活躍されていると伺いました。社内の男女比率はどのくらいなのでしょうか。
大久保さん
男女比は4対6くらいです。大手企業で働いていたけれども出産を経てフルタイムで働けなくなり、創業手帳に転職してきたという女性社員も少なくありません。
多くの女性に活躍していただけているのは、時短勤務やリモートワークなど働き方の柔軟性があることも理由としてあると思いますが、勤務形態によって仕事の内容を分けていないということも大きいと思います。
一般的には時短勤務で働くとなると、アシスタントなど補助的な業務に従事するケースも多いですよね。しかしそのために優秀な女性が埋もれていってしまっている実態があると思います。だからこそ、創業手帳ではフルタイムでも時短勤務でも役割を変えることなく、同様の仕事を任せるようにしています。実際に編集やマーケティングも含め、各部門に必ず女性社員が配属されていますよ。
仕事内容としても、スタートアップ企業への支援という社会的な意義を感じていただける仕事なので、やりがいを持って働くことができているのではないかと思っています。
編集部
時短勤務を使って仕事を続けること自体は可能になっても、本来やりたい仕事ではない仕事に就かざるを得なくなるというケースも多いですよね。その点、創業手帳さんのように、働き方に関わらず同じ仕事ができるというのは魅力的だなと感じました。
無駄を省き生産性を高めることで「働きやすさ」につなげる
編集部
時短勤務の方などを含め、働きやすい環境を整えるために創業手帳さんが工夫されていることはあるでしょうか?
大久保さん
意識しているのは、なるべく社内の業務を平準化することで無駄な作業を省き、集中してもらえるようにすることでしょうか。それにより、先ほどお話ししたような育児中の女性だけでなく、男性も含め全員が働きやすくなるかと思います。
その「無駄を省く」ということは、我々が行っているスタートアップ企業へのサポートとも共通しています。スタートアップ企業というのは試行錯誤で進めていく必要があるため、どうしても無駄な作業や失敗も多くなるんですね。我々がおこなうのはその無駄や失敗を少しでもなくし、企業として力を入れるべきポイントに注力してもらうという取り組みなのです。
弊社は創業から約10年が経過していますが、それでもまだまだ無駄や非効率な点があると思います。日々の改善によってそれを少しでもなくしていければと考えています。
編集部
なるほど。無駄を省き生産性を上げるために社内でしている具体的な取り組みはありますか。
大久保さん
改善スキルや生産性を向上するための社内研修には力を入れています。ただし研修をしたからといって劇的に無駄がなくなり生産性が上がるというわけではないため、地道な改善の積み重ねが大切だと思っています。
一例として、全社会議後を行った後に社員全員に感想の提出を求めているのですが、通常ですと持ち帰りにして後から提出してもらう場合が多いですよね。しかし創業手帳ではその場で5分以内に全員に書いてもらうようにしています。
持ち帰ってじっくり考えることで感想の質が上がるような錯覚があるのですが、実は記憶が薄れてきてしまっているため質は下がるんです。さらにはその提出をまとめる管理部の負担にもつながる。その場で全員に書いてもらうことで、時間も削減できるし感想の質も上がり、さらに管理の手間も省けるんです。
編集部
見方を変えることで生まれる改善の余地がたくさんあるのですね。このような積み重ねが働きやすさにつながっているのだと感じました。
同じ研修を受け、全員が意見を言うことで会社の成長につなげる
▲活発な意見交換を大切にする社内カルチャー
編集部
創業手帳さんは女性社員だけでなく、20代から30代にかけての若手社員も活躍していらっしゃるとお聞きしました。性別や年齢、働き方問わず輝くことができる秘訣は何なのでしょうか。
大久保さん
「全員が学び、意見を出すことができる環境づくり」を意識しています。特定の人の能力を伸ばすのではなく、皆で学び、知識を得て、それを吸い上げていくことが会社全体の成長につながるというのが私の考えです。そのため、社内研修もパートタイムのスタッフから社長まで、皆同じ研修を受け、知識や知恵を底上げしていくことを大切にしています。
