国内に類を見ない事業で業界の未来を作るLegalscape

さまざまな企業の魅力や取り組みを紹介していくこの企画。今回は、法にまつわる情報をデジタル化し、検索・閲覧可能にするサービスの開発を手掛ける、東大発のAIベンチャー「株式会社Legalscape(リーガルスケープ)」を紹介します。

国内に類を見ない、リーガルリサーチを根源から変革するSaaS事業や独自のカルチャー、リモートワークを導入した働き方についてお話を伺いました。

株式会社Legalscapeとは

株式会社Legalscapeは、法に関する情報のデジタル化を通して、リーガルリサーチ業務の効率化を進めている、注目のリーガルテック企業です。複雑な法に関するデータを整備し、網羅的なリサーチを実現した検索・閲覧サービス「Legalscape」の開発を行い、法律業界におけるイノベーションを起こしています。

法律業界のインフラとなるプロダクトを開発しているのは、20名ほどの少数精鋭の組織です。手がけるサービスは、多数の大手法律事務所や大企業の法務部で導入されています。さらには、日弁連や法務省、内閣官房などと連携し、民事判決をオープンデータ化する国家プロジェクトにも参画しています。

Legalscapeで働く社員の多くは、法律業界を切り口に社会を変革することに高い価値を見出して、仕事に取り組んでいます。

会社名 株式会社Legalscape
住所 東京都文京区本郷7-3-1 東京大学南研究棟351
事業内容 法律業務の支援に特化したサービス開発
設立 2017年9月14日
公式ページ https://www.legalscape.co.jp/
働き方 出社・リモートのハイブリッド
フルフレックス

今回は、コーポレートチームの人事採用担当・工藤さんにお話を伺いました。

本日お話を伺った方
株式会社Legalscape コーポレートチーム人事採用担当 工藤未咲さん

株式会社Legalscape
コーポレートチーム人事採用担当

工藤未咲さん

信頼性と網羅性を追求し、法情報を身近な存在へ

株式会社Legalscapeの企業理念
▲法情報を整備して「見渡す景色」の実現を目指す(引用元:コーポレートサイト

編集部

はじめに、御社がどのような会社か教えていただけますでしょうか。

工藤さん

はい。株式会社Legalscapeは2017年創業の企業で、正社員13名に加えて業務委託の方を合わせた20名程度の組織です。(2023年3月15日時点)

私たちが目指しているのは「すべての法情報(legal)を見渡す景色(scape)を描き出す」ことです。法は普段の生活では関わりがないと感じる方もいるかもしれませんが、日本は法治国家なので、法の領域は実は私たちの生活の身近にあるものなんです。

編集部

たしかに。普段は意識していないだけで、よく考えると身近な存在ですね。

工藤さん

たとえば結婚や相続の際には民法が関係しますし、会社であれば事業を始める際に「これって法律的にOKなんだっけ?」という疑問が出たら必ず確認しますよね。

しかし、誰もが法情報や法律をすべて把握しているわけではないので、日本では弁護士や企業の法務部の方といったプロが担っているのが現状です。弊社がおこなう事業によって、法律のプロの方々の根幹となる業務であるリーガルリサーチが、より効率的かつ網羅的に行えるようになります。それによって、法律業界全体を革新していくのが、私たちの目指しているところです。

DX化で根幹の業務であるリサーチの手間を解消

編集部

弁護士などのプロの方でも、法情報をすべて把握するのは難しいのでしょうか。

工藤さん

そうですね。司法試験ではいわゆる六法の知識が問われますが、日本には法律だけで2,000もあります。また、裁判の法律や法令は難しい文章で書かれているため、それらをわかりやすく解説している書籍なども多数あります。実務家の方々はそれを読み、法令の趣旨や制定経緯、実務上の論点を確認するリサーチが必要になります。

このリーガルリサーチは、法律家の方々の根幹の業務でとても重要ですが、実際に法情報を網羅的に探すのは非常に難しいです。

編集部

法情報のリサーチが難しい原因は、情報量の多さ以外にもありますか?

工藤さん

あります。法情報は紙ベースの管理が中心である、という点です。たとえば、裁判の事例である判例については、Web上で閲覧できるデータはほぼ存在せず、裁判所のなかに置いてあるダンボール箱に紙で積まれているものを読むしか手段がない、ということが実際に存在するんです。

また、電子書籍化されている法律書籍もかなり少ないため、私たち一般人はもちろん、法律のプロである弁護士すら情報を探すのに苦労しています。大手の法律事務所さんだと、わざわざ自社で図書館を持つケースもあります。

そのため、私たちは机の上だけで情報を簡単に取り出せる状態・網羅的にまとまっている状態を作ることを目指しています。

編集部

なるほど。リサーチにかかる労力と時間は想像以上に大きいんですね。その状況を改善していくために事業を展開されているということですね。

逆引きの特許を持つ「Legalscape」で、情報の網羅性を向上

株式会社Legalscapeが開発したリーガルリサーチシステムLegalscape
▲複雑な法律情報作業のニーズに応える、リーガルリサーチシステム「Legalscape」

編集部

御社が提供しているプロダクトである「Legalscape」について詳しく教えてください。

工藤さん

「Legalscape」は、簡単に言うと法律版のGoogleのようなリサーチシステムですね。機能としては書籍を探す検索システムとして、実務家の方々がリサーチしやすいような設計にこだわっています。

たとえば、PDFでは複数ワードを検索できませんが、「Legalscape」では、複数ワードの検索が可能で、欲しいワードが含まれているような近い情報を簡単に見つけられます。また、引用されている文献をたどることができるリンク機能が搭載されていることに加え、さらに今読んでいる文献へリンクしている別の文献をたどることができる“逆引き”機能の特許を持つ点が大きな特徴です。

法律業界は情報を正確に理解し、活用しないと、たとえば企業だと「他社に訴えられたり、行政処分や課徴金を課されたり、事業停止になってしまう」なんてこともあるため、原典をたどるのが非常に重要です。

法情報は法情報同士の引用関係が多く、紙ベースだと引用元がたどりづらいですが、「Legalscape」のリンク機能を利用すると簡単に調べられます。また、単純に引用元をたどるだけではなく、今見ている文書を引用している文献をたどる、という”逆引き”機能があり、これはリーガルリサーチにおいてかなり役立ちます。

たとえば、“逆引き”機能によって「金融商品取引法27条の2の条文を引用する書籍」がどれだけあるかなどという情報もわかりますよ。

リーガルリサーチシステムLegalscapeの“逆引き”機能の解説
▲“逆引き”機能で参照・引用元を一発でたどることができる(引用元:会社説明資料)

法律事務所や企業の法務パーソン約90組織をサポート

編集部

「Legalscape」を導入する企業は何社くらいあるのでしょうか。

工藤さん

日本の5大法律事務所のうち4社と、企業法務部では超大手企業でご活用いただいており、約90組織に及びます。

編集部

導入されている企業の反応はいかがですか?

工藤さん

30年ほど弁護士をされている方からは、「こういうサービスがあるといいなと思ったものを実現してくれた」というお声をいただくなど、かなり好評をいただいているとビジネスチームから聞いています。他にも、「時間がかかるリサーチ業務を、リーガルテックのサービスとして落とし込んでいるため助かる」などのお声も届いています。

また、週刊東洋経済 「すごいベンチャー100 2022年(※)」にも選定され、ビジネス的にも有力なシステムとして評価いただいていると実感しています。(※参考:東洋経済オンライン

目指すは法情報を網羅した唯一無二のデータベース

Legalscapeが目指す世界観
▲リーガル・ウェブ構想では、スピーディかつ網羅性の高いDX化を掲げている(引用元:会社説明資料)

編集部

プロダクト「Legalscape」の開発において、目指す先を教えてください。

工藤さん

最終的に目指す先はリーガル・ウェブ構想です。プロダクトには法令・書籍・雑誌・パブコメなどの情報が入っていますが、今後は法令の履歴情報やその他官公庁資料、過去の判例などをすべて紐づけ、日本の法情報を網羅したいと考えています。

すべての景色が見渡せれば、日本で唯一無二の法情報のデータベースが実現します。たとえば国会で法改正をする際に「Legalscape」を利用すれば、過去の答弁や経緯がわかるので、議論の質や正確性の向上に役立つと思いますね。

編集部

なるほど。法律業界のDX化をさらに進める予定なんですね。

工藤さん

そうですね。日本のリーガルテックはアメリカなどと比べると、20年以上遅れていると言われています。たとえば、アメリカなどではオンラインで全部裁判が完結しますが、日本ではできないのが現状です。

メンバー全員の志は「法律業界の未来の創造」

株式会社Legalscapeで働くメンバーの方々
▲出身大学・学部はさまざま。Legalscapeのような社会的なインパクトが大きい事業に携わりたいと考えるメンバーも多い

編集部

Legalscapeさんのメンバーは、もともと法律に携わってきた方が多いのでしょうか。

工藤さん

代表をはじめ、法律業界に縁があるメンバーや、弁護士、法学部の出身者はいませんが、メンバー全員が“本質的で世のためになるもの”に価値を見出しているという共通点があります。

私たちの生活を根本から変える可能性がある法の領域のデータベースを作る仕事は、社会的なインパクトが大きいので、そういったインパクトがあるものに携わりたいと考えるメンバーも多いですね。

編集部

成長企業としてのみならず、東大発AIベンチャーとしても注目されていますね。

工藤さん

東大・大学院の出身者は、代表・八木田をはじめ4人います。残りのメンバーはみんな違う大学出身ですね。

創業当初から4年くらいまではかなり推薦や紹介が多かったですが、2022年頃からは求人媒体やリファラルなどさまざまな経路を介して入社しているため、現在のメンバー構成は多様になっているかなと思います。

意見やアイデアを出しやすいフラットな環境

株式会社Legalscapeの社内でミーティングを行うメンバー
▲部署の垣根を越えて課題解決に取り組む(引用元:採用情報

編集部

Legalscapeさんのメンバーの方々の性格や雰囲気はどのように感じますか?

工藤さん

フラットでシンプルな考えを持つ人が多いですね。また、社員や代表を含めた全員に共通するのは、弊社の事業へ社会的意義を感じているという点でしょうか。仕事は価値を提供するものなので、メンバー全員が自分の仕事に真っ直ぐ向き合っているという印象です。

編集部

同じ思いを持つ者同士、気楽に話し合える雰囲気があるということですね。

工藤さん

そうですね。仕事や趣味など何に対しても、偏見を持ったり自分の意見に過度に固執したりしない人が多いです。社会的意義やサービスにかける思いが一致しているからこそ生まれる雰囲気だと感じています。

週3~4回のテレワークを導入。フレキシブルな働き方を実現

株式会社Legalscapeのオフィス
▲リモートワークの導入で、自分のペースやライフスタイルに合わせた出勤が可能に

編集部

リモートワークを実施していると伺いましたが、ルールとして定めているのでしょうか。

工藤さん

基本的にルールは設けていないので、場合によって変えられています。ただ、フルリモートや遠隔地の勤務は現状のフェーズと人員では、正直なところ難しいですね。個々の方向性やモチベーションなどを知るには、対面の機会も時には必要かなと現在のフェーズでは考えています。

入社を検討される方は、家庭のご事情などもあるので必須ではないですが、週に1~2回程度は出社するイメージをお持ちいただければと思います。リモートワークは週3~4日程度、居住地は原則として東京近郊が対象です。

編集部

なるほど。出勤日を作る目的は、コミュニケーションの活性化やミーティングの実施などでしょうか。

工藤さん

そうですね、どちらかというとコミュニケーションを促進するために、顔を合わせる機会を意識的に作るという意味合いが強いです。

交流を図る取り組みとして、金曜日に出社して社員同士でランチへ行くと会社がランチ代を負担してくれる制度を設けています。

ツールを活用し、情報共有・コミュニケーションを円滑化

株式会社Legalscapeで出勤して働くメンバー
▲SlackのHuddleを活用して状況報告の他、雑談会なども行っている(引用元:採用情報

編集部

リモート勤務においてコミュニケーションなどに苦労される企業は多いですが、Legalscapeさんではどのように運用されていますか?

工藤さん

日常的なミーティングなどは、基本的にSlackのHuddleで行っています。全社員がオンライン上に集まって、事業の状況報告などをする時間を毎週木曜日に30分くらい設けていますね。

採用で重要なのは、事業に対して共通の価値観を持てるかどうか

株式会社Legalscapeの採用について話す工藤さん
▲「事業に対して共通の価値観を持てるか、が重要」と話す工藤さん

編集部

採用のご担当者として、Legalscapeさんで活躍できる方・楽しく働ける方はどのような方だと思いますか?

工藤さん

2つありますね。1つはLegalscapeが行う事業・目指しているものの価値を理解し、仕事として自分が取り組む意義を見出すことができる人です。逆に、法律業界やリーガルテックに思い入れがなくても問題ないと思っています。

もう1つは、実務において自分で仕事を作ったり、取りに行ったりできる自律性のある方です。

弊社はまだアーリーなフェーズであり、人数も少ないので、個人で自分の業務をマネジメントしていく必要があります。また、変化が激しい業界なので、事業的な変更が発生するケースも少なくありません。そのため、自律性や柔軟性を求められることにストレスを感じない方が合うと思います。

編集部

なるほど。変化が激しい業界だからこそ、自律性を持って仕事に向き合える方が向いているのですね。

工藤さん

そうですね。リモートワークの導入でフレキシブルに動ける分、自分から仕事を取りに行く能動性は、採用において重視していると感じます。

編集部

今回お話を伺い、御社は紙ベースの法情報をDX化して法律のプロをサポートするだけでなく、国家プロジェクトへの参画も果たすなど、日本の法律業界を作る成長企業だとわかりました。

本日はお時間をいただきありがとうございました。

■取材協力
株式会社Legalscape:https://www.legalscape.co.jp/
採用ページ:https://legalscape.notion.site/09aeb478072946c18249495b8fb63fcd
企業ブログ(note):https://note.com/legalscape