企業の基幹業務をサポートするヒューマンベースの”タレント”育成

新しい働き方や独自のカルチャーを用いて成長を続ける企業にインタビューするこの企画。今回は、テクノロジーを使って企業の基幹業務をサポートし、社員一人一人を"タレント"と見なして成長を促す業務系コンサル企業「株式会社ヒューマンベース」を取材しました。

株式会社ヒューマンベースとは

ヒューマンベースでは、企業の財務会計や人事給与、流通、生産管理といった基幹業務に対し、会社の資源を一元的に管理するERP(※)の導入コンサルの立場で、高度なシステムの企画、開発などのトータルサービスを提供しています。
(※)エンタープライズリソースプランニング。企業の経営資源を統合的に管理し、経営を効率化するための手法。

会社名 株式会社ヒューマンベース(Human Base, Inc.)
住所 ・大阪府大阪市北区堂島2丁目4番27号 JRE堂島タワー 13階
・東京都港区浜松町2-4-1 世界貿易センタービルディング南館 17階
事業内容 システムコンサルテーションおよびシステム設計・開発
設立 1990年4月
公式ページ http://www.humanbase.co.jp/
働き方 リモートワークを採用、勤務時間も柔軟に変更可能

 

ヒューマンベースは、ハラスメント対策の徹底や社内のフラットな関係構築を通し、意欲のある社員が働きやすい環境づくりに努めています。また、社員の声を吸い上げ、社内制度に反映させる取り組みも積極的に進めています。

今回はそんなヒューマンベースの代表取締役社長・音吉元樹さんに、会社運営に込める思いや目指す方向性、求める人材についてお話を伺いました。

本日お話を伺った方
ヒューマンベース代表取締役社長の音吉元樹さん

株式会社ヒューマンベース
代表取締役社長

音吉 元樹さん

財務会計や人事労務など企業の基幹業務を最適化

ヒューマンベースの事業内容
▲ヒューマンベースの事業内容(公式サイトより引用)

編集部

まず最初に、ヒューマンベースさんの事業内容についてお聞かせいただけますでしょうか?

音吉さん

弊社のグループは、持ち株会社のヒューマンクリエイションホールディングスの下に6つの子会社があり、そのうちの1社がヒューマンベースとなっています。

ヒューマンベースでは、企業の基幹業務を最適化、効率化、自動化するための支援をメインのビジネスにしています。私たちはこの業務内容についてBPR(※)コンサルティングという言い方をしています。
(※)ビジネスプロセスリエンジニアリング。企業の組織体系や制度を見直し、再構築すること。

具体的にはまず、PMO(※)の運営支援があります。企業のプロジェクトが大きくなると人数や取り組むことが増えてくるので、その管理や運営をサポートするためのコンサルティング人材の提供などを行います。いわゆる事務局のような位置付けです。
(※)プロジェクトマネジメントオフィス。プロジェクトの支援などを部署間を横断して行う組織やシステム。

財務会計や管理会計、人事給与等の企業の基幹業務に特化したERPアプリケーションの導入も支援します。ERPアプリケーションには様々な種類があるのですが、我々は特にSAPやOracleの専門人材を抱えており、育成にも力を入れています。

また、RPA(※)という自動化ツールの構築もしています。お客様のバックオフィス業務の最適化や効率化を全般的に支援するビジネスになります。
(※)ロボティックプロセスオートメーション。従来は人が行っていた業務をテクノロジーにより自動化する取り組み。

複数のグループが能動的に活動するホラクラシー型組織

編集部

多彩な業務を手掛けているヒューマンベースさんですが、どのような企業理念をお持ちなのでしょうか?

音吉さん

基本的な考え方として、ヒューマンベースは会社の形態をとっていますが、私は会社とは思っていないんです。これは社員全員にも伝えているのですが、タレント育成のためのプラットフォームを目指しているという言い方をしています。

従来の日本型のシステム会社などは、ピラミッドのようなヒエラルキー型の組織が多いと思います。これは、組織の長を頂点として、明確な序列が存在する縦割り構造のことです。

私が目指しているのはこの構造とは反対です。自律的な複数のグループに決定権を分散させ、それぞれのグループが能動的に活動する、ホラクラシー型と呼ばれる組織になります。1人が複数のグループに所属していて、各グループが主体的に「こういうことをやって、お客様が喜んでくれたらいいよね」と考えます。

編集部

トップダウンではなく、各グループが自発的に動くボトムアップの組織となっているのですね。具体的なイメージはありますか?

音吉さん

ホラクラシー型組織は、よく「人体」と「臓器」の関係にたとえられますね。心臓・肺・胃などは、それぞれが独立して異なる役割を担いますが、あくまで人体を構成する一部ですし、それぞれの臓器に上下関係などはありませんよね。会社が人体で、社員が心臓や肺、胃などの重要な器官です。それぞれの社員がパフォーマンスを最大限発揮できるようにメンテナンスするのが会社の務めだと思います。

社員の心身を守るためハラスメント対策を徹底

編集部

ヒューマンベースさんで、社員の方々が心地よく働けるように気を配っていることはありますか?

音吉さん

ヒューマンベースでは、社員一人一人の自由と権利を最大限尊重します。一方で、周囲への配慮や自分が負うべき責任を意識してもらうようにも呼び掛けています。具体的には、コンプライアンスを守らなければいけないということです。

私はメンバーの心と体の健康を守ることが第一に大切であり、責任でもあると思います。派遣業法や労働基準法など日本のルールも厳しくなっているため、会社としてもそれらを順守するためのサポートをしています。

その一環で、パワハラやセクハラなどあらゆるハラスメントへの対策は重視しています。お客様から対価を頂いて仕事をする以上、プロフェッショナルとして結果は出さなければいけませんが、極端な話「あの人は会社の利益にすごく貢献しているから、多少のパワハラはしょうがない」という考え方は、弊社には一切ありません。そういった振る舞いをする人は、ヒューマンベースにはいなくても構わないと考えています。

会社には内部通報制度もありますし、外部の企業と契約した外部通報制度もあります。例えば、社長である私のパワハラがひどいようであれば、私がクビになっても全く問題ありません。

編集部

皆さんが心身ともに健康で働ける環境を非常に大切にしているのですね。社員の構成はどのようになっていますか?

音吉さん

日本のシステム開発系の会社は男性がほとんどの傾向にありますが、ヒューマンベースの男性比率は7割ぐらいです。今後もダイバーシティのある組織を目指していきます。現時点で、外国籍のメンバーもいますし、年齢も20代から60代までさまざまです。多様な年齢、性別、国籍の社員が集うからこそ、偏見も生じないようにしています。

ちなみに、元々ヒューマンベースの定年は60歳だったんです。ただ、メンバーに「60歳で仕事を辞める気はないし、自分はまだまだ最前線で働ける」という人がいたので、定年を65歳まで引き上げました。その後も、本人が健康でお客様も望むのであれば、70歳や80歳を超えても働ける形を整えたいと思っています。

役職を付けた呼び方を禁じフラットな関係性を構築

編集部

ヒューマンベースさんの社内はどのような雰囲気なのでしょうか?

音吉さん

従来の会社と比べて、すごくフラットな関係性になっていると思います。その中で、集まることに意味を持たせる仕組みをどうしたらつくれるかは、つねに試行錯誤しています。一例として、ヒューマンベースでは「社長」「部長」など役職を付けた呼び方は一切禁止にしているんです。

私は「音吉さん」と呼ばれるし、私もメンバーのことを名前で呼んでいます。社員の中で、私のことを一般的な会社の社長のように感じている人は多分、誰もいません。だからこそ、多くの制度の提案が社員から自発的に出てきているのだと思います。

編集部

さまざまな立場の社員さんが、それぞれ分け隔てなく接することができるよう心掛けているのですね。社内での役割分担はどのようになっているのですか?

音吉さん

いわゆる世の中で経営陣と言われている人たちのことを、ヒューマンベースでは「リーダーシップチーム」と呼んでいます。リーダーシップを発揮してみんなが嫌がることを率先してやらなければいけない立ち位置になっているんです。

私を含めたリーダーシップチームは、ヒューマンベースとして目指す方向性を決めたり、皆が守るべきルールを定めたりします。三権分立でいうところの立法権を持つ組織です。実際に"劇場"で輝いてくれる社員は、行政を担います。そして、リーダーシップチームも社員も、コンプラ会議といった司法に当たる部門が運用するルールを意識しなければいけません。

例えば、コンプラ会議では社員に過重労働をさせていないかが確認されるし、人事考査も360度評価の仕組みを用いているので、私1人の好き嫌いで評価を決められないようになっています。あとは、さきほど申し上げた内外部の通報制度もあるので、私も好き勝手はできません。

社員が社長を採点する仕組みも採用しているので、私は私で毎月、点数が算出されるようになっています。私自身も社員の皆さんにうまくやれているかどうかをチェックされている感じですね。指標に基づくフィードバックも、今後強化したいと思っています。

編集部

上司が部下を評価するだけでなく、部下からも評価を受ける相互性のある仕組みになっているのですね。

勤務時間は社員と顧客の事情に合わせ柔軟に対応

PCを使った作業のイメージ

編集部

次に、ヒューマンベースさんの働き方について伺います。勤務の形態や時間はどうなっていますか?

音吉さん

ヒューマンベースには、フレックス制度という形は明確にはありませんが、お客様と現場で調整さえできれば、勤務時間は柔軟に変えられます。会社で働くことを希望する人のためにオフィスもありますが、オフィスに出てくる必要がない人は、お客様との合意の上で自宅でリモートワークができます。

例えば、大阪の案件に取り組んでいる名古屋在住の社員がいます。お客様からは「それでいいですよ」と言っていただいているので、基本はリモートで仕事をこなし、月1回のペースで大阪に足を運んで、お客様と打ち合わせをしながら案件を進めています。

出勤、退勤時間もお客様との相談の上で30分や1時間ずらしている社員もいます。勤務中の中抜けも可能です。基本的には、お客様の要望と社員の自主性によって、一人一人が柔軟に対応しています。

編集部

社員の方の残業時間はどのぐらいですか?

音吉さん

社員の中には案件の締め切り前などで45時間くらい残業をする人も稀にいますが、平均すると10時間弱ぐらいになります。45時間を超えると私がコンプラ会議で叱られることもあり、それはさせないようにしていますね。

高額の専門資格取得費用を補助する、社員発案のサポート

編集部

さきほど、「さまざまな制度の提案が社員から自発的に出てきている」との話がありました。ヒューマンベースさんの社員の方から提案された制度としては、具体的にどのようなものがありますか?

音吉さん

社員からの希望で取り入れた仕組みとしては、資格取得支援があります。SAPやOracleといった専門性の高い認定資格の取得を支援するために、貸与型奨学金制度を導入しています。SAPやOracleなどの資格を取るための外部のプログラムがあるのですが、受講費用が非常に高額なんですよ。

それをヒューマンベースでは、リーダーシップチームとして認定した方に対して、奨学金として金銭的に補助しています。ただ、資格を取得してすぐ退職されてしまっても困るので、取得後1年間会社に在籍するごとに返済額が減っていき、3年在籍すれば奨学金の返還は不要という仕組みになっています。

資格を取った人への報奨金も多めに出しているのですが、これも社員からの提案を受けて取り入れました。会社として取ってほしい資格は10個ぐらいありますが、社員の中には半年間で3つの資格を取得した人もいます。

編集部

受験料と合格後の一時金の両方を出しているのであれば、社員の方のモチベーションも必然的に高まりますね。

音吉さん

やる気がある人、勉強したい人への支援は手厚くなっていると思います。

リモート勤務の不安を解消するメンター制度

編集部

資格取得支援の話がありましたが、ヒューマンベースさんからの社員の方へのサポートとしては、他にどのようなものがありますか?

音吉さん

基本的なことですが、PCの貸与のほかにディスプレイの貸与も個別に相談に応じています。あとは、リモートで働いている人について回るコミュニケーション面の課題を考慮して、経験の浅い人も気軽に相談できるようにメンター制度を導入しています。

個々の事情によって違いはありますが、月に1回、最低30分は話をするようにしています。もちろん、それ以上の時間や頻度で実施しても構いませんし、会社としてはむしろ推奨しています。

編集部

メンター制度において、ヒューマンベースさんならではの工夫は何かありますか?

音吉さん

メンター制度というと、普通は面談内容を会社に報告する仕組みになっていると思います。ですが、弊社では面談した事実と過重労働になっていないか、健康面で問題ないかは報告してもらうものの、具体的にどういう話をしたのかは1対1の秘密にしてもらっていいとしています。

会社の改善点など、結果として批判めいた話になっても問題ないとも伝えているので、個人のプライバシーを守りつつ、コミュニケーションは密に取れるようになっているはずです。メンターとメンティーの会食費の補助制度もあります。

編集部

遠慮せずに話ができるようにしているのですね。メンター制度は、いつ、どんなきっかけで導入したのでしょうか?

音吉さん

私が社長に就任したのが2021年10月なのですが、それを機に社員の提言やアイデアをなるべく吸い上げ、会社の制度として積極的に採用するようにしてきました。メンター制度も私が決めたというよりは、社員とのディスカッションの中で「コミュニケーションが足りない」という話になり、取り入れようという流れになりました。

同時に「いちいち内容を報告させられるのか」という疑問も出たので、それはしなくていいし、会社の批判をしても構わないと決めました。まだ導入して2、3カ月ですが、比較的評判はいいと思っています。

歓迎するのは積極性があり、自発的に動ける人材

ヒューマンベース代表取締役社長の音吉元樹さん

編集部

ヒューマンベースさんが求める人材像について、お聞かせいただけますでしょうか?

音吉さん

学生の頃に文化祭や体育祭にすごく情熱を燃やしていた方っていますよね。行事自体がその人の得になるわけではないけど、純粋に面白いから新しい発想を出して「みんなで一緒にやろうよ」と主体的に動いていた人のことです。

ありきたりな言い方かもしれませんが、そのような積極性がある、自発的に動けるタイプの人がヒューマンベースに合うと感じています。若い方や女性で、やりたいことはいっぱいあるのに、日本型のピラミッドの中では実行できないと悩んでいる人もいると思いますが、ヒューマンベースではそういった自発的に動きたい方を歓迎しています。

私たちは、今の事業内容やサービスが完全な正解だとは思っていません。なので、「お客様のことを考えて、もっとこういうビジネスをつくるべきだよね」と言ってほしいし、実際にそのビジネスをドライブする意志を持った方に入社してほしいと思っています。

誰かにきちんと指示をしてもらわないと不安とか、見てもらわないと嫌という人はヒューマンベースには合わないかもしれません。ただ、会社に所属している意識をあまり持たず働けるので、自発的に動ける人には楽しい環境だと感じられるはずです。

編集部

そういった方々に対して、ヒューマンベースさんはどのような姿勢で接しているのでしょうか?

音吉さん

弊社の理想は、外資のコンサルティングのようなスタンスです。人によって得意不得意は違うと思います。マネジメントの方向に行きたい人もいれば、スペシャリストのように技術を突き詰めたい人もいます。

だから、会社としては「あなたは5年後10年後どうなりたいの?」と問いかけ、自分のキャリアを主体的に伸ばしてもらうよう意識しています。

才能を伸ばしていける環境で、会社を引っ張る“主役”を待望

編集部

最後に、読者の方にメッセージをいただけますか?

音吉さん

既にお伝えしましたが、そもそもヒューマンベースは会社という仕組みをあまり意識していません。私自身も普通の社長の感覚を半ば放棄しているようなところもあります(笑)。言い方が正しいかは分かりませんが、私は学級委員長のようなイメージを持っています。

多分、ちゃんとした社長だとリーダーシップがあって、会社の方向性を明確に決められるのだと思いますが、ヒューマンベースには主役を張れる人がたくさんいます。だから、私はその人たちのタレント性を伸ばすことを心掛けています。積極的でチャレンジャー精神あふれる人が、会社を引っ張ってくれる環境を作ることで、企業の成長も持続していくと考えています。

編集部

ヒューマンベースさんでは、意欲のある社員がその力を最大限発揮でき、一人ひとりが大きく成長を遂げられるのではないかと感じました。本日はありがとうございました!

■取材協力
株式会社ヒューマンベース:https://humanbase.co.jp/
採用ページ:https://humanbase.co.jp/recruit/