先ほどお話した全社会議の感想をその場で書くというのも、業務効率化のためだけでなく、全員の意見をカジュアルに引き出しやすくするためにしていることでもあります。持ち帰って各自で意見を書くと「これを言っても大丈夫かな」と不安になってしまうこともありますが、その場で書いて確認することで、みんなが意見を交わしやすくなるのがメリットです。
創業手帳にも、自信がなくて意見を出すのを遠慮する女性社員がいたのですが、実際に意見を出してもらうとすごく良いアイデアが出たりするんですね。そのように、自己評価が低かったり遠慮してしまう人であっても、同じ条件の中で意見を言い合うことで、「こんなこと言ったらだめかもしれない」となることなく意見を出しやすくなります。それがフェアな評価や能力を引き出すことにもつながるのではないかと思っています。
編集部
「自由に意見を言って」と言葉で言っても、社歴が浅かったりするとなかなか難しい面があると思います。だからこそ、創業手帳さんのように会社として皆で学び意見を引き出すための場を設けるというのは大切だと思いました。
日々小さな改善が生まれる「全員が改善提案をする」朝礼
編集部
その他に、社員の皆さまの意見を引き出すための取り組みはありますか?
大久保さん
毎日の朝礼で改善提案があるかどうかを確認しています。会社の規模が小さいからできることでもありますが、そこでは部署ごとなどではなく、全社員と話すことをルールとしています。
朝礼ではデータの数字やお客様の意見、感想を全員で確認し、その上で全員から改善点や提案を全社員から聞いているのですが、そこにパートタイム社員、新卒社員、ベテラン社員といった区別は設けません。
朝礼では日々小さい改善が生まれていますし、性別も年齢も社歴も関係なく、当たり前のように提案も上がってきます。むしろそういった改善提案がないと、お客様の課題解決という目的が達成できません。全体から知恵を吸いあげることができているからこそ、会社としてアップデートしていけているのだと思っています。
編集部
正社員ではないから、まだ社歴が浅いから、ということで線を引くことなく、全員が学び意見を言い合うことで会社全体の成長につなげているのですね。そのためにいろいろな工夫をされているということも良く分かりました。
未経験でもOK。採用の際に重視するのは圧倒的に「人物・資質」!
編集部
採用についてお聞かせください。御社が求めるのはどのような人材なのでしょうか。
大久保さん
創業手帳では経験やスキルではなく、人物と資質だけを見ています。経験やスキルは教育によって伸ばしていくことができますが、人間としての性質はなかなか変えられない部分があります。だからこそ、人物重視で採用しています。
もちろん経験が必要な職種もありますが、未経験でも、会社の本質をきちんと考えて改善提案ができ、人と丁寧に向き合うことができる資質がある人を歓迎しています。
編集部
採用規準を「人物と資質だけ」と言い切る企業様はなかなかないと思います。社員全員の学びや意見を会社の成長につなげているからこそ、学ぶ姿勢やそれを改善提案につなげられる資質があることがより重要になるんですね。
経営者層と関わることができ、社会貢献につながる仕事
編集部
最後に、創業手帳さんから求職者の方へのメッセージをお願いします。
大久保さん
スタートアップ企業への支援は、日本経済のためにもとても重要なもので、我々が取り組んでいる事業はとても社会的に意義があるものだと自負しています。創業手帳のweb版も多くの方に支持していただいており、ユーザーとコミュニケーションを取りながらいろいろな事業ができるという点でも面白さがある仕事だと思います。
社員数は多くはありませんが、多くの起業家さんと関わりながら、社会的な影響力がある仕事ができる会社です。興味を持たれた方はぜひお問合せいただければと思います。
編集部
創業手帳さんは、年齢や働き方に関わらず社会貢献性の高い仕事をして活躍したいという意欲がある方にとても向いている企業だと感じました。
本日は、ありがとうございました!
■取材協力
創業手帳株式会社:https://sogyotecho.jp/
採用ページ:https://sogyotecho.jp/wanted/