カンロ株式会社の「健康経営」と、誰もが働きやすい環境をつくる取り組みとは

先進的な働き方や社内カルチャーで注目を浴びている企業の魅力や社内制度についてお届けする本企画。今回は、時代のニーズに応える創造性と技術力により「カンロ飴」をはじめとする数々のヒット商品を生み出し続ける、日本を代表するお菓子メーカー「カンロ株式会社」にお話を伺いました。

カンロ株式会社とは

カンロ株式会社の商品ラインナップ
▲カンロ株式会社の豊富な商品ラインナップ

カンロ株式会社は、キャンディやグミを主力商品とするお菓子の製造販売メーカーです。2022年に創業110周年を迎えた同社では、時代のニーズを反映した革新的なアイディアが詰まった商品から定番商品まで、豊富に取り揃えています。

会社名 カンロ株式会社
住所 東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティビル37階
事業内容 菓子、食品の製造および販売
創業 1912年11月10日
公式ページ https://www.kanro.co.jp/

今回は、創業以来、お菓子業界を牽引し続けてきた同社にて、さらなる成長と発展を目指す中で重視している健康経営に対する取り組みや、様々なライフステージに立つ女性社員の活躍を実現している制度設計、求める人材像について、人事・総務本部の西ケ谷宏子さんと北島恵美子さんにお話を聞かせていただきました。

本日お話を伺った方
カンロ株式会社人事・総務本部副本部長の西ケ谷宏子さん

カンロ株式会社
人事・総務本部
副本部長

西ケ谷 宏子さん

カンロ株式会社人事・総務本部人事部労政企画チームの北島恵美子さん

カンロ株式会社
人事・総務本部
人事部 労政企画チーム
チームリーダー

北島 恵美子さん

創業110年!「カンロ飴」など時代に合わせたヒット商品を手掛ける

カンロ株式会社の社内に設置されたキャンディ入れ▲カンロさんの社内にはキャンディボックスが設置されており、誰でも自由に食べることができる。フードロス削減の一環にも

編集部

最初に、カンロさんの事業内容について教えてください。

北島さん

弊社は、キャンディやグミなどのお菓子の製造・販売を行っている会社で、1912年に「宮本製菓所」という名で山口県で創業しました。

1950年代にしょうゆを用いた「カンロ飴」が大ヒットしたことをきっかけに、順調に事業拡大を進めて、国内のキャンディ市場ではトップシェアを誇るまでに成長することができています。

ヒット商品としては、「カンロ飴」の他に「健康のど飴」や「金のミルクキャンディ」「ピュレグミ」などがあり、創業以来、常に消費者ニーズの変化を読み取りながら、時代に合った商品開発を行って参りました。

編集部

私も、幼い頃から現在に至るまで、カンロさんのキャンディのお世話になっています。数々のロングセラー商品を生み出す御社ですが、その秘訣のようなものがあれば教えてください。

北島さん

これまで長きに渡り、数々のヒット商品を生み出してこられた背景としては、やはり、時代を読み取る力と弊社の研究開発力があげられます。

加えて、1つ1つのブランドに愛着を持ちながら、大切に育てていくという企業風土も、ロングセラー商品が生まれやすい環境として、大きく貢献していると感じています。

「人と社会の持続可能な未来に貢献する」パーパスドリブン企業を目指す

カンロ株式会社の掲げるパーパスとクレド
▲カンロ株式会社の掲げるパーパスとクレド(公式HPより引用)

編集部

近年、カンロさんで打ち出されている新たな経営戦略について、お聞かせいただけますでしょうか。

北島さん

まず、2022年に弊社では、「"Sweeten the Future" 心がひとつぶ、大きくなる。」というパーパスを新たに策定し、それに合わせて、これから会社が進んでいく方向性や方針に加え、クレド(行動指針)を再定義しました。

背景としては、企業における社会的な存在価値や意義を重要視する機運の高まりや市場のグローバル化の波を受け、今後カンロとしてどのような未来を創造していくのかを明確にしておく必要があったことがあげられます。

変化が激しく、不確実性の高い現代社会において、自分たちの進むべき方向や目指すものを言語化するため、パーパスを策定し、同時に企業ロゴもリニューアルしました。

そして、カンロは「パーパスドリブンな企業」を目指すことを表明し、企業価値の向上と人と社会の持続的な成長に貢献していこうという理念のもと、中期経営計画2024を策定し、取り組んでいる最中というところです。

編集部

ありがとうございます。それでは「パーパスドリブンな企業」を目指すにあたってのクレドにおいては、どのような想いが込められているのでしょうか?

北島さん

「創意工夫」については、長年弊社の事業指針として引き継がれてきている志とも言えるものです。

常に市場に新しいものを提案し、需要を新たに生み出す役割を担っているという精神はずっと根付いていて、そこがカンロの研究開発や商品作りにおける強みとなっていると思います。

もう2つのクレドである「信義誠実」と「百万一心」は、事業に関わるすべての人に対して誠実な姿勢でビジネスを展開し、パーパスの実現に一致団結して向かっていくという考えを2つのワードで表したものです。

クレドとしては、「創意工夫」より後に追加されたものですが、ビジネスに対する姿勢という点では、「創意工夫」と同じく、創業以来、ずっと大切に引き継がれている考え方ですね。

編集部

110年の長い歴史の中で、カンロさん全体の根底にすでに流れている考え方をクレドにすることで、これまでの歩みや基本指針を継承しながら成長していこうという想いが強く感じられます。

健康経営優良法人に認定。社員が安心して働ける環境をつくる

カンロ株式会社社内での打ち合わせの様子
▲カンロさんのオフィスでは、バランスボールがミーティングチェア代わりとなっていることは珍しくない

編集部

2020年7月に、カンロさんでは健康経営宣言をされましたが、宣言に至った経緯について教えてください。

北島さん

1981年発売の健康のど飴をはじめとしたお客様の健康を考えた商品を販売している会社としては、お客様の健康はもちろん、カンロで働く社員の健康も大切にしています。この姿勢は長らく変わらないものなのですが、宣言以前は、社員の健康に寄与すると思われる施策をバラバラに実施しておりました。

それらをきちんとまとめて、体制を整え実行していくための柱として「健康経営宣言」を発表したという経緯があります。もちろん、経済産業省が健康経営を推進するようになり、社会的にも企業の健康経営度が注目されるようになったことも、体制を整える大きなきっかけとなっています。

その結果、経済産業省と日本健康会議が進める「健康経営優良法人」に、2022年・2023年と続けて認定されているんです。

編集部

顧客にとって健康的かつ美味しい商品を作り出すだけではなく、社員の健康増進に関しても全社的に取り組んでいて、それが国にも認められているんですね。カンロさんの企業姿勢がすごくよくわかります。

「歩幅チェックサイン」など、オフィスにも健康のための工夫あり

カンロ株式会社社内の床に設けられた歩幅チェックサイン
▲カンロさんのオフィス内に設けられた歩幅チェックサインに従って歩くと、歩幅が広くなり、エネルギー消費量の増加や転倒防止効果が得られる

編集部

社員の方々の健康増進のため、具体的にはどのような取り組みをされているのですか?

北島さん

代表的な取り組みとしては、禁煙推進があげられます。就業規則に就業時間中の禁煙を明記し、それまで各工場に設置されていた喫煙所もすべて廃止しました。

一方的に禁煙を命じるのではなく、禁煙補助という形で、タバコをやめられるよう支援活動も同時進行しています。取り組みを始めた2016年頃には、社内の喫煙率が30%ぐらいでしたが、現在(2023年4月の取材時点)は18%台くらいまで下がってきています。

喫煙率の低下は、社員の健康増進効果はもちろん、食品メーカーとしても大きな価値を生みますので、意義のある取り組みだと感じています。

編集部

他にも取り組んでいることがありましたら、お聞かせください。

北島さん

カンロの本社オフィスでは、日々の仕事に従事しながら、健康増進を図ることができる様々な設備を取り入れています。

例えば、意識的に歩く歩幅を広くする歩幅チェックサイン、立って会議をする「立ち会議室」や、立って仕事ができる昇降テーブル、座りながら体幹を鍛えられるバランスボールなどがあります。

カンロ株式会社社内の床に設けられた歩幅チェックサイン

編集部

立ち会議室では、1時間立ちっぱなしで会議されているのですか?

北島さん

そうですね。1日にいくつもの会議に参加する役員においては、3〜4時間立ちっぱなしで会議していることも珍しくありません。

一方で、立って行うからこそ、短く済ませる工夫をするようにしており、会議自体の効率や生産性はアップしているかなという印象です。

編集部

健康増進のために特別なアクティビティをするのではなく、オフィスの中に自然と健康増進のための施策が組み込まれているので、仕事が忙しくても取り組みやすい環境となっているのですね。

カンロ株式会社の立って実施する会議の様子
▲カンロさんでは立って会議を行うようになってから、短い時間で効率的な会議進行が実現した

もしもの疾病に対する不安を解消するサポート体制

カンロ株式会社の会議室「金のミルク」

編集部

カンロさんが健康経営宣言をされてから、社内の反応はいかがでしょうか?

北島さん

宣言の発表以来、毎年「健康と仕事」に関するアンケート調査を行っているんです。そのアンケートの中では、健康に関する取り組みに比較的興味を持っている社員が多いという結果が出ており、今後の取り組みに対しても期待値は高いと感じています。

編集部

社員さんの間で評判の良い取り組みはありますか?

北島さん

三大疾病と呼ばれる「がん・心疾患・脳血管疾患」の3つの病気に対して、会社が治療と仕事を両立できるよう支援する制度は、喜ばれていると思います。

これは会社が加入する保険を利用しています。例えば、がんと診断された社員に対して、条件をクリアすると一時金を支給するという取り組みで、年間数名の利用者が出ております。

編集部

社員の方が抱くお金の不安に対しても、サポートをすることで、治療に専念しやすい環境を作っているのですね。

北島さん

そうですね。前々から制度化していた治療期間中の所得補償に加え、まとまったお金のサポートとして一時金も加えたという感じです。所得補償に関しては、健康保険で支給される傷病手当に加え、時効により消滅する有給休暇の積立や、病気による欠勤が一定期間有給となる制度があります。

これらの制度を利用することで、治療でお休みし始めてから大体2年程度は、何らかの所得補償があるような制度設計にしています。

編集部

健康増進だけでなく、病気になった時のサポートまで会社がカバーしてくれるからこそ、社員のみなさんの間で、積極的に健康づくりに取り組む雰囲気が生まれているのだと感じました。

ダイバーシティ推進で女性管理職率が14%にまで向上

カンロ株式会社社内での打ち合わせ風景

編集部

今回インタビューにご対応頂いたお二方も女性でいらっしゃいますが、カンロさんにおける女性の活躍状況はいかがでしょうか?

西ケ谷さん

カンロでは、2018年からダイバーシティ推進に力を入れて取り組んでおり、女性管理職率は2023年時点で14%を超えるところまで増えています。

現在の男女比はおおよそ「男性7割・女性3割」という内訳ですので、自然な姿としてゆくゆくは女性管理職率を30%まで持っていきたいというところが目標です。

編集部

女性の管理職率が14%というのはかなり高い方だと思うのですが、取り組み開始当初から女性比率は高かったのですか?

西ケ谷さん

実はそうではないんです。取り組みを始めた当初は、割合としては5%程度しかおりませんでした。

編集部

そのような中で、5年ほどで女性の管理職率をおよそ3倍にまで高められたのは、なぜなのでしょうか?

西ケ谷さん

先ほどもお話しした通り、カンロでは2018年から本格的なダイバーシティ推進への取り組みを開始しました。女性活躍はダイバーシティ推進を進める上で重要な取り組みの一つとなりますので、まずはそこに力を入れたことが影響していると思います。
また、女性活躍だけではなく様々な取り組みが一気に進んだのには、ちょっとした理由があります。

当時の社長は、ダイバーシティをスピーディーに進めていくためには、人事部主体で進めない方がいいという考えを持っていたため、ダイバーシティ推進を人事ではなく社長直下で進めることにしたのです。

人事部主体で進めるとなると、どうしても法律や社内規定を確認して整備しながら進めることになるため、ダイバーシティの部分だけを外に出すことで、どんどん進めていくことができました。

「1年生の壁」での離職を防ぐ時短勤務の活用法

カンロ株式会社の会議室「ピュレグミ」
▲自宅のリビングのようなアットホームな温かさを感じる会議室「ピュレグミ」

編集部

一般的に、女性は出産や育児といったライフイベントを迎えるケースがあるかと思います。その中で女性が活躍しやすい環境をつくるという点においては、どのような取り組みをされているのでしょうか?

西ケ谷さん

出産や育児といったライフイベントには、女性はもちろん男性も関わってくるため、基本的に会社としては性別にかかわらず働きやすく、また戻ってきやすい職場づくりを目指して取り組んでおります。

出産をきっかけに退職する社員はほとんどいませんし、男女問わず産休・育休を取得しやすい雰囲気があります。また、産休・育休を終えて戻ってきても活躍しやすい風土というのも、整ってきているなと感じています。

編集部

出産を経て、育児を抱えながら職場復帰するのは、心理的にもハードルが高いと感じてしまいそうですが、戻ってきて活躍しやすい環境づくりとしては、どのような取り組みをされているのでしょうか?

北島さん

まず制度として、お子様が小学4年生になるまでは、時短勤務可能と定めています。また、2歳になる前に復帰した場合は、時短勤務であっても、通常通りのお給料を支給しています。産休によるブランク期間を短くすることで、仕事と離れている時間が少なくなり、モチベーション低下防止につながると考えています。

加えて、お子様がある程度は自分のことができるようになる小学4年生まで、柔軟な働き方ができるようにすることで、「小学1年生の壁」と言われる事情による離職を防ぐことができます。

このような制度設計には、社員一人ひとりが自分の状況に応じて、時短をうまく活用しながらも、しっかり活躍していってほしいという会社側からの想いが込められているんです。

編集部

有給休暇も時間で取得できたりするのでしょうか?

北島さん

お子様の看護休暇に関しては、時間単位で有給休暇を使えるようにしています。

編集部

ありがとうございます。お子様の成長を配慮した柔軟な働き方によって、育児とキャリアの両立が実現でき、結果的に女性の管理職登用が進むことへとつながっていくのですね。

求めるのは「自社商品に愛着と誇りを持って仕事ができる人」

カンロ株式会社の「カンロ飴」と名付けられた会議室

編集部

カンロさんで活躍されている女性社員の方々の特徴について教えてください。

北島さん

「(自分が)こうやりたい」「こうやればきっと達成できる」といった強い意志を持って、未来を考えながら着実に行動に起こしていくような人というのが特徴かなと思います。

自分たちの創意工夫で、市場に新しい価値を提供することを大切にしている会社ですので、前例がない中でも、広い視野で多角的に物事を考えて、どんどんチャレンジしていく情熱のある人が多いですね。

カンロ株式会社の求める人材像・目指す姿
▲カンロさんでは「K・A・N・R・O」の頭文字を用いて、目指す姿・求める人物像を定義している(公式HPより引用)

編集部

なるほど。カンロさんのホームページに掲載されているような要素に集約されているという感じですね。

西ケ谷さん

そうですね。補足するなら、自分たちの商品に対して愛着や誇りを持った方と一緒に働きたいなという想いはあります。

昨今は、経理なら経理、営業なら営業という感じで、職種を軸に仕事を選ぶ傾向が強いと感じているのですが、弊社は飴やグミといったとても夢のある商品を作る会社ですので、そこに価値を見出してくれる方が好ましいなと思います。

そういう会社で仕事をしていることに誇りを持ってコミットする中で、自分も会社も成長していくという関係が理想ですね。

編集部

多くのヒット商品が生まれ、会社が成長し続けられることの根底には「カンロ愛」があるんだよということに共感できる方が活躍できる会社だなと思いました。

本日は、たくさんのお話をお聞かせくださいまして、本当にありがとうございました!

■取材協力
カンロ株式会社:https://www.kanro.co.jp/
採用ページ:https://www.kanro.co.jp/recruit